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自閉症の親として

アスペルガー症候群と重度自閉症の子育てのレッスン

自閉症の親として

全米自閉症協会2007年“ベストブック・オブ・ザ・イヤー”

著者 パーマー A.
モーレルM.F.
梅永 雄二
ジャンル 発達・思春期・老年
自閉症・発達障害
出版年月日 2009/06/08
ISBN 9784753309061
判型・ページ数 A5・216ページ
定価 2,420円(本体2,200円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

目次●

謝辞 
まえがき 

第1章 自閉症と診断されてから立て直した生活 
――エリックの母親アンの場合

第2章 自閉症と診断されてから立て直した生活 
――ジャスティンの母親モリーンの場合

第3章 家族生活のバランスを保つために 
 レッスン1 ユニークな見方をするきょうだい 
 レッスン2 きょうだいは自分の感情を話し合う時間が必要 
 レッスン3 自閉症のきょうだいに対する家庭外でのサポート 
 レッスン4 自閉症のきょうだいたちも自分のための特別な時間を必要としている 
 レッスン5 家族全員で同じことをする必要はない 
 レッスン6 きょうだいにどれくらいの責任を持たせるかを決めるのは難しい 
 レッスン7 親は効果的なロールモデルである 
 レッスン8 きょうだいたちは友達の影響を強く受けるものである  
 レッスン9 親は健常なきょうだいの行動に感謝すべきです 
 レッスン10 きょうだいの成長 

第4章 安定した家族生活を営むために 
――結婚と親戚づきあい
 結婚
 レッスン1 夫と妻は悲しみが異なる場合がある 
 レッスン2 夫婦はお互い与え合うべき可能性を見つけるべきです 
 レッスン3 責任はできることによって分担すべきである 
 レッスン4 夫婦のための時間を作ることが必要 
 親戚づきあいについて
 レッスン1 期待を補正する必要があるかもしれない 
 レッスン2 親戚も自閉症児の教育から何かを得る可能性がある 
 レッスン3 必要であれば援助を受け入れるべき 
 レッスン4 場合によっては「そこまで」と言う頃合を知らなければならない 

第5章 子どもたちの人権を守る 
 Ⅰ 専門家とポジティブな関係を築くためには 
 レッスン1 子どものために何をしてあげたいかを具体的に示すこと 
 レッスン2 子どもはできるだけ権利の分け前にあずかるべきである 
 レッスン3 保護者は子どもの自己擁護スキルを伸ばす必要がある 
 レッスン4 わかりやすくまとめておく 
 Ⅱ 衝突から脱皮しよう 
 レッスン1 教師等の専門家との関係が親のストレスを引き起こす 
 レッスン2 教師等専門家も親との対人関係にストレスを感じている 
 レッスン3 耳を傾けることが鍵である 
 レッスン4 焦点を当てるべきなのは立場ではなく、興味・関心である 
 レッスン5 良いコミュニケーションはチームワークを育てる 
 レッスン6 感情は争いから取り除くべきである  
 レッスン7 あきらめない粘り強さを有効に働かせる 
 レッスン8 子どもが必要なサービスを受けるため弁護しなければならない 
 Ⅲ ときには権利擁護が失敗するということを理解しなければならない  
 レッスン1 親はサポートシステムを広げていく必要がある 
 レッスン2 もし可能であれば、学校を変えることも必要な場合がある 
 レッスン3 みんな「禍を転じて福となす」が可能なのです 
 Ⅳ 専門家が行う「最善の方法」の質を見極める 
 
第6章 私たち自身に対するケア 
 レッスン1 睡眠を優先すべき 
 レッスン2 私たちは「ほどいよい親」であると認めよう 
 レッスン3 リスパイトサービスは息抜きを与えることができる 
 レッスン4 ときどき休んだりすることはとても大切なことである 
 レッスン5 ユーモアのセンスが戻ってくれば安心 
 レッスン6 友だちはライフセーバーであるかもしれない 

第7章 私たち自身の道を求めて 
 レッスン1 早期介入が必ずしも未来につながる唯一の鍵ではない 
 レッスン2 すべての自閉症児に適した治療法はない 
 レッスン3 思春期が一番悪い時期ではない 
 レッスン4 機能レベルは成功度を唯一予測するものではない 
 レッスン5 学校でうまくいったからといってすべてがうまくいくわけではない 
 レッスン6 自閉症を治療してもらうことを望んでいるのではない 

第8章 世間一般の人たちとの対応  
 レッスン1 家族全員のためになる外出を考える 
 レッスン2 不測の事態のすべてに準備をしておく必要がある 
 レッスン3 数が多ければストレスは軽減される 
 レッスン4 誰かほかの人にお願いしてもかまわない 
 レッスン5 どれだけの情報を与えるべきか注意して選ぶべきである 
 レッスン6 オープンにするかどうかは自閉症の子どもの意思を尊重すべき 
 レッスン7 公の場で親にとって有効なのは、仲間を作ることです 
 レッスン8 私たちは、そうではないのに、他人が子どもを非難していると決めてかかることがある 
  
第9章 子どもたちおよび私たち自身を受け入れること 
 レッスン1 障害の存在を認め、その障害が長期にわたることを認めること 
 レッスン2 子どもとその障害を家族との生活に共存させる 
 レッスン3 私たち自身の失敗や誤りを許すようにすべきです 
 レッスン4 私たちの喪失感に意味を見つける 

第10章 子どもを手放すこと(アンの場合) 

第11章 子どもを手放すこと(モリーンの場合) 
 
あとがき
参考文献

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内容説明

あとがきより●  私は、二〇〇六年八月から二〇〇七年九月までの約一年一カ月間、ノースカロライナ州アッシュビル市にあるアッシュビルTEACCHセンターで自閉症者支援に関する研修を受けました。このアッシュビルTEACCHセンターには、ディレクターと呼ばれるセンター長はじめ六人のセラピストが乳幼児の診断から成人期の就労までさまざまなサポートを行っていました。そのなかの一人にクリス・リーガンという女性のセラピストがいました。彼女には四人の息子がおり、一番下の息子ティムが消防士で、もうすぐ結婚するという時期でした。そのすぐ上に大学院で哲学を勉強しているアンディがおり、またその上に考古学を勉強しながら森林レインジャーになったジェームスがいました。そして長兄として当時二十七歳になるバッキーがいたのですが、そのバッキーは知的障害を伴う自閉症でした。  バッキーは家から離れてグループホームに居住しながら働いており、絵を描くのとマラソンが大好きなとても素敵な青年でした。  クリスの夫マイクは父親が朝鮮戦争に従軍していたため、小さいときに日本の別府に住んでいたためか、とても日本が好きなのだそうです。クリスとマイクは学生時代にボランティアで英語を教えに行ったアフリカで知り合い、アメリカに帰ってきて結婚しました。  そして最初に生まれたバッキーが自閉症だったのです。 私がTEACCHセンターで研修を受けてふた月ほど経過したころでしょうか、そのクリスが私のところへやって来て、「この本はとてもいい本よ、ぜひ読んでみるといいわよ」と手渡されたのが、『自閉症の親として』でした。(その時は、この『自閉症の親として』が後に二〇〇七年の全米自閉症協会〝ベストブック・オブ・ザ・イヤー″に選ばれるとはまったく想像していませんでしたが。) バッキーが生まれたころは、アメリカでも自閉症の原因は、親にその責任があるように言われている時期でした。クリスは藁をもすがる気持ちでいろいろな機関を訪れるも、どこも十分な対応はしてくれませんでした。そんななか、ノースカロライナ大学医学部精神科TEACCH部を知り、リー・マーカス教授が母親の会を立ち上げていると聞き、飛び込みました。マーカス教授はとても優しく、保護者の気持ちを心から受け止めてくれたそうです。その母親の会でクリスは親しい友人ができました。その友人たちとは二十年以上経た今でも親しい付き合いをしています。その友人の名がアン・パーマーとモリーン・モーレルでした。 研修の合間を縫って、クリスから紹介されたこの本を読み進めるにつれ、いつの間にか保護者であるアンとモリーンの気持ちに共感し、ぜひこの本を日本の自閉症の親および関係者に紹介したいと思うようになりました。そんな折、『青年期自閉症へのサポート』でお世話になった岩崎学術出版社の唐沢さんとのCARSのニューバージョンであるCARS-HF(高機能自閉症・アスペルガー症候群の自閉症評定尺度)についてのやり取りをメールで行っていたため、この本を訳したい旨をお伝えしました。翻訳本はどこの出版社でもあまりやりたくないと聞いていたのですが、唐沢さんのご尽力により翻訳権を取っていただきました。それから日本とアメリカとのメールのやり取りで一章ずつ訳したものを検討していただき、訳がわかりづらかったところはクリスを通してアンとモリーンに何度か会わせていただき、確認させていただきました。 その間、バッキーのマラソン大会に一緒に出たり、バッキーの描いた絵の展覧会に行ったり、また何度もクリス邸の食事に呼んでいただき、アンやモリーン、モリーンの夫のロブと話をする機会を設けてもらいました。 とりわけ、四男ティムの結婚式に私も呼んでもらうことになり、アンの娘のセイラやモリーン夫妻らも参加した結婚式とその後のパーティーは、とても思い出深いものになりました。というのは、パーティーには自閉症の兄バッキーも参加したのですが、新郎新婦だけではなく、クリス夫妻や新婦の祖父母などみんながダンスをし始めるのです。しかしながら、バッキーはずっと立ちっぱなしでした。そんなバッキーを見た新婦の友だちたちが、一人ひとりバッキーをリードしながらダンスを踊り始めるシーンは、まるでレインマンの映画を見ているようで、生涯忘れることができないでしょう。 そうして足かけ二年がかりで出版にこぎつけました。英語の専門家ではない私の拙い訳について、唐沢さんも一緒に考えていただきました。そういった意味ではこの本は私の訳書というよりも唐沢さんとの共訳と言っても過言ではありません。 唐沢さんには心よりお礼申し上げます。 私の恩師である児童精神科医の佐々木正美先生はおっしゃいます。 「障害というものは本人に帰するものではなく、その人と健常と呼ばれる人との間にある壁のことを意味するのです」と。この本の中に疲弊しきったモリーンが、ある学校心理士と出会った後の気持ちを述べる箇所があります。その時のモリーンの気持ちは、まさに佐々木先生がおっしゃる「壁」を意味するものと思います。なぜなら、自閉症という障害を否定するのではなく、自閉症は自閉症のままでいい、周りが自閉症の人、そしてその保護者を理解してあげることにより、その壁は崩していけるのです。 この本はそういった自閉症者およびその家族をとりまく周りの理解、支援について訴える名著といっていいでしょう。 この本によって、自閉症と関わる専門家だけではなく、多くの一般の人たちに対する自閉症の理解が進み、また自閉症と診断されたお子さんを持つ多くの保護者が勇気づけられることになれば、訳者として何よりの幸せです。 最後になりましたが、自閉症およびその家族への理解と支援がますます広がっていくことを願っています。                   咲き誇る桜の香りで春を感じる宇都宮大学にて 梅永 雄二

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著者情報

パーマー A.

モーレルM.F.

梅永 雄二

早稲田大学教育・総合科学学術院教授。慶應義塾大学文学部社会・心理・教育学科卒業。筑波大学大学院教育研究科障害児教育専攻修了。博士(教育学)。明星大学人文学部専任講師、同大学助教授、宇都宮大学教育学部教授を経て現職。専門は発達障害臨床心理学、職業リハビリテーション学

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