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摂食障害の不安に向き合う

対人関係療法によるアプローチ

摂食障害の不安に向き合う

不安に対処し治療効果につなげる臨床的な創意工夫を詳述する

著者 水島広子
ジャンル 精神医学・精神医療
心理療法・カウンセリング
行動療法・認知療法
出版年月日 2010/03/05
ISBN 9784753310012
判型・ページ数 4-6・200ページ
定価 本体2,000円+税
在庫 絶版
 

目次

●目 次
 はじめに
第1章 摂食障害に対人関係療法的アプローチを適用する根拠
第2章 摂食障害患者における不安を考える──「役割の変化」という視点
第3章 不安を扱う基本姿勢
第4章 症状を位置づける──患者の症状に干渉しないことの意味
第5章 治療者の不安に向き合う
第6章 家族の不安に向き合う
第7章 不安をコントロールして現状を受け入れる──「位置づけ」という考え方
第8章 不安をコントロールして前進する──「土俵」に乗せるという考え方
第9章 病気と治療を「位置づける」
 文献
 あとがき

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内容説明

「はじめに」より抜粋●  患者の不安によく注目するようになってみると、そもそも拒食症の発症プロセスそのものがPTSDと同様の構造を持っていることが多く、実際の治療ではPTSDの治療と同じようなプロセスを踏んでいくことに気づくようになった。  ジュディス・ハーマンは、心的外傷の中核を「無力化 と他者からの離断」だと言っている。「無力化」も、それまでの自分の有力感からの離断であると考えれば、PTSDの中核的特徴は「離断」にあると言える。それまでの自分からの離断、周囲からの離断、人生からの離断が患者を苦しめる。そして、有効な治療においては、つながりの回復が必ず起こるものである。私が拒食症の治療で行うことは、成長という土台の上でのつながりの回復であり、実質的にはPTSDの治療における作業とまさに同じである。  ところが、すでにPTSDと同じような状態にある拒食症患者に対して、さらなるトラウマを与えるような治療が当然のように行われていることについて、私は強い懸念を抱いている。PTSDを少しでも勉強している治療者であれば、PTSDの患者に対してA子が受けたような治療的介入をすることは考えられないだろう。それがどれほど危険で有害なことか、理解できるからだ。拒食症は強迫性障害やPTSDのように不安障害として分類した方がよほど現実の治療に即していると私は思うが、学術的な分類はさておいても、拒食症を摂食障害としてではなくPTSD様の障害として見ることによって、より多くの治療者が適切な治療を行えるようになることを願っている。  本書では、摂食障害の治療の実際を、特に「不安」に注目して描いていきたいと思う。摂食障害の治療をするときには、特に拒食症については、治療者の仕事は「安心の提供」であって、体重を増やすことや症状をなくすことではない、という認識を持つくらいがちょうどよい(患者がよく治る)と私は思っている。病気についての心理教育をきちんとしていくことも、対人関係療法という特定の治療法を用いていくことも、すべては安心の提供を目的としたものであるという位置づけをはっきりさせると、治療が大変すっきりと整理されて効率的になる。治療者にとっても確かな指針になるので、治療も安定する。この前提には、安心することによって摂食障害は治っていくという仮説があるわけだが、私の今までの経験からは、それが正しいと考えている。制限型の拒食症患者の中には、安心しただけで治っていく人も実際に存在する。安心しただけでは不十分で、体重を増やすための行動療法的な取り組みが必要になる人もいるが、それも、安心の上に初めて成立することである。安心の中に「治りたい」という願望は生まれ、安心から生まれた余裕の中に「少しずつ行動を変えてみよう」という勇気が生まれる。したがって、拒食症患者にとって、安心することは、必要十分条件である場合もあるし、少なくとも必要条件であると言って過言ではないと思う。 水島広子

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