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恥と「自己愛トラウマ」

あいまいな加害者が生む病理

恥と「自己愛トラウマ」

現代社会に様々な問題を引き起こす恥の威力

著者 岡野憲一郎
ジャンル 精神医学・精神医療
心理療法・カウンセリング
出版年月日 2014/06/04
ISBN 9784753310739
判型・ページ数 4-6・208ページ
定価 本体2,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

目次●
 
まえがき
 序 章 恥と「自己愛トラウマ」
第1部 「自己愛トラウマ」と現代人の怒り
 第1章 怒りと「自己愛トラウマ」
 第2章 アスペルガー障害の怒りと「自己愛トラウマ」
 第3章 凶悪犯罪と「自己愛トラウマ」──秋葉原事件を読み解く
 第4章 「モンスター化現象」とトラウマ
第2部 いじめとうつと「自己愛トラウマ」
 第5章 いじめと「自己愛トラウマ」
 第6章 「現代型うつ病」と職場でのトラウマ
第3部 文化装置としての恥
 第7章 トラウマ回避のための「無限連鎖型」コミュニケーション
 第8章 学校教育とは「自己愛トラウマ」の伝達だろうか?
 第9章 災害トラウマを乗り越える──津波ごっこと癒し
第4部 トラウマとセクシュアリティ──見られることをめぐって
 第10章 「見るなの禁止」とセクシュアリティ
 第11章 恥と慎みをめぐるある対話
 あとがき
 索  引
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岡野憲一郎(おかの けんいちろう)
1982年 東京大学医学部卒業,医学博士
1982~85年 東京大学精神科病棟および外来部門にて研修
1986年 パリ,ネッケル病院にフランス政府給費留学生として研修
1987年 渡米,1989~93年 オクラホマ大学精神科レジデント,メニンガー・クリニック精神科レジデント
1994年 ショウニー郡精神衛生センター医長(トピーカ),カンザスシティー精神分析協会員
2004年 4月に帰国,国際医療福祉大学教授を経て
現 職 京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授
米国精神科専門認定医,国際精神分析協会,米国及び日本精神分析協会正会員,臨床心理士
著訳書 恥と自己愛の精神分析,新しい精神分析理論,中立性と現実─新しい精神分析理論2,解離性障害,脳科学と心の臨床,治療的柔構造,新・外傷性精神障害,続・解離性障害,関係精神分析入門(共著),解離の病理(共著),脳から見える心(以上岩崎学術出版社),自然流精神療法のすすめ(星和書店),気弱な精神科医のアメリカ奮闘記(紀伊國屋書店),心理療法/カウンセリング30の心得(みすず書房)他

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内容説明

【第6章より抜粋】私が診察室で出会う、会社に行けなくなった患者さんのかなりの部分が、上司とのやり取りでトラウマを背負っている。ひどく暴言を吐かれたり、夜中近くまで詰問されたり、仕事の「無茶ぶり」をされたり。それらはかなり深刻な自己愛トラウマの原因となっている。その結果として抑うつ気分や倦怠感が生じ、仕事に対する意欲を失い、欠勤がちになって医師のもとを訪れる。医師の多くは、「それはがんばりが足りないからだ」「あなたの弱さだ」とはねつけるが、一部は診断を下す。その場合はまずはうつを考える。もちろんそのような患者の多くは抑うつ症状を持っている。しかし同時に会社での仕事の環境に対する不安を抱いている。これは漠然とした不安というよりは、上司や同僚とのかかわりによって体験されたトラウマに基づくもので、職場に戻ることを考えたり、それを思い出させるような状況に遭遇した時に不安に襲われるのだ。  トラウマとは不思議なもので、その当座はさほどインパクトを持たなくても、その場を離れてしまうと逆に恐怖感が増すことがある。休職になった後は、それまで毎日通っていた職場に行くこと自体に強烈な不安がともなうことがある。離婚した後前夫(前妻)に対して、その後にさらに恐怖感が増大していき、その持ち物にさえ触れられなくなる、ということもよくある。  このような状況を考えると、実は「現代型うつ」における症状のかなりの部分を説明できる。なぜ休職中はうつが改善するのか。なぜ夕方五時以降は元気を取り戻すのか。それは彼らの示す症状が、うつというよりは不安、さらにはある特定の状況に対する恐怖症だからなのだ。  この状況はうつというよりは、登校拒否の児童に似ている。学校に行けなくなった子どもは、通常は同時にそれに対する強い後ろめたさを感じている。すると学校が引ける夕刻までは外出することに抵抗を覚える。行き交う人びとが、自分が学校を休んでいるという事情を知っていて、それを責めてくるような気がするのだ。しかし下校時間以降や週末などは違う。あたかも世界が変わったかのように解放された気分になるのだ。登校拒否については従来は「学校恐怖症(school phobia)」とも呼ばれていたが、この名前はもっともなのだ。  現代型うつではこの登校拒否と似たような状況が起きているのだが、それが「現代の若者が未熟になった」という議論に結びつけられるかどうかはわからない。しかしおそらく現代の若者の傷つきやすさが絡んでいることは否定できないだろう。新入社員が上司から少し小言を言われただけで落ち込んでしまう、逆切れしてしまうという状況はあるのかもしれない。  これを「わがまま」と取るか、「未熟さ」と取るか、あるいは脆弱さや打たれ弱さと見るかは立場により違うだろうが、ともかく「現代型うつ」が発症する一つの条件と言えるだろう。彼らは職場がこわくなっている。そして自宅療養を申し出て精神科医を受診しても、精神科医はこれを「甘え」や一種のうつ、としてみる以外の方針を持たない。だから「うつ状態により今後〇〇週間の自宅療養を必要とする」という診断書を出す。しかし本人は本格的なうつではないから、休職中はそれなりに動けるし、職場のことを忘れようと、旅行やカラオケや飲み会に参加することもできる。しかし復職の時期が近付くと不安が募り、医師に診断書の延長を求める。これはなまけというよりは、職場でのトラウマによる恐怖症の発症としてとらえるべきなのだと思う。

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