自閉症のこころをみつめる

自閉症のこころをみつめる

●自閉症のこころをみつめる

関係発達臨床からみた親子のそだち


小林隆児 著

判型: 四六判上製

頁数: 224頁

価格: 2,520円(税込)

ISBN(旧):

ISBN(新): 【9784753310029】

刊行年: 2010.03.15


●親と子のこころの交流に肉薄する臨床実践記録

新刊

目次●
 
はじめに
第1章 「発達」と「障碍」について考える
第2章 関係発達支援の枠組みと具体的な進め方
第3章 臨床経過の記述方法について
第4章 関係発達支援の実際──幼児期における親子関係の変容過程
第5章 親と子のこころのそだち
おわりに
文  献
 
■四歳時に自閉症と診断された男児とその両親を対象に行った臨床実践の記録。当事者同士の無意識的なコミュニケーションの世界に感性を開き,働きかけることで,親子関係の変容と「こころのそだち」がもたらされる。

「はじめに」より抜粋●
 関係発達臨床とは、そこで繰り広げられる関わり合いを通して、発達の意味を捉えなおしながら、当事者のこころを支え、育んでいく試みです。
 第一章で詳しく論じるように、「発達」とは土台が育ってその上に上部が組み立てられるという基本的な構造を有していますが、「発達障碍」にあってはそうした一般の発達の動きが阻害されています。私たちが日々臨床現場で苦悩している大半の事例の中心をなしているのは、人間発達の土台となる対人関係の成立をめぐる問題なのです。
 この数十年間、自閉症をはじめとする発達障碍臨床において、精神(心理)療法的アプローチをめぐる論調は、治療効果がない、時には悪化させるといった冷ややかなものが多かったように思います。現在でも依然として脳器質論を背景に、訓練や心理教育的アプローチの有効性を主張する声が大きいのですが、そもそも人が人に対して何らかの働きかけをする行為は、その方法如何にかかわらず、そこには相互になんらかの心理的な影響が及ぶものです。その多くは私たちが意識しないところで起こっているものです。そしてそのことが両者の関係にさまざまな影を落としているのです。
 筆者が本書でもっともエネルギーを注いだのは、臨床の当事者(子どもと親、さらには筆者ら)同士の関わり合いの中で、当事者自身も気づいていない重要な意味をもつと思われる出来事を掬い取ることでした。その多くはこれまで筆者がその重要性を強調してきた原初的(情動的)コミュニケーションの世界に深く関連したものです。このコミュニケーション世界は私たちが意識することのないところで展開しているものだからです。
 読み進めていくにつれ読者の皆さんは強く感じられると思いますが、本書に登場する親子の関わり合いの様相は、ある意味で壮絶な闘いでもありました。人間の生きるという営みは美辞麗句で語られるようなものではありません。人間のこころの奥深いところには、どろどろとした凄まじいものが常に蠢いているのです。そのことが本書で記述されている内容にも強く反映しています。
 筆者が本書をまとめたのには強い動機があります。自閉症という障碍をもつ子どもたちのこころのそだちを支えていくために、私たち大人がどのように心がけ、日々の生活の中で努力していかなければならないか、読者とともに考えてみたいと思ったのです。子どものこころのそだちを考えていくと、私たち自身の存在そのものに深く言及することを避けて通ることはできません。私たちとの関わり合いなくして、子どもたちのこころがそだつことはありえないからです。だからこそ「関係発達臨床」でなければならないのです。私たち自身のこころのありようを深く見つめることを通して初めて理解することが可能になる、そのような意味合いが込められているのです。本書で描かれている両親の日々子どもと格闘している姿は、読者の皆さんすべてにも関係している事柄なのだということを念頭に置きながら、本書を読み進めていってほしいと切に願っています。


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