目次
第1章 精神分析の技芸について
第2章 「生きていること」と「死んでいること」:その形を分析する
第3章 分析の倒錯的主体
第4章 プライバシー,もの想い,そして分析技法
第5章 夢の連想
第6章 もの想いと解釈
第7章 精神分析における言語の使用について
第8章 聴くということ:三つのフロストの詩
参考文献/訳者解題/索引
●「第三の主体」のパラダイムの上に,精神分析の理論と実践を創造的に再構成。「もの想い」を精神分析技法のひとつの軸として位置づける。●原題:Reverie and Interpretation: Sensing Something Human. 1997
内容説明
■訳者解題より 本書は,1997年に刊行されたオグデン(Thomas H. Ogden)による5冊目の著作“Reverie and Interpretation: Sensing Something Human”の全訳である。 著者オグデンは米国西海岸在住の精神分析家である。その経歴をごく簡単に述べると,1946年に生まれ,アムハースト大学,イェール医学校,サンフランシスコ精神分析研究所を卒業,ビオンのセミナーに出席し,クライン派のグロットスタインにスーパービジョンを受けた(その後もグロットスタインとの良好で生産的な関係を保っているが,オグデン自身は2冊目の著作の中で明言しているように,クライン派ではない)。ロンドンのタヴィストック・クリニックに留学,その後タヴィストック・クリニック精神科医を務め,また精神病高等研究センターの設立者の一人となる。北カリフォルニア精神分析研究所でスーパービジョンと教育分析を担当し,サンフランシスコ精神分析研究所で教えるほか,同地で個人開業している。 米国の精神分析といえば自我心理学や自己心理学,あるいは対人関係学派などが連想されがちであるが,実態はそれほど単純ではなく,西海岸のカリフォルニア州はかつて英国学派に関心を持つ分析家たちがクライン派の分析家をたびたび招聘し,彼らの誘いに応じたビオンが1968年から79年まで約10年にわたって滞在して一部の分析家たちに強い影響を与えた場所でもある。オグデンの経歴や著作からも,精神分析家となるうえでビオンをはじめとするクライン派や英国独立学派の影響を色濃く受けていることが明白に伺われるものの,むしろ彼の方向性は,特定の学派への帰属にこだわることなく,英国学派を中心とする思索と実践の収穫をその本質に遡って概念化するとともに,精神分析の理論と実践を創造的に再構成するところにある。 オグデンが広く注目を集めるようになったのは,79年,国際精神分析誌(IJPA)に掲載された論文「投影同一化について」がきっかけであり,2005年までに本書を含めて7冊の著書を発表している。「オグデンの新作は常に一つのイベントである(ジョイス・マクドゥーガル)」と評されるほど,その著書は期待をもって迎えられており,英語圏以外でもドイツ語,スペイン語,イタリア語,ポルトガル(ブラジル)語,スウェーデン語,日本語,ルーマニア語,ヘブライ語など数多くの言語に翻訳され出版されている。わが国では,彼の第2作と第4作はすでに邦訳が刊行されているほか,第1作,第3作,第6作についても2006年3月現在,翻訳作業が進められており,岩崎学術出版社から刊行予定である。 大矢泰士