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関係精神分析入門

治療体験のリアリティを求めて

関係精神分析入門

治療者・患者の現実の二者関係に焦点を当てる

著者 岡野 憲一郎
吾妻 壮
富樫 公一
横井 公一
ジャンル 精神分析
出版年月日 2011/11/09
ISBN 9784753310333
判型・ページ数 A5・272ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

まえがきに代えて――間主観性理論と関係性理論
はじめに
心の量子論
間主観性理論と関係性理論の関係
ストロロウの間主観性
間主観性理論と関係性理論の違い
バイリンガルは何語で考えるか――結語に代えて
さいごに

第1部 関係精神分析とは何か
第1章 関係精神分析の展望
1.関係精神分析とは 2.関係精神分析へと向かった個人的な背景 3.最後に――関係精神分析の可能性と限界

第2章 関係性精神分析の成り立ちとその基本概念について
1.はじめに 2.対象関係論の受容と発展に関する一考察 3.関係精神分析の由来――米国における対人関係論の文脈 4.対象関係論の受容の一形態――関係精神分析をとおして 5.関係精神分析における内的世界の扱い 6.関係精神分析と対象関係論の比較の試み

第3章 関係精神分析の感性の起源──対象概念の復権という視点から
1.はじめに 2.欲動の精神分析の成立 3.対象の復権 4.関係精神分析の感性

第2部 関係精神分析成立に貢献した人々
第4章 ミッチェルの功績
1.はじめに 2.ミッチェルの経歴 3.理論的な功績 4.組織上の功績 5.ミッチェルの思想の特性 6.おわりに

第5章 グリーンバーグの功績──ラジカルな中道派
1.はじめに 2.グリーンバーグの歩みと現在の立場 3.『エディプスとそれを超えて――一つの臨床理論 4.精神分析における過剰excessへの警戒

第6章 ギルの功績

第7章 コフート,ストロロウの功績
1.はじめに 2.ハインツ・コフート 3.ロバート・D・ストロロウ

第8章 サリヴァンの功績
1.はじめに 2.サリヴァンの生涯と理論 3.サリヴァンの業績 4.関係精神分析への貢献 5.おわりに

第3部 関係精神分析のさまざまな論理的基盤
第9章 関係精神分析と自己心理学
1.はじめに 2.コフートの自己心理学は関係性精神分析か? 3.一方向二者心理学的なコフートの自己心理学 4.関係精神分析とコフートの自己心理学との違い 5.結語

第10章 システム理論との違い
1.はじめに 2.現代自己心理学のシステム理論 3.自己心理学は関係精神分析からどう区別されるか 4.結語

第11章 関係精神分析と乳児研究──ボストン・グループ他
1.はじめに 2.さまざまな間主観性 3.乳児研究から大人の精神療法へ 4.ボストン・グループ 5.ボストン・グループへの批判 6.終わりに

第12章 関係精神分析と生物学的な研究
1.メルツォフらによる乳児の模倣研究 2.ミラーニューロンの発見 3.ミラーニューロンと自閉症との関連 4.ミラーニューロンの発見はどのように「関係精神分析」にかかわるのか?

第13章 関係精神分析と複雑系の理論
1.はじめに 2.非線形と反還元主義 3.長期的予測不可能性と限定合理性 4.自己組織化臨界とフラクタル 5.関係の変容とは何か 6.おわりに

第14章 ホフマンの業績と構築主義的精神分析
1.精神分析と精神療法を区別しないこと 2.ホフマンの社会構築主義 3.関係精神分析および構築主義の可能性と限界

第4部 関係精神分析の治療と技法
第15章 ミッチェルの治療論
1.ミッチェルと時代 2.精神分析概念の二項対立への挑戦 3.ミッチェルの治療スタイル 4.ミッチェルの語り口と批判 5.おわりに

第16章 関係精神分析の治療技法
1.はじめに 2.関係精神分析の技法論という逆説 3.技法論に関する関係精神分析的考察 4.関係精神分析理論の紛らわしさ 5.自由連想法について 6.関係精神分析における介入についての考察

あとがき

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内容説明

関係精神分析とは
今なぜ関係精神分析なのか?
いまや関係精神分析は,米国における現代の精神分析のさまざまな流れの総称といってもいい。そこにはコフート理論,問主観性の理論,乳幼児精神医学,外傷および解離性の理論など,古典的な分析理論に対して相対主義的な立場を取るあらゆる動きが学派を超えて集結し,さらなる広がりを見せているという印象を受ける。関係精神分析relational psychoanalysisのもととなる関係性理論reiational theoryという概念は,1983年にジェイ・グリーンバーグとステイ一ヴン・ミッチェルがその著書“Object Relations in Psychoanalytic Theory(精神分析理論における対象関係)”(Greenberg,Mitchell 1983)(邦訳題『精神分析理論の展開』,以下この名前で呼ぶことにする)で対象関係論と対人関係論の共通項という意味合いで用いたことが始まりである(Ghent 2002)。それが対象関係論とも対人関係論とも異なる関係精神分析として独自のメッセージを帯 びて発展していった背後には,ミッチェルという希代の精神分析家のカリスマ性と入間性,そして強力なリーダーシップがあった。従来精神分析の学派の多くはそれぞれ一人の偉大なリーダーシッ プと共に発展してきた。クライン学派,ユング派,ラカン派,サリヴァン派等はその例である。

そもそも関係精神分析とは何か?
関係精神分析の本質は,臨床場面で患者と治療者の間に生じる体験のリアリティを追求することにある。それは同理論が強調する治療者と患者の有する二者性,ないしは二方向性である。フロイトの示した古典的な精神分析モデルは,治療者は患者の自由連想に耳を傾け,その無意識的な内容を解釈することを治療の本質として捉えていた。しかし実際には治療者は客観的な観察者にとどまることはできない。その言動や振舞いは患者の自由連想に反映され,またその連想内容は翻って治療者に影響を与える。関係精神分析において強調される二者性は,治療者と患者は各瞬間に影響を及ぼしあっているという現実を指し示しているのである。関係精神分析の事実上の創始者であるグリーンバーグとミッチェルは,このような自分たちの立場を,まずはフロイト的な欲動論的立場に対するアンチテーゼとして位置づけた。しか し同様の主張は米国において1970年代より複数の分析家によりなされている。それが古典的な視点に立ったいわゆる一者心理学one person psychologyとは異なる,二者心理学two person psychologyGill l993)の立場である。精神分析を患者との相互的なかかわりの中で創造される過程として捉える関係精神分析は,その理論的な系譜としては,いわばこの二者心理学の発展形と言える。そしてこのような関係精神分析の立場はまた,いわゆる社会構築主義のそれとも多くの点で重なり,現代的な人間の知のパラダイムの展開,とりわけポストモダニズムの影響を大きく受けている。しか し関係精神分析は単に一つの理論的な立場には留まらない。その人間観や背後に流れるヒューマニズムにこそ大きな特徴がある。以下に述べるとおり,それは患者の立場の重視,ひいては人間性の尊重という姿勢に貫かれているのだ。ところがわが国の現状においては,臨床家の間で,関係精神分析に対する賛同の声や反論が聞かれる以前に,そもそもその存在が十分に認識されていない。これは非常に残念なことと言わなければならない。精神分析療法を実践する上で最も生産的なのは,治療技法を超えた治療者と患者との出会いの体験であり,関係精神分析はそれに理論的な根拠を与えてくれるからである。

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著者情報

岡野 憲一郎

1982年東京大学医学部卒業,医学博士。1982~85年東京大学精神科病棟および外来部門にて研修。1986年パリ,ネッケル病院にフランス政府給費留学生として研修。1987年渡米,1989~93年オクラホマ大学精神科レジデント,メニンガー・クリニック精神科レジデント1994年 ショウニー郡精神衛生センター医長(トピーカ),カンザスシティー精神分析協会員。2004年4月に帰国,国際医療福祉大学教授を経て現職京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授,米国精神科専門認定医,国際精神分析協会,米国及び日本精神分析協会正会員,臨床心理士。 著訳書 恥と自己愛の精神分析,新しい精神分析理論,中立性と現実新しい精神分析理論2,解離性障害―多重人格の理解と治療,脳科学と心の臨床,治療的柔構造,新外傷性精神障害─トラウマ理論を越えて,続 解離性障害―脳と身体からみたメカニズムと治療,脳から見える心―臨床心理に生かす脳科学,恥と「自己愛トラウマ」,臨床場面での自己開示と倫理(以上岩崎学術出版社)

吾妻 壮

1994年東京大学文学部卒業。1998年大阪大学医学部卒業。2000~2009年米国にて,アルバート・アインシュタイン医科大学精神科レジデンシー修了,コロンビア大学精神分析センターおよびウィリアム・アランソン・ホワイト研究所にて精神分析の訓練を受ける。帰国後,大阪大学大学院医学研究系研究科精神医学教室を経て現在神戸女学院大学人間科学部教授。国際精神分析協会および米国精神分析協会正会員,医学博士。 著訳書 開かれた心(里文社,共訳)乳児研究から大人の精神療法へ(岩崎学術出版社,共訳)

富樫 公一

1995年愛知教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。2001~2006年NPAP精神分析研究所,TRISP自己心理学研究所(ニューヨーク)に留学。2003~2006年南カリフォルニア大学東アジア研究所客員研究員。2006~2012年広島国際大学大学院准教授(2007年まで助教授)。現職甲南大学文学部教授,TRISP自己心理学研究所精神分析家,栄橋心理相談室精神分析家,ニューヨーク州精神分析家ライセンス,臨床心理士,博士(文学),NAAP精神分析学会認定精神分析家,国際自己心理学会国際評議委員,International Journal of Psychoanalytic Self Psychology国際編集委員。 著訳書 乳児研究と成人の精神分析―共構築され続ける相互交流の理論(誠信書房,監訳)ハインツ・コフート―その生涯と自己心理学(金剛出版,共訳)蒼古的自己愛空想からの脱錯覚プロセス(風間書房)

横井 公一

1982年金沢大学医学部卒業。1993~1996年アルバート・アインシュタイン医科大学トランスカルチュラル・サイカイアトリー・フェーローおよびウィリアム・アランソン・ホワイト研究所に留学。2007~2012年関西福祉科学大学大学院社会福祉学研究科教授。現職微風会 浜寺病院 勤務。 著訳書 精神分析と関係概念(共訳)精神分析理論の展開(監訳)関係精神分析の視座(監訳)以上ミネルヴァ書房,精神分析という経験(岩崎学術出版社,監訳)

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