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統合失調症回復への13の提案

とりまく環境を変革するために

統合失調症回復への13の提案

統合失調症回復の環境要因への実際的な方法を提示する

著者 ワーナーR.
蟻塚亮二
野中由彦
ジャンル 精神医学・精神医療
出版年月日 2008/10/23
ISBN 9784753308118
判型・ページ数 A5・192ページ
定価 本体2,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

■目次
 はじめに
 謝 辞
序文 統合失調症とは何か?
1.この本の目的/2.統合失調症とは何か?/3. 診断に関する問題/4. 統合失調症の普遍性/5.統合失調症からの回復/6.統合失調症の経過/7.統合失調症の原因は何か?/8.家族の養育態度が原因ではない/9.薬物乱用が原因ではない/10.統合失調症における脳/11.統合失調症はなぜ思春期以後に発病するか?/12.われわれは何をなすべきか?
第1部 個人のレベル
第1章 産科合併症
 提案その1 産科合併症のリスクに関する教育的キャンペーン
第2章 薬物の使用
1.薬物の使用頻度/2.統合失調症患者に薬物使用者は多いのか?/3.疾病への効果
 提案その2 薬物使用者への個別的カウンセリング
第3章 対人的ストレス
1.ストレスと薬物療法/2.介入の成功と不成功/3.住居,収入,そして就労
 提案その3 精神病的症状への認知行動療法
 提案その4 ストレスによって誘発される精神症状にはベンゾジアゼピンを用いる
第4章 当事者の力を強める
 提案その5 サービス提供のあらゆる場面への当事者参加
第2部 家庭のレベル
第5章 家族とともに生きる
 提案その6 ケアする人に無税の介護手当を
第6章 家庭内のストレス
 提案その7 家族に対する心理教育導入へのマーケティング
第7章 人を疎外する環境
1. 哲学的起源/2.シーダーハウス/3.クライシスホーム
 提案その8 急性期治療を病院でなく家庭で
第3部 地域社会レベル
第8章 働くことの有効性  95
1.働くことの恩恵/2.就労率/3.働く場/4.援助付雇用/5.北アメリカとイギリス諸島のソーシャルファーム
 提案その9 ソーシャルファーム:当事者が働く企業
第9章 就労を妨げる制度的な罠  
 提案その10 障害年金制度の改善
 提案その11 賃金の補助
第10章 スティグマ
1.メディア・イメージ/2.偏見,差別,そしてスティグマ/3.スティグマを和らげる要因/4.発展途上国におけるスティグマ/5.ラベリング理論/6.スティグマによる病気の過程への影響 /7.統合失調症患者の家族/8.スティグマを減らすために何ができるだろうか?/9.国家的な反スティグマキャンペーン
 提案その12 ニュース・娯楽メディアへのロビー活動
 提案その13 地球規模の反スティグマキャンペーン

概要と結論
参考文献
訳者あとがき
索 引

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内容説明

訳者あとがきより● もう半年以上も前,ある当事者からの年賀状に大略以下のようなことが書かれてあった。「自分たちは生活保護をもらい,何年も欠かさずデイナイトケアに通うことで飯も食える。しかしまるでそれはワーキングプアのようであり,そこから脱出することは出来ない」と。これはまさに正鵠を射た意見である。  極論すると日本では社会資源が乏しいこともあり,精神科病院が長期入院という形で「住居」を提供し続け,デイナイトケアの一部は行き場を失った患者たちの食事配給の場と化している。こうした現状は広く見ると日本だけの問題ではない。失業率85%という高さは世界に共通している。もちろん精神疾患に対する差別偏見も,彼らに対する所得保障の乏しさも,あるいは彼らが働くとその収入のゆえに年金などをカットされ,結果として就労を選ばない「福祉の罠」(welfare trap)についても世界に共通している。こうした中でリチャード・ワーナーの本邦で2冊目となるこの本は,わが国における発病予防,就労援助,偏見除去などへの取り組みを応援する貴重な論拠となるだろう。  訳者がとりわけ刮目させられたのは,産科合併症と発病リスクの関連,貧困と発病リスクの高さ,急性期の治療を「家庭的設定」のもとに行うという試み,社会的烙印(スティグマ)克服のための対象集団を絞った取り組みの成果などであった。そしてこの本を読んで初めて,統合失調症をかかえる妊婦がその社会経済的支援の乏しさによって,不十分な周産期ケアしか受けられず,その結果,生まれた子どもの発病リスクが高くなるという可能性を知った。あるいは患者たちは「ストレスに対する脆弱性」を持っているにしても,一般人口よりもストレスに満ちたライフイベントが多く,かつ通常は拾わないようなストレスも拾ってしまうために再発率が高まることも知った。  この本は統合失調症について,発病予防から,生活,就労,社会的烙印との戦いにいたるまで挑戦的に書いてあるが,それらの筆致の底に通暁するのは「貧困と統合失調症」というテーマであり,貧困によって統合失調症の不利益が倍増させられている現実を明らかにすることであり,つまるところ貧困との戦いであるといってもよいだろう。  医療崩壊と呼ばれる今日の日本は,ひたすら途上国なみまたはそれ以下の医療・福祉の水準を目指しているように思えてならない。この本を著者の『統合失調症からの回復』(中井久夫ら監訳,岩崎学術出版社)とともに多くの人に読んでいただき,日本の医療と福祉とを崩壊から救い,ひいては当事者を守る一助となることを願うばかりである。  蟻塚 亮二

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