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関係性における暴力

その理解と回復への手立て

関係性における暴力

「分断」から「つながり」へ,「暴力」から「個人の尊厳と共生」へ

著者 藤岡 淳子 編著
浅野 恭子
朝比奈 牧子
齊藤 万比古
酒井 佐枝子
野坂 祐子
信田 さよ子
高橋 郁絵
宮口 智恵
吉川 和男
吉田 博美
ジャンル 心理療法・カウンセリング
発達・思春期・老年
出版年月日 2008/05/09
ISBN 9784753308057
判型・ページ数 A5・248ページ
定価 3,080円(本体2,800円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
 
第1部 関係性における暴力の諸相
第1章 関係性における暴力とは  
第2章 子どもを虐待する養育者の特徴とその支援
第3章 ドメスティック・バイオレンス
第4章 いじめ
第5章 非行少年における対人暴力

第2部 対応策
第6章 犯罪行動変化のための治療共同体
第7章 認知行動療法(CBT)
第8章 マルチシステミック・セラピー
第9章 メディエーション,カンファレンス,サークル
第10章 被害者支援

第3部 実践報告
第11章 児童自立支援施設における実践
第12章 自助グループによる犯罪行為からの離脱
第13章 DV加害者プログラムの実践
第14章 親支援のためのソーシャルワークと親教育プログラムの試み
第15章 性暴力被害者に対する心理的アプローチ

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内容説明

私が年をとったせいか,またそれにともなって子どもたちの気質も変化してきたのか,この頃いわゆる「非行少年たち」と話をしていて,内心「えっ?」と思うことが多くなったような気がする。年齢不相応に幼く,自己中心的な視点を脱却できず,コミュニケーション下手なのである。そのためか,たくさんの子どもたちが「発達障害」のレッテルを貼られて施設に入所してくる。ところがしばらく教育的働きかけをしていると,ほとんどの子どもが,表情が豊かになり,気持ちや考えを言葉で表現できるようになり,他者の立場に対する配慮を見せるようになる。これは一体どうしたことなのだろう?子どもたちは,家庭で,学校で,世の中でどのような育ちをしているのだろう?どうすればよいのだろう?というのが抱いた疑問である。人は,やはり人を通して人になる。あたりまえすぎて見えにくくなっているのかもしれないが,何か少しずつ,私たち社会の子どもたちを育てる力が弱くなっているのかもしれない。 問題は,「暴力」である。「暴力」というと殴る,蹴るなどの身体暴力や性暴力,あるいは戦争などを思い浮かべるかもしれないが,実際には,より目に見えにくい形で,日常生活の中に偏在している。家庭,学校,社会におけるパワーの乱用が,社会の中の個人としての子どもたちの育ちを阻害しているのではないか。それは大人たちの日々の生活を反映している。我々は,ありのままの気持ちや考えを認め,一人一人を尊重した上で,社会の中で他と共に生きていくという手立てを子どもたちに教えていくことに十分に成功しているとは言えないのではあるまいか?まずは日常生活,特に対人関係における暴力をはっきりと見極めていくことが第一歩なのではないかと思うに至った。 第1部では,子どもの虐待,配偶者暴力,いじめ,そして非行・犯罪という家庭,学校,社会における暴力の諸相から,関係性における暴力の見えにくい姿を描き出すことを試みている。多くの人々が民主主義の世の中における「暴力」の問題に取り組んでいるのではあるが,ここでつまずきとなるのは,そうした人々でさえ,その職種や対象者によって「分断」されていることである。子どもの虐待に適切な介入をしようと走り回っている人々,配偶者暴力に取り組む人々,学校におけるいじめの問題,非行・犯罪,そして被害者と加害者,一つ一つのことがらだけでも大きすぎるほどの「問題」ではあるが,これらの現象に「対人関係における暴力」&「子どもたちの育ち」という串を刺すと,見えてくるものがあるような気がする。回復あるいは対応策のキーワードは,「分断」から「つながり」へ,「暴力」から「個人の尊厳と共生」へ,であると考えている。第2部では,現在欧米で勢いのある介入方法の中から,「つながり」や「共生」といった価値観と方法論とが認められるものについて,人々や子どもたちの暴力からの回復を目指す対応策として,その理念や方法を紹介している。そして,それがどのように実際に行われているのかを示すのが第3部である。理念は実践されてこそ意味がある。ヴィジョンとアクションは両輪である。(「はじめに」より)

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著者情報

藤岡 淳子 編著

1955年東京に生まれる。1979年上智大学文学部卒業,心理学専攻。1981年上智大学大学院博士前期課程修了,心理学専攻,文学修士号取得。1981年法務省矯正局勤務,東京少年鑑別所法務技官,榛名女子学園体育レクリエーション係長他。1987年アメリカ合衆国南イリノイ大学大学院留学,刑事司法行政学専攻,社会学修士号取得,栃木刑務所分類課長。1992年法務省矯正局総務課専門官他。現職川越少年刑務所上席統括矯正処遇官(教育担当)

浅野 恭子

1991年京都女子大学大学院家政学研究科児童学専攻修士課程修了。1991年大阪府に勤務。現職大阪府立修徳学院主査。

朝比奈 牧子

1997年学習院大学文学部心理学科卒業。1997年法務省矯正局および矯正施設勤務。2003年南イリノイ大学大学院司法学専攻科修了。現職府中刑務所勤務。

齊藤 万比古

1975年千葉大学医学部卒業。1999年国立精神・神経センター国府台病院審理・指導部長。2003年国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部長。現職国立国際医療センター国府台病院第二病棟部長。

酒井 佐枝子

2004年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。2004年(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構兵庫県こころのケアセンター勤務。2007年博士(人間科学)。現職大阪大学大学院医学系研究科特任講師。

野坂 祐子

2004年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程単位取得退学。現職大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター。

信田 さよ子

1973年お茶の水女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。1983年CIAP原宿相談室勤務。現職原宿カウンセリングセンター所長。

高橋 郁絵

1992年立教大学大学院社会学研究科博士前期課程修了。1992年東京都に勤務。現職原宿カウンセリングセンター。

宮口 智恵

2006年神戸大学大学院総合人間科学研究科前期博士課程修了。1987年大阪府(福祉職)に勤務。現職NPO法人チャイルド・リソース・センター代表。

吉川 和男

1996年東京医科歯科大学大学院博士課程修了(医学博士)。現職国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部長。

吉田 博美

2008年武蔵野大学大学院人間社会文化研究科博士後期課程修了(学術博士)。現職武蔵野大学心理臨床センター勤務。

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