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ナルシシズムの精神分析

狩野力八郎先生還暦記念論文集

ナルシシズムの精神分析

複雑で謎の多い概念に精神分析的な光をあてる

著者 藤山直樹
ジャンル 精神分析
出版年月日 2008/10/28
ISBN 9784753308170
判型・ページ数 A5・168ページ
定価 本体3,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

目  次●
ナルシシズム─閉ざされた心と開かれた心─(狩野力八郎)
自己愛の病理について自己心理学的立場からの一考察(舘哲朗)
「心が閉じる」局面と治療関係─ひきこもりケースの精神療法より─(近藤直司)
自己愛人格障害患者との精神療法─スーパービジョンと治療者としての能動性─(髙野晶)
ひきこもりとナルシシズム(細澤仁)
被虐待体験と自己愛的な万能感について(生地新)
病的自己愛の発達と子どもの自己愛障害(吉田弘道)
ターニングポイント─その思索の航跡─(村岡倫子)
ナルシシズムについての覚書─心的な死との関連で─(藤山直樹)

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内容説明

まえがきより抜粋■  人のこころのひとつのありかたを表現するナルシシズムという概念はフロイトが形にしたものであるが、精神分析の枠組みをはるかに越えて使用されているし、すでに日常語の語彙に収納されてしまっている。そうした概念がいまだに学問的にも用いられている場合、その使用はなかなか難しいことになる。意味の領域の輪郭が曖昧になりがちだからである。  それでもなお、この言葉の意味領域が含み込む心的世界は豊かで興味深い。私たちが日々格闘している患者の多くが抱える病理を、そして彼らとのつきあいのなかでもっとも難しい局面を表現するときに、私たちはこの言葉を用いたくなるし、そうした事態に精神分析的な光をあてようとすればするほどこの言葉の重要度は増すように感じられる。さらに、よりプリミティブな心性を相手にすればするほど、この言葉の重要性は増大する。  曖昧であることとそれにもかかわらず使用価値が高いこととが共存していることは、この言葉に絶えず厳密な学問的検討が要求されることを意味する。概念としてどのような意味の輪郭をもつものとしてこの言葉を使うのか、そしてこの言葉で語られる精神病理や治療状況はどのようなものであるのか、そうしたことが検討の対象となるのである。  狩野力八郎先生を中心として、ナルシシズムについての継続的な勉強会がもたれたのは1990年代の半ばであった。狩野先生のまわりにいた当時30代半ばから40代を迎えようとしていた若手の臨床家たちが、土曜日の夕方に月一度集まって、症例を検討しながらナルシシズムについての理解を深めようとしたものである。  狩野先生は、自我心理学と対象関係論という大きな枠組みで構築された精神分析の理論を、臨床とのつながりを保持したままで、あるときには横断的にあるときには縦断的に検討することのできる、きわめて知的な精神分析家である。ナルシシズムという複雑で、学派によって扱いの変わる謎の多い概念を明確化することに先生が取り組んだのは、きわめて自然な成り行きであり、そうした意味で上述の勉強会は、狩野先生の関心と情熱に引き寄せられた若手の集まりであった。すべての参加者は狩野先生の問題の本質を射抜きつつ、けっして晦渋な方向に思考を向かわせず、平明さを維持し、臨床とのつながりを絶えず意識し続けるという姿勢に大変大きな影響を受けたと思う。  この論文集は、狩野力八郎先生の学恩にあずかった者たちどうしの、先生の還暦を記念して論文集を作れないか、という話から企画が始まったものである。  集まった論考は、狩野先生のナルシシズムに関する総説をはじめ力作ぞろいである。現在の日本の精神分析がナルシシズムをどう考えているのかを提示するようなこの書物を、狩野先生の還暦を記念して出版できることは、著者一同の大きな喜びである。 藤山 直樹

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