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力動的精神療法入門

理論と技法

力動的精神療法入門

米国力動精神医学の達人による懇切な手引書

著者 中久喜雅文
ジャンル 精神分析
出版年月日 2014/09/18
ISBN 9784753310784
判型・ページ数 A5・200ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

目次●
 
第1章 力動的精神療法とは何か
 1. はじめに──記述的精神医学と力動的精神医学
 2. アメリカにおける力動的精神医学の発展
 3. 力動的精神療法のこれから
第2章 精神分析理論の概要──古典から現代へ
 1. 古典的精神分析──フロイトの原点
 2. フロイト以後の精神分析
第3章 技法論
1. 見立て,診断的面接
2. 治療的面接
3. 治療的手段と治療的介入
4. 治療終結
第4章 精神療法と文化──日本的なものと西洋的なもの
1. 日本文化と精神療法
2. 超文化的精神療法
3. 日本人患者の再検討──対人恐怖症
4. 21世紀に向けての精神療法
付録 症例
1. 1980年代にアメリカで行った境界例の入院治療──力動的チーム医療
2. 週4回の精神分析の症例
 文  献
 あとがき
 索  引
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中久喜雅文(なかくき まさふみ)
1930年 茨城県生まれ
1953年 東京大学医学部卒業
1961~1962年 フルブライト研究員としてピッツバーグ大学にて精神薬理の研究
1962~1966年 コロラド大学にて精神科レジデントの訓練
1966~1969年 東京大学医学部講師,東大病院精神科病棟医長
1969~1973年 コロラド大学精神科助教授
1969~1979年 デンバー精神分析協会にて精神分析の訓練
1980~1995年 デンバー市にて精神科個人開業
1996年 帰朝 聖マリンナ医科大学精神科客員教授
    同時に東京にてバイリンガルの精神科個人開業
著訳書 精神科的診療の実際──一般医家のために(金原出版,1968)
    新しい育児と教育──在アメリカ精神科医の提言(弘文堂,1982)
    ヤーロム グループサイコセラピー(川室との共監訳,西村書店,2012)

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内容説明

【第1章より抜粋】力動的個人精神療法を学ぶためには,それが力動的精神医学という大きな枠組みのなかでどのように発展してきたかを理解する必要がある。力動的個人精神療法は力動的精神医学に基礎概念を提供し,この2つは相互交流しながら発展していった。力動的精神医学が最も発展した国は周知のようにアメリカであった。その基本的な考えがアメリカの文化によくマッチしたからであろう。  私はアメリカ(コロラド大学)で精神科レジデントとして力動的精神療法の訓練を受け(1962~1966),のちにデンバー精神分析研究所(Denver Institute of Psychoanalysis)で候補生として精神分析の訓練を受けた(1969~1979)。その期間,約30年にわたって精神医療を実践し(大学病院のERの救急精神医療,入院治療),また学生の教育やレジデントのスーパービジョンを行った。大学を離れてからは,地域のメンタルセンターの医長として地域精神医療に従事した。1980年から1995年までデンバー市で個人開業した。このように私は当時のアメリカの力動的精神医学のあらゆる面にどっぷりとつかり,アメリカの力動的精神科医としての同一性を確立した。この体験を読者と共有しながら力動的個人精神療法の理論と実際を論じてゆきたいと思う。  力動的精神医学の古典的な理論によると,患者の精神病理,行動異常は患者個人の精神内界の「力動的な無意識」の心のプロセスの結果起こるものであると理解し,その理解に基づいて治療が進められる。この「無意識の心」というのが,力動的精神医学における重要な鍵概念の一つである。それまでの精神医学では人間の心や行動は,人間の意識的,理論的な心によって規制されると考えられた。フロイトは患者の診療,患者や自分の夢の分析を通じて人間の心に無意識の動機が強く関与していることを確信するようになった。それは心が健康であろうと病的であろうと関係なくみられると指摘した。健康な人の会話にみられる言い間違い,物忘れなどは無意識の心の葛藤の現れであると考えた。たとえばパーティーで会った人の名前を忘れてしまった場合,その人が自分の嫌っている人の言行に似ていたため,その記憶を名前とともに抑圧してしまったということがある。  臨床における身近な例としては,たとえば,不潔恐怖の患者が強迫的に手を洗うという行動を示しているとき,それが「汚したい」「汚れたい」という無意識の願望に対する自我の防衛であると考えられることが多い。そして「汚したい」という願望は攻撃的欲求と関連ある場合が多い。その願望にきづいてしまうと,不安になるのでそれを気づかない(無意識)ように,強迫的手洗いを行っていると考えられる場合がある。このように無意識の欲望,感情,思考に対する自我の防衛,さらに人間の良心ともいうべき超自我の関与など,患者の意識的,無意識的な心の相互交流によって,症状が形成されるとする。  力動的なプロセスは精神内界に限らず,患者と他者との間の対人関係にもみられる。それは患者の無意識な葛藤(それは幼児期における重要な人たち,ことに親との葛藤に根ざすことが多い)の外在化とみることができる。それが治療関係の病理として現れたのが転移である。また逆に治療者の無意識の内的葛藤が患者に向けられるときもある。これが逆転移である。患者を治療するには,治療関係が軸になるので,転移‐逆転移の相互関係を力動的に理解することが大切である。

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