セラピスト・フォーカシング

セラピスト・フォーカシング

●セラピスト・フォーカシング

臨床体験を吟味し心理療法に活かす


吉良安之 著

判型: A5判並製

頁数: 208頁

価格: 2,625円

ISBN(旧):

ISBN(新): 【9784753310135】

刊行年: 2010-11-19


●第一人者が紹介するフォーカシングの新展開

新刊

目次●
 
 まえがき
 
第1 章 セラピストの仕事と感情体験
 1.はじめに
 2.心理療法場面での感情体験の性質
 3.クライエントとの関係にもとづく感情体験
 4.職業人・生活者としての感情体験
 5.セラピストの仕事の深さと難しさ
 6.セラピストとして十分に機能し続けるために必要なこと
 7.自らの感情体験と関わるために
第2 章 セラピスト・フォーカシングの概要とねらい
 1.セラピスト・フォーカシングとは
 2.フォーカシングの感じ方
 3.セラピスト・フォーカシングを考案したきっかけ
 4.セラピスト・フォーカシングのねらい
第3 章 セラピスト・フォーカシングの手順と進め方
 1.実施の仕方
 2.手  順
 3.進め方と教示
 4.留意点
第4 章 ステップ1 のみを行ったセッション2 例
 1.ステップ1「全体を確かめる」のみの実施
 2.A さんとのセッション
 3.B 氏とのセッション
第5 章 個別事例の吟味その1:ある若手とのセッションの例
 1.若手セラピストが体験すること
 2.C さんとのセッション
 3.若手セラピストにとっての本方法の意義
第6 章 個別事例の吟味その2:中堅セラピストとのセッション3 例
 1.D さんとのセッション
 2.E さんとのセッション
 3.F 氏とのセッション
第7 章 職場におけるセラピスト体験を吟味したセッション例
 1.フォーカサーのG さんの概要と状況
 2.2 回連続セッションの経過
 3.フォーカサーによる考察
 4.リスナー(筆者)による考察
第8 章 フォーカサーとリスナーの人間関係
 1.同じ職種の仲間としての横の関係
 2.フェルトセンスに内在する歩みを大切にする
 3.リスナーの行うガイディングとは
 4.ベテランのセラピストがリスナーを務めるさいの注意点
第9 章 セラピスト・フォーカシングの意義
 1.自身を主役として大切に扱う時間の確保
 2.心理療法場面についての体験のレベルでの振り返り
 3.自身の体験の分化・整理と問題からの体験的距離
 4.新たな意味の発見と自己理解の深まり
 5.主体感覚の賦活化
 6.心理療法に進展を生み出す効果
 7.心理療法の今後の進め方の吟味
第10 章 フォーカシングとの比較からみた本方法の特徴
 1.心理療法における関係の独自性
 2.「空間を作る」と「全体を確かめる」との違い
 3.両者の体験の交錯したフェルトセンス
 4.セラピスト・フォーカシングにおける関係の多層性
第11 章 本方法の今後の展開に向けて
 1.本方法の多様な活かし方
 2.セラピスト以外の対人援助職への適用
第12 章 セラピストの生涯発達を考える:本方法を考案した契機との関連を含めて
 1.セラピストとしての熟練とクライエント側の受けとめ方
 2.セラピスト人生の後半を迎える時期の課題
 3.臨床実践の機会を確保することの重要性
 4.フェルトセンスを手掛かりに自分自身に向き合う作業
 
 文  献
 あとがき
 索  引

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吉良 安之(きら やすゆき)
九州大学高等教育開発推進センター教授,博士(教育心理学)/
九州大学学生生活・修学相談室常任相談員/
臨床心理士,大学カウンセラー,Focusing Institute 認定コーディネーター
日本におけるフォーカシング研究および臨床の第一人者であり,「セラピスト・フォーカシング」の考案者。日本フォーカシング協会会長等も歴任。"

「まえがき」より抜粋●
 セラピスト・フォーカシングとは,セラピストが事例を担当するなかで,あるいは臨床実践を行うなかで自分自身が感じているさまざまな気持ちについて,フォーカシングの感じ方を用いて丁寧に注意を向け,ゆっくりと吟味する方法である。
 心理療法の場において,セラピストはクライエントの気持ちを感じ取り,受けとめ,それに応じていく。しかしその過程で,セラピスト自身もさまざまな感情を体験している。クライエントから多様な感情の波が流れ込み,セラピストの内面に波紋を広げるからである。
 セラピストにとって,臨床の場からいったん離れたところで,自分自身の心を主役として扱い,自分がクライエントとの関わりからどのような感情を受け取っているのか,あるいは職場における心理職の仕事のなかでどんなことを感じているのか,穏やかに味わう時間をもつことが有益ではないだろうか。特に,感情体験の蓄積によって余裕をなくし,圧倒されるような状態にあるときは,そのような時間が大切であると考えられる。
 セラピスト・フォーカシングは,「からだの感じ」を手掛かりにして心理療法の場で生じていることを振り返ることにより,セラピストが自分自身の体験していることを分化して捉え,整理するための時間である。それは自分自身の心を大切に扱い,ケアする時間になるとともに,そのような内的作業を通じて,自己理解やクライエント理解を深める機会が得られる。さらにそれをもとにして,心理療法の今後の進め方について考えていく場でもある。
 セラピストにとってこの方法はスーパービジョンとは異なる意義をもつ。スーパービジョンは自分よりも臨床経験を多く積んだセラピストから,事例の見立て方や関係の作り方,応答や介入の仕方などについて指導を受ける,学びの機会である。それに対してこの方法は,セラピストが自分の内面に感じていることを,自分のペースで丁寧に感じ取り,味わう機会である。セラピストにとって,自分の気持ちを感じる時間は,スーパービジョンの時間と同じくらい大切であると筆者は考える。
 筆者はこれまで長く,フォーカシングの経験を積んできた。その経験を土台にしてこの方法を新たに考案し,それを「セラピスト・フォーカシング」と名づけて,さまざまなセラピストと実践を行ってきた。本書では,この方法の概要や実施手順を紹介するとともに,多様な実践例を記載し,その意義や特徴を論じることにする。
 本書を通じて若手セラピストの方々が,自分自身の体験にもとづいて心理療法の実践を考えることに馴染んでいただけたら嬉しい。常に自分自身が感じていることを土台にして実践に携わることが大切だと筆者は考えるからである。また,臨床経験を多く積んだセラピストの方々にとっては,本書がセラピストとしての自分自身について振り返る機会になれば,ありがたい。セラピストとして年齢を重ねていくうえで,折に触れてそのような時間をもつ必要があると感じるからである。 


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