移行対象の臨床的展開

移行対象の臨床的展開

●移行対象の臨床的展開

ぬいぐるみの発達心理学


井原成男 編著

判型: A5

頁数: 208

価格: 3,570

ISBN(旧): 【4-7533-0602-X】

ISBN(新): 【9784753306022】

刊行年: 2006-04-18


●ウィニコットの移行対象概念の臨床的論考

目 次● 
第Ⅰ部移行対象とは
 第1章ウィニコットと移行対象 
第Ⅱ部移行対象の臨床的展開
 第2章心身症と移行対象
 第3章コンパニオン・アニマルと移行対象
 第4章自閉症と移行対象
 第5章保育の中で見た移行対象 
第Ⅲ部発達心理学と移行対象
 第6章移行対象と発達
 第7章慰める存在という観点から見た移行対象の研究史
 第8章慰めるものと移行対象
 第9章移行対象の基礎調査――指しゃぶりとの比較から 
文 献

●小児科医であるとともに精神分析家でもあったウィニコットの移行対象概念の心理学的な意味について,主として臨床心理学的,発達心理学的な観点から論考する。

あとがきより●
 昨今,臨床心理学や精神分析に関心をもつ人が急増し,セミナー的な催しやセミナー本は人気が高いという。しかし,その反面,フロイトの原典は読まれなくなっていると聞く。ウィニコットの本でさえそうであるらしい。しかし,原典を読むことは楽しい。なぜなら,そこには偉大な釣り人が,魚が引いた手ごたえ(レーニンはそうした感触を,「ドリンドリン」と表現し,転げまわってその手ごたえを楽しんだという),そうした確かな手ごたえ,何かそこに真に存在するものを掴んだ,という感覚を得ることができるからである。
 移行対象もまた,ウィニコットにいつも戻りつつ,その研究指針を立てていくこと,それがこの分野の研究を深くし,進展させるコツである。
 この本は,ウィニコットに対する私自身の最近の理解から始めて(第1部),この分野の最前線で活躍している人々が,移行対象をどのように臨床に応用したかといういくつかのモデルを示すことになった(第2部)。心身症の治療から,アニマル・コンパニオン(ペット),そして自閉症の初期世界の探究と,応用分野は限りなく広がり,それぞれのテーマが,今後さらに探究されるべきトピックにたどり着いている(例えばそれは,心身問題,子育てと治療の区別と連関,心の最初期における感覚的世界などである)。最終的にそれは,通常の子育て(保育)の分野にまで,その裾野を広げているのである。また第3部では,この現象を発達心理学的に研究するとき基本にすべき,現象の丁寧な観察,そして研究史と統計などについて取り上げた。今後の研究者の便宜のために,文献はできる限り多くあげておいた。
 これはこの本全体にいえることなのであるが,それぞれの著者は,その独自の分野のやり方に即して,丁寧な記述を試みられていた。しかし編者の責任で,全体の流れと読みやすさを優先し,書き換えたり,カットしたところもある。この場を借りて,お詫びを申し上げたい。
 私は基本的に,著書は単著であるべきだという考えをもっていた。教科書は別として,一人の著者が書き切った本でなければ,先に述べたような,オリジナルで手ごたえのある内容は,読む人に伝わらないと考えたからである。この本は私が,その考えを逸脱し,共著として編集した最初の本である。しかしながら,よき共著者を得て,この本は通読して十分,そのオリジナルなものを表現している本になっているように思う。その意味で編者としては,よき共著者を得たことに心から感謝している。
今後は,ここに集われたそれぞれの方が,各自の方法を自在に駆使して,自らのテーマを深めていかれるはずである。
 ウィニコットが,決してウィニコット派を作らなかったように,それぞれの共著者が,ここに集われたことを胸に,独立されていくこと(インディペンデントであること)を切に願う。

井原 成男



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