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子どもをとりまく環境と臨床

小倉清著作集・3

子どもをとりまく環境と臨床

子どものこころを総体的にとらえるために――待望の著作集第三弾

著者 小倉清
ジャンル 精神医学・精神医療
心理療法・カウンセリング
発達・思春期・老年
出版年月日 2008/03/06
ISBN 9784753308026
判型・ページ数 A5・264ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

目次●
 
序 部  私の力動精神医学

Ⅰ 治療・技法論
  1.診断から治療へ―力動的観点から
  2.子どもにおける精神療法 
  3.精神医学的コンサルテーション
  4.学校場面におけるコンサルテーション・リエゾン精神医学
  5.入院治療 
  6.看護師・患者関係にみられる日本的特性
  
コラム
 ① 答えに窮す 
 ② 子どもの嘘 
 ③ 愛着・甘えと子どもの精神科臨床 
 ④ 世界史履修遺漏問題,子どもの精神科臨床,そして人類のこれから
  
Ⅱ 子どもをとりまく環境と臨床
  7.親子関係の不成立 
  8.日本人の「独立心」と「甘え」の心理 
  9.叱られ過ぎの子ども 
 10.学校教育の背景としての家庭の変貌 
 11.教師のストレスとそれへの対処 
 12.学童期の体験の意味するもの
 13.ライフサイクル上の10歳前後 
 14.思春期・青年期に病むこころ
 15.統合失調症の発生機序について
 
初出一覧
あとがき

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内容説明

第14章「思春期青年期に病むこころ」より●      そもそもこころの病いというものについて考えてみる時,大切な事柄がいくつかあります。まずそのひとつは,人は生まれてから死ぬまで,どの年齢をとってみても,その年齢に特徴的な心理的課題というか心理的葛藤というものがあるということです。赤ちゃんなら赤ちゃんなりに,80歳の老人なら,その年齢なりの課題・葛藤というものがあります。そしてこころの病いといわれるものは,これら年齢的に特徴のある課題なり葛藤なりと深い関係があるものと思われます。その当人が自らの課題や葛藤とどうやって闘っているのか,その闘いのうちどの辺がうまくいっているのか,いないのか,といったことを考えてみることが大切です。  さらには,その人がどんな家庭的環境に生まれ育ち,どんな人とどんな体験を重ねてきたのか,どんな事柄を得意とし,何を苦手とし,どんな興味をもち,どんな傾向をもった人物であるのかということなどを知ることは極めて大切です。こころの病いといわれるものは,こういった事柄と密接に関係しているからです。こころの病いの現れ方に常に個人差がみられるのは,そのためでもあるのです。  こころの病いについて考えてみる時,大切な事柄はまだ他にもあります。こころの病いを示すに至ったその人が,現在どんな状況,どんな条件,どんな対人的環境の中で生活しているのかを知ることは,当然のことながら極めて大切です。これには社会的・文化的・経済的・政治的・宗教的,そして教育的な,ありとあらゆる条件が関与してくるものと思われます。家庭,学校,会社,近所の人びと,友人関係などももちろん含まれるわけです。ことに価値観の多様化などといわれる現代では,家庭教育,学校教育,社会のあり方などが一昔とはちがった様相を呈し,複雑で多角的な問題を含んでいるわけで,個人の生き方については自由で選択がきくとはいえ,それだけまた混乱を招きやすいことにもなっていることは事実です。  こころの病いには,それなりの歴史があり,因果律を含んだ事情があり,また構造があるものなのです。そしてそれは,まったく個人的な性質をもっており,たとえば,統合失調症であるとか,そううつ病であるとかといった名前でもって,その内容がわかるといったようなものではありえないのです。とはいえ個人的な内容をもっており,個人差があるものですから,こころの病いはその個人自身が,その人に極めて近い人にしか理解しえないものだということにはなりません。病いの内容や現れ方は個人差にとんだものであれ,同じく人生に悩みながら懸命に生きている人ならば,その人の立場に立ってものを見,考えることはできるはずです。統合失調症とかいって,画一的な枠の中に入れて考えようとすればするだけ,没個人的となり,病いの内容に入って理解することはますます困難になります。自分とその人との関係のもとにこそ,その人の悩みなり病いは理解されてくるはずのものだからです。       小倉 清

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