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愛情剥奪と非行

ウィニコット著作集・2

目次

目次抜粋● 
幼い子どもたちの疎開
戦時中の子どもたち
子どもを剥奪された母親
戦時下と平和時における子どもたちの宿舎
再び家庭へ
攻撃性とそのルーツ
思いやりの能力の発達
罪悪感の欠如
心理学的観点から見た少年非行
反社会的傾向
母子分離の心理学
攻撃性,罪悪感と償い
ドルドラムをどうにか切り抜けていく
精神保健の基礎
(愛情を)?奪された子ども,そして家庭生活の喪失を如何に補いうるか
迫害とならなかった迫害
セラピーとしての居住型ケア
精神療法の多様性
性格障害の精神療法
治療的コンサルテーションであらわれた解離  
他 
●原題『Deprivation and Delinquency. 1984』

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内容説明

序文より● 本書は,英国の精神分析医であり小児科医でもあったD.W.ウィニコット(1896-1971)の著作“Deprivation and Delinquency”を訳出したものです。  第二次世界大戦中のロンドン空襲からの児童疎開計画にかかわった体験は,ウィニコットに愛情と非行の関係を痛切に感じさせたのでした。それは戦争中に母親を奪われた子どもたちに出会ったことから生じました。そして,母親を剥奪されるという体験に対する反応として,子どもは嘘や盗みなどの反社会的な傾向を発展させるけれども,実は,こうした反社会的傾向は肯定的な価値があり,環境側の失敗(環境の連続性の中断)という溝を埋めようとする子どもの希望を表しているとウィニコットは考えるようになったのです。愛情剥奪の体験にみまわれた幼児は,世話をされ,ケアを受ける必要があるとウィニコットは説いています。事実,一般の家庭は,剥奪体験をもったときの幼児の反社会的な傾向を繰り返し受け止め続けます。そうすることによって,その子どもは外傷体験を克服していくのです。  ウィニコットは,クラインの概念をとりいれ,人間が本質的に持っている攻撃性に対して思いやりを抱く能力の発展を重視し,思いやりを抱く能力がせき止められることと反社会的傾向を関連づけました。そして,彼らの内なる攻撃性を包み込む方法を考えたのです。疎開児のための里親,扱いの難しい子どもたちのための寄宿舎制度などです。いわゆるホールディング(holding)の機能をもつ環境の提供です。疎開する前にすでに母親を奪われていた(愛情剥奪)子どもには,その中では衝動や自発性が生じても安全なような,しっかりとした枠組みとしての寄宿舎が必要だという体験をウィニコットは積んだのです。  大戦後,次々と寄宿舎が閉鎖されていくのをみて,ウィニコットは,戦争が終わった平和時においても,扱いにくい反社会的な子どもたちのマネージメントの場として寄宿舎制度の有用性を訴えていました。  本書のいたるところで,ウィニコットは嘘や盗みなどの反社会的傾向の子どもの症例を素描して,卓越した治療技法と臨床センスを示していて,読者は魅了されることでしょう。 また,ウィニコットは,思春期を含めた子どもたちの反社会的な行動に対して,それらの衝動を包み込むべく円熟した大人たちがしっかりと立ち向かわなければならないことを教えています。  本書が,精神科医や臨床に携わるサイコロジストだけではなしに,子どものメンタルヘルスに関心をもつケースワーカーや看護師,教育や福祉,行政や司法の関係者,さらには一般の方々にもお役に立てればと思います。 監訳者 西村良二

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