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実践入門 思春期の心理療法

こころの発達を促すために

実践入門 思春期の心理療法

移ろいやすく捉え難い心を扱うためのヒント

著者 細澤 仁
ジャンル 発達・思春期・老年
出版年月日 2013/04/09
ISBN 9784753310586
判型・ページ数 4-6・192ページ
定価 2,200円(本体2,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

目次●
 序章 はじめに
第一部 思春期の心理療法に臨む前に
 第一章 私の思春期臨床に影響を与えたいくつかのケース
 第二章 思春期と精神分析的心理療法
第二部 思春期の心理療法に臨む
 第三章 初回面接
 第四章 アセスメントと方針の策定
 第五章 心理療法の初期──マネージメントの時期
 第六章 心理療法の中期
 第七章 心理療法の後期と終結
第三部 思春期の心理療法に臨んだ後に
 第八章 フォローアップ
 第九章 ひとつのケース
第四部 補 遺
 第十章 思春期の心理療法に向いている臨床家
 第十一章 思春期の心理療法をめぐるいくつかの事柄

 終章 おわりに
 参考文献

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内容説明

【序章より抜粋】本書の対象として想定されている読者は、思春期の患者にセラピーを提供する立場にある、経験が浅い臨床心理士および精神科医(以下、煩雑を避けるために、便宜上、セラピストと記述します)です。また、思春期の患者とかかわる機会を持つ、医療・福祉・教育分野において対人援助サービスに携わる方々にも何らかのヒントになるかもしれません。特に、教師など教育関係の方々には、学校現場で生徒を理解し、心理的援助を行う際に有用となる内容も含まれていると思います。  思春期は、子どもと大人の間です。思春期の若者には、子どもの部分もありますし、大人の部分もあります。また、思春期は子どもでもなく、大人でもないという固有の部分もあります。思春期というのは移行の時期であり、移ろいやすく、捉え難いものです。このような事情もあり、思春期の心理療法には、子どものセラピーや大人の心理療法と異なる固有の難しさがあります。初心のセラピストは、思春期の患者のセラピーに乗り出すと、さっそくさまざまな困難の洗礼を受けることになります。本書の中で、そのような困難をいかに味わい、心理療法的に扱っていくかということを記述したいと思います。  本書において、私は、何らかの疾患や問題への対処という観点ではなく、そのような困難を抱えた思春期の患者という個人を相手にしたセラピーという観点から記述し説明したいと思います。このような治療論を取るにはいくつかの理由があります。  ひとつは、私の専門が精神分析であることと関係しています。精神分析は、精神疾患や臨床的問題そのものを対象とするのではなく、それらを有する人間のこころのあり方に注目する臨床理論です。ふたりの人が同じ症状や問題を呈していても、そのふたりのこころのあり方はまったく異なります。本書で描写するセラピーは、目の前にいる人のこころのあり方を取り扱う臨床的営為である精神分析を基盤にしています。精神分析は、セラピストと患者の出会いから別れまでの間に生起する出来事とプロセスを十分に体験し、味わい、その意味について想いをめぐらせる営みです。それゆえ、精神疾患や臨床的問題そのものよりも、個人と個人のユニークな関係の中に表れる事象を大切にするわけです。  もうひとつは、思春期の患者の症状や問題は、大人と比較して定型的ではない場合が多く、また移ろいやすいという事情と関係しています。思春期の特徴や思春期心性が症状や問題を複雑にします。思春期患者の場合、診断の確定が難しいという事態も同じ事情から生じています。それゆえ、思春期のセラピーの目的は、症状の軽減や問題行動の消失とするよりも、まずは思春期の若者の成長を援助することとした方がよいと思います。つまり、思春期のセラピーにおいては、患者の中の心理的問題や表面に表れた症状・問題行動が変容することを目指すのではなく、患者のこころ自体が成熟していくことを助けるという発想が望ましいということで()す。思春期は成長の一段階です。少々の紆余曲折はあっても、多くの若者は周囲の影響や援助を受けながら自分なりに成長していきます。心理療法もその周囲の援助のひとつとして位置づけられるべきでしょう。思春期の若者が成長すれば、症状や問題もよりシンプルになり、扱いやすくなりますし、場合によっては、症状の軽減や問題の消失が認められることもあります。  精神疾患や臨床的問題別に記述をせず、思春期のこころのあり方に注目し、セラピーにおけるそれぞれの時期に生起するプロセスや諸問題とその対処について説明すると書きましたが、この本はシングル・ケース・スタディではありませんので、ある程度包括的、抽象的な説明になることを避けることができません。できる限り、臨床ビネットを利用し、抽象的になり過ぎないように心がけてはいますが、限界もあります。そのため、本書の内容をそのまま実行しても、思春期の患者のセラピーはうまくいかないでしょう。そもそも、心理療法はその人らしさが出ているものがもっとも患者の役に立つものだと私は考えています。それゆえ、読者のみなさんには、この本に書いてあることをひとつのヒントとして、自分なりの、そして、自分らしい心理療法を実践していただきたいと思います。

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著者情報

細澤 仁

1963年 栃木県に生まれる 1988年 京都大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業 1995年 神戸大学医学部医学科卒業 2001年 神戸大学 大学院 医学系研究科 助手 2007年 兵庫教育大学 大学院 学校教育研究科 教授 2010年 椙山女学園大学 人間関係学部 教授 2012年 関西国際大学 人間科学部 教授 専 攻 精神医学,精神分析,臨床心理学 現 職 アイリス心理相談室,フェルマータ・メンタルクリニック

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