サポーティヴ・サイコセラピー入門
力動的理解を日常臨床に活かすために
多くの具体的実例から支持的なアプローチを学ぶ
著者 | ピンスカー, H 著 秋田 恭子 訳 池田 政俊 訳 重宗 祥子 訳 |
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ジャンル | 心理療法・カウンセリング |
出版年月日 | 2011/08/29 |
ISBN | 9784753310272 |
判型・ページ数 | A5・312ページ |
定価 | 3,740円(本体3,400円+税) |
在庫 | 品切れ・重版未定 |
目次
序の序として 北山 修
訳者まえがき
序 章
第1章|サポーティヴ・サイコセラピーの定義と範囲
第2章|対話を中心としたスタイル
セッションを始めること/セッションを終わること/セラピストについての患者の質問/患者の望ましくない行動
第3章|セルフ・エスティーム
患者をよく知る/出来事の情緒的な意味を知る/答えやすいように促すこと:プロンプト/セルフ・エスティームを下げる言葉を避ける/批評することを避ける/他
第4章|不安の軽減と予防
セラピストが誘発する不安/問題を名づけること/防衛の尊重/他
第5章|自我機能
現実検討/思考過程の障害/行動と感情の統制/他
第6章|適応スキル
直接的なアプローチ/原則を教えること/他
第7章|特殊なサポーティヴ技法
励ましと強化/保証/リフレーミング/助言と教示/他
第8章|表出的な要素
直面化と解釈/妥当と思われる説明/他
第9章|患者-セラピスト関係
サポーティヴな関係/転移と治療同盟/共感の役割/境界/嫌悪/他
第10章|実践的な治療上の問題
予約に来ないこと/遅刻/臨時面接/緊急事態/支払いの困難/治療の行き詰まり/他
第11章|治療の計画と終結
医療モデル/精神分析的なモデル/学校モデル
第12章|結 論
内容説明
「訳者まえがき」より抜粋● 本書は,サイコセラピーの現場で「何を言うべきか」ということに焦点が当てられている。著者は独自のサポーティヴ・セラピーモデルに基づいて,パーソナリティの発展や症状形成についての知識がなくても通用する「技法や戦術の集合体」を示そうとしている。そしてそのために,豊富なヴィネットすなわち臨床のひとコマの具体的な実例を挙げているのが特徴である。これらの描写を見ると,さまざまな臨床の場面で,なるほど,と思わせるところがあるかと思う。ただし,これらの「治療的な対話の断片」は,著者も述べているように,「異なる文脈では,すべきではないことの描写ともなりうる」。すなわちあくまでも,「患者との特定の相互交流が正しいか間違っているかを決めるのは,その文脈と治療計画による」のであるし,「治療計画は,問題のアセスメントと定式化に基づく」ものである。そしてまた「アセスメントと定式化は,セラピストのさまざまなオリエンテーションを反映して,極めて多様」なのである。 著者によると,サポーティヴ・セラピーは「臨床的な問題の極めて幅広い範囲に適応のある精神力動的に基礎づけられた方法」であり,「そのスタイルは対話を中心」としたものである。この本の主題となっているのは,表出的セラピーとサポーティヴ・サイコセラピーの二極間のスペクトラムのうち,「サポーティヴ-表出的治療あるいは表出的-サポーティヴ治療のサポーティヴな構成要素」であり,「焦点は技術」,目的は自我機能,セルフ・エスティーム,適応スキルの向上にある。つまり出自は精神分析であるが,目指しているものは「サポーティヴなスタイルを維持しようとする場合の多くの状況で言うべきことの基本的枠組み」についてのモデルである。そのために,それぞれのヴィネットの背景にある意味をどう理解するかは,読者の理論的オリエンテーションによって異なることになる。読者が,精神分析的な理論的志向をもっていればその理論と,認知行動療法的志向をもっていればその理論と結びつけて考えるであろう。また,はっきりとした理論的志向をもっていなくても,臨床場面ではそれなりに機能するであろうし,そのセラピストがいずれは志向していく理論と結びついていくことになるであろう。 言い換えれば,それぞれのベースにある理論を問わず,たとえ理論が定まらない初学者であっても,臨床場面でそれなりに通用する「技法や戦術の集合体」を表現しようとしているのだと言えよう。 (中略) 本書で提示されている内容は,隔週から週2回程度の精神分析的心理療法はもちろん,一般的に支持的と言われる心理療法や認知行動療法の実践,十分には構造化されていない日常的な薬物療法中心の外来診療から,現場での立ち話,電話対応に至るまで,また,開業心理療法ばかりではなく,入院治療場面や学生・教育相談といったさまざまな現場で応用可能である。例示されている具体的なやりとりは,著者も述べているように,背景や状況によっては意図した目的とはまったく逆の意味をもってしまうことがあるだろうが,各々のやりとりの意図や結果が明確に示されており,ただのマニュアルではない,さまざまな示唆に富んだ,深みのある内容となっている。 どのような病態に対して,どのような薬物を処方すればよいか,には精通していても,日常診療でどのように患者に接してよいか,何を話したらよいのかがわからない医師が増えているとも言われている。本書はこうした医師をはじめ,初心からベテランまでのセラピスト,ナースやソーシャルワーカーなどのコメディカルスタッフにも役立つに違いない,と思う。ぜひ繰り返し読まれることを勧めたい。
著者情報
ピンスカー, H 著
秋田 恭子 訳
池田 政俊 訳
重宗 祥子 訳