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発達精神病理学からみた精神分析理論

目次

目次●
 日本版への序
 序文
第1章 本書と精神分析基本モデルの紹介
第2章 フロイト
第3章 構造論的アプローチ
第4章 構造論モデルの修正と発展
第5章 対象関係論序説
第6章 クライン‐ビオン モデル
第7章 英国精神分析の「独立」学派
第8章 北米の対象関係理論家たち
第9章 対人的‐関係論的アプローチ
第10章 ボウルビィの愛着理論モデル
第11章 スキーマ理論と精神分析
第12章 フォナギーとタルジェによるメンタライゼーション・モデル
第13章 精神分析理論の実践
第14章 終わりに,そして将来に向けて
 文献
 監訳者あとがき
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馬場 禮子(ばば れいこ)
1934年 東京に生まれる
1958年 慶應義塾大学社会学部研究科心理学専攻・修士課程修了
同 年 慶應義塾大学医学部精神神経科勤務
    同時に三恵病院などにて精神科臨床に従事
1984年 常磐大学人間科学部教授
同 年 中野臨床心理研究室を開設,現在にいたる
1991年 東京都立大学人文学部教授
1997年 放送大学教養学部教授
2005年 山梨英和大学大学院(臨床心理学専攻)教授
現 職 中野臨床心理研究室
 
青木 紀久代(あおき きくよ)
1993年 東京都立大学大学院博士課程修了。博士(心理学)
1993年 東京都立大学人文学部助手
1999年 お茶の水女子大学生活科学部助教授
現 職 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授

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内容説明

精神分析理論にとって根幹ともいえる発達論は、Freud, S以来大きな変遷を遂げて来た。欲動の発達を中心に据え、父息子間のエディプス葛藤を関係性の軸としたFreud理論から始まった発達論は、今や出生当初からの母子関係を軸とし、一者、二者、三者の関係性の展開を論じる発達論へと変遷して来ている。しかも、Freudによる発達論も、今なおしっかりと位置づけられ、盛んに用いられているというのが精神分析理論の特質であろう。病理は発達様式を再現するという視点を最初に示して、発達精神病理の重要性に注目させ、現在の理論展開の緒を開いたのはFreudであることを忘れてはならない。  多くの理論が並列され、また次々に提起されるのは、著者Fonagy, Pらの言う通り、精神分析の理論がどれも部分的なものであり、すべての理論を扱わなければ全体を理解できないからであるかもしれない。しかし言葉を変えて言えば、精神分析学が複雑で重層的な事象を扱う学であり、それゆえに多面的な理解を可能にする理論構成が必要になるのだと言えるであろう。理論はどれかが消えて代わりが現れるのではなく、またどれかを肯定してどれかを否定するべきものではなく、すべて並列されることに意義があるのだという著者らの見解に同意したい。 著者らが取り上げた理論は多数にのぼるが、選択の基準は、知られている事実と調和すること、および理論に一貫性があることだという。この基準で取り上げられている発達病理理論家は、Freud, Sから始まり、構造論的(自我心理学的)アプローチのErikson, Spitz, Jacobson, Loewald, これを発展させたFreud,A. ,Mahler, Sandler, 対象関係論のAndre’ Green, Klein, Bion, 独立学派のBalint, FairbairnとGuntrip, Winnicott, 他多数、北米対象関係論のKohut, Kernberg, 対人関係論のSullivan, Mitchell, 愛着理論のBowlby,スキーマ理論のHorowitz, Stern, Ryle, メンタライゼーションモデルのFonagyとTarget、その他である。  これら多くの理論を取り上げて論じる著者らのスタンスについて、私が重要と思うところを述べておきたい。その第一はすでに述べたように、多様な理論を併存させ、そのすべてを抱えることが有用だとする観点である。第二に、発達精神病理学が重要なのは、成人に至るまで、さらに至ってから後も、生涯を通しての不適応の経過を、発達過程という観点から説明できるところにある。個人の発達過程を生成する心的?生物学的?環境的(人的)なあらゆる要素の中に、その個人のひずみ、すなわち精神病理を生み出し発展させる要因がある。それらの要因を、個人の不適応の起源と軌跡という観点から見るところに発達論的観点の意義がある。しかしそれは、個人の治療に当たって乳幼児期以来の(過去の)病理形成要因を追求し詳細に見直すことではない(それは見直しても分からないことが多い)。むしろ、現在の患者に作用している諸要因がどのようであるかを理解し、それがどのように過去の諸要因とそれに対する適応様式に関連しているかを解明することが重要なのである。特に人的要因への適応様式を改変するには、現在の治療者とのかかわりが必須となる。  第三に、著者らはどの理論についても、実証的研究に基づくエビデンスがどのようであるかを取り上げている。しかしそれは、理論をエビデンスという角度から見直すためなのであって、エビデンスの有無によって理論の意義を評価するためではない。実際、精神分析的思考にとって重要な多くの理論は実証不可能なのであって(そうなる理由は本文に詳細に論じられている)、実証可能性と理論の重要性とは関係がない、というのが著者らの立場である。理論の実証可能性についての目配りを忘れないと同時に、それによって理論の価値を評価しないこと、この二つの視点を常に持つことは、これからの精神分析の理論家および実践家にとって必要な姿勢だと言えるであろう。

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