「これまで心理職は,医療,学校,災害支援など社会の様々な分野に活躍の場を広げてきました。ところが,残念なことに現在の日本の企業では日々社員の心に多様な悩みや葛藤が発生しているにもかかわらず,職場の中で働く心理職はごく少数です。本書を手がかりとして,一人でも多くの心理職が自信をもって労働分野に参入できるようになれば,著者としてこの上ない幸せです」(本書「はじめに」より)。
「職場での」カウンセリングに特有な知恵に加え,産業医や人事担当者とのかかわり方,企業関係の法律知識,医療機関に繋ぐための精神科知識など,企業で心理支援を始める際におさえておくべき事項を,現場で活躍中の執筆陣がわかりやすく解説します。
さまざまな職種・患者さんのいる総合病院で心理士として働く著者が、日々の仕事の様子を軽やかに、正直に描きます。ごく普通の心理士である著者が、臨床に他職種との連携に、悩みの絶えない毎日を持ちこたえることができるのには、ある秘密があります。そのための指針「三本の柱」とは? 裏打ちとなる臨床理論とは? 心理士の日常を楽しくたどりながら、日々をサバイブするためのコツがつかめ、最後の「ちょっと長いあとがき」で秘密があかされます。 若手心理士および心理士志望者必読。ハードな毎日をしぶとく楽しく生き抜く知恵、教えます!
子どもたちの成長発達に役立つことをしたい,子どもと家族の役に立ちたい,子どもと家族が過ごしやすい地域,社会になるように自分の力を発揮したい……。そうした願いのもと,子どもたちを取りまく地域社会の変化に大きな影響を受けながら,著者らは日々話し合いを重ね,試行錯誤しながら発達支援を行ってきた。本書はこれまで出会った子どもと家族の「人生の物語」に触れつつ実践を振り返り,これからの道を探るものである。支援者が子どもと家族からともに学び,次なる一歩を踏み出すきっかけになるであろう。
コロナ禍を契機としてオンラインでの社会的なつながりが増え,若者がダイレクトな人間関係を育む学校や職場といった従来の居場所は失われつつある。SNS・オンラインゲーム・メタバースなどのバーチャルな空間が新しい場所を生む中で,リアルとバーチャルの狭間を生きる若者はどのようにして居場所を獲得するのか。
現在,非常に多くのセラピストから注目されている内的家族システム療法(IFS)。このIFSは,私たちの内面には様々な人格を持ったパーツ(副人格)があり,その人を守ろうとして懸命に行動している,という考えを基本とする心理療法の新潮流で,トラウマ治療を中心に活用が進んでいる。本書は,このIFSの概念をカップルに当てはめて展開していくものである。IFIOは,“Intimacy From the Inside Out”「親密さを心の中から理解する」という手法で,カップルの構成員をそれぞれの過去の傷つきやトラウマ体験などの集大成として見,その発言や行動を様々なパーツが出てきて思いを語っていると捉える。「なぜそのようなことを言うのか」「なぜここに反応してくるのか」など,相手の言動を理解できないときに,私たちはつい相手を非難してしまう。しかしIFIOでは,ダイレクトに非難や悲嘆反応に走るのではなく,そういうことを言ったりしたりするパーツがある,と考えるのである。
子ども家庭支援の実践や施策を担うそれぞれの実務者は,どこに向かって,どのような役割を果たしていくべきか。その共通の指針となりうる理念が「パーマネンシー(養育環境の永続性)」である。1980年代以降米国を中心に発展したパーマネンシーの理念は,今も米国の児童福祉の主要な目標であり続けている。わが国でもその理念に沿った制度改正が進められており,実務レベルに落とし込んだ共通の価値・理念とそれを実現する実践方策の構築が,急務とされている。
本書は,行政・民間,実践・施策,さまざまな立場で子ども家庭支援に携わる実務者に向け,協働してめざす共通目標としてのパーマネンシーの価値・理念と,それを実現するケースマネジメントや各実務者の役割・支援方策を,執筆者それぞれの立場から論述するものである。
精神分析の臨床実践は関わりそのものであって、対象から離れて観察するスタンスが損なわれるところから始まるものです──。” 生きた実践としての精神分析臨床に日々取り組む分析家が、しばしば難解と言われる精神分析を,理論と実践の両面から詳述する16の講義。分かりにくいところを避けずに、読者が「分かった」と感じることができるまで掘り下げて解説する。上巻はフロイトの精神分析を中心に、近刊予定の下巻では、対象関係論以降の精神分析を学派を超えて徹底講義。
現代精神分析を代表する分析家ビオンの,未発表論文を含む三つの講演記録を,これまで知られていなかった重要な資料を交えた解説とともに収録。三論文は精神分析の思考の基底にある哲学的基礎に関わるもので,後期ビオンの鍵概念が新鮮な文脈で用いられ,読者が新たな角度からそれらを理解する機会となるだろう。第二論文では,今日精神分析の領域を超えて関心が向けられている「ネガティブ・ケイパビリティ=負の能力」概念をまとめて論じている。