産後メンタルヘルス援助の考え方と実践
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●産後メンタルヘルス援助の考え方と実践
地域で支える子育てのスタート
西園 マーハ 文 著
判型: A5判並製
頁数: 224頁
価格: 2,625円(税込)
ISBN(旧):
ISBN(新):
【978-4-7533-1035-7】
刊行年: 2011-11-09
●産後の不安定な母を支え,親子を育む支援
目次●
第1章…援助が必要なのはどのような人か
Ⅰ さまざまな視点
Ⅱ さまざまなフィールド
第2章…スクリーニングとモチベーション
Ⅰ なぜスクリーニングが必要か:相談への経路
Ⅱ 複眼的なアセスメント
Ⅲ 産後のメンタルヘルス・スクリーニングの特殊性:生活機能・育児機能に焦点を当てる
Ⅳ 母親の問題の一過性の先鋭化とスクリーニング閾値
Ⅴ 産後のうつ病は,当事者にはどのように感じられるか:英国の例
Ⅵ スクリーニングにおける質問紙という方法
Ⅶ 母親たちの記入はおおむね実態と合致する
Ⅷ エジンバラ産後うつ病質問票の特徴
Ⅸ 質問紙の副作用や盲点:スクリーニングの原則を理解する
Ⅹ 質問紙の後の面接の意味
XI 動機づけ理論
XII 本人の理解と専門家の理解の統合
XIII 原因とリスク:唯一の原因か多くのリスクの中のひとつか
XIV まとめ
第3章…産後に見られるさまざまな病状
Ⅰ メンタルヘルスの評価について
Ⅱ 産褥精神病,産後うつ病を中心とした有病率
Ⅲ 個々の精神病理
マタニティブルー/産褥精神病/産後うつ病/うつ状態/精神病エピソード/不安障害/摂食障害/アルコール乱用/パーソナリティ障害/発達障害
Ⅳ ライフサイクルの中のコモビディティの実態
Ⅴ 症 例
Ⅵ まとめ
第4章…産後の精神的不調に関連する因子
Ⅰ 妊娠をめぐる問題,妊娠中,分娩の異常
Ⅱ 母乳の問題
Ⅲ 子どもの問題
Ⅳ 言語・文化の問題
Ⅴ 仕事・経済の問題
Ⅵ 母親の疾患,母親のその他の問題
Ⅶ ドメスティック・バイオレンス(DV),虐待,夫(父親)の疾患,夫のその他の問題
Ⅷ 離婚・夫婦関係悪化・母子家庭
Ⅸ その他の家族問題
Ⅹ 近親者の死
XI 育児援助の少なさ
XII 最近の転入
XIII その他の因子
XIV まとめ
第5章…エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)を用いた産後メンタルヘルス援助の実践
Ⅰ さまざまなセッティングにおけるEPDSの使い方
Ⅱ EPDSを見ながらの面接
Ⅲ EPDSを共通ツールとしたシステム
Ⅳ 海外での産後メンタルヘルス援助:エビデンスの集積と実践
第6章…多職種による連携,当事者との連携
Ⅰ 多職種連携とは
Ⅱ 職種間の違い・背後にある考え方の違い
Ⅲ 精神医学モデル
Ⅳ 臨床心理学モデル
Ⅴ 虐待防止モデル
Ⅵ 母子保健モデル
Ⅶ 当事者のモデル
Ⅷ まとめ
終 章…出産によって,得たことと失ったこと
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西園マーハ 文(にしぞの・まーは・あや)
九州大学医学部,慶應義塾大学医学部医学研究科博士課程卒。
1986年,1992年英国エジンバラ大学留学。
1998年より東京都精神医学総合研究所勤務。
2008-2009年英国King's College London, Institute of Psychiatry 客員研究員。
現在,(財)東京都医学総合研究所 心の健康づくりプロジェクト副参事研究員。慶應義塾大学医学部客員准教授。
著書(単著)に『摂食障害サポートガイドブック』(女子栄養大学出版部,2002),『生活しながら治す摂食障害』(女子栄養大学出版部, 2004),『摂食障害 心と身体のケア アドバイスブック.シリーズ・ともに歩むケア2』(精神看護出版, 2005),『摂食障害のセルフヘルプ援助―患者の力を生かすアプローチ』(医学書院, 2010)。
編著書に『摂食障害の治療.専門医のための精神科臨床リュミエール第Ⅲ期28巻』(中山書店, 2010)ほか
本書は,東京都内の保健センターで,保健師さん,臨床心理士さん方とともに筆者が10年来実施している産後のメンタルヘルス相談での経験を基にしたものである。産後のメンタルヘルス領域の優れた参考書はすでに世に多数あり,筆者が付け加えられることはわずかしかない。そのわずかというのは,これまでの参考書は,産科病棟,新生児ICU,産科精神科協働チームなど病院がフィールドであるのに対し,本書は病院外の地域の保健センターでの活動による知見ということである。
病院の受診者は,治療を受けることにある程度は覚悟ができているが,地域では,自分にメンタルヘルスの援助が必要だとはまったく思っていない人に治療を勧める場面も多々ある。虐待防止の分野でも,援助の必要性の自覚がない人にどのように接点をもつかは大きな課題だが,メンタルヘルスという切り口から見た場合も同じ問題がある。精神医学の分野では,早期発見・早期「介入」がトピックであるが,まだこの領域は発展途上である。「遅いより早い方がよい」という一般的な哲学が,本当にどのような病状にも当てはまるのか,本人が置かれている状況によって介入の方法論は異なるべきでないのか,本人が最初の段階で拒否したら次のチャンスはいつかなど産後メンタルヘルスの領域は,早期発見・早期介入の議論に重要な題材を提供すると思われる。このような意味で,本書は,産後のメンタルヘルスをテーマとしているが,副旋律として,地域におけるメンタルヘルス問題の発見と援助という,より一般的テーマも扱っている。
産後のメンタルヘルスの領域は,ストレス論やコーピング論からも大変重要である。子育てという,1日も休めない仕事がある中でのコーピングのあり方をよく見ると,個人とストレスとの関係がよくわかる。産後の女性の生活は,子どもを背負ってハードルを飛ぶような日々である。一般的に言えば,もともとごく低いハードルを飛ぶのにも難儀していた人は,子どもを背負えばますます飛べなくなる傾向がある。しかし,日頃は高いハードルを飛んでいた人でも,背負っている子の重さによっては,飛べなくなる。そして,このことにひどく傷つく人もいれば,子どもがいる生活というのはこんなものだろうと受け止められる人もいる。
どのようなストレスもそうであるが,ストレスに対応するうちに力がついた,ということはしばしば観察されることである。子どもを背負って飛んでいるうちに,子どもを背負わなくてもよくなったとき,以前より高いハードルを楽々飛べるようになることも多い。子どもの重さで倒れてしまうか,何とかハードルを飛べて,将来への力をつけるかの差は,紙一重である。たとえハードルの前で立ち止まる日があっても,飛んで自信をつける後者の道を行くためには,質のよい援助が,よいタイミングで,当事者にも納得いく形で届く必要があるだろう。本書が,その方法を当事者とともに考える一助になれば幸いである。
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