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子どもの虐待とネグレクト17巻1号

消えた子ども・子どもを見失う社会

子どもの虐待とネグレクト17巻1号

子ども虐待防止を目指す,医療・保健・福祉・教育・司法・行政などの実践家・研究者のための専門誌

著者 日本子ども虐待防止学会
ジャンル 定期刊行物
出版年月日 2015/04/28
判型・ページ数 B5・108ページ
在庫 在庫あり
 

目次

■巻頭言
社会的養護に関する研究および人材育成の推進を 相澤 仁

【特集 消えた子ども・子どもを見失う社会】
特集にあたって 西澤 哲・山田不二子
消えた子どもの実態とその背景 西澤 哲
「所在不明」児童の虐待死事件から見えてくるもの 増沢 高
メディアが捉えた“消えた”子どもたち 松井裕子
居所不明児童生徒の実態と学校教育 保坂 亨
消えた子ども問題の解決に向けた取り組み 山田不二子
見失われていた子どものその時 ナ ミ・藤林武史

■〈連載〉各地の取り組みから学ぶ
児童相談所設置市の課題と展望―これから設置を目指す自治体へ― 川並利治
■〈連載〉子ども虐待の「今」
非行と虐待 富田 拓
■〈連載〉文化の中の子ども虐待
関係性としての虐待 千田有紀

■事例研究
治療的養育により虐待を受けた子どもの感情調整方略が変化する過程―障害児入所施設における1事例― 大橋麗子
■総  説
虐待予防の親支援グループについて,1970年代の米国文献等を参照した考察 鷲山拓男

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内容説明

2014年5月,父親の育児放棄の末,亡くなった5歳児の遺体が神奈川県厚木市で死後7年たって発見された。この男児は,小学校入学後1日も登校することのないまま,1年後に学齢簿から機械的に削除されていたことが明らかになった。事件発生を受けて,厚生労働省は,学校に通っていなかったり乳幼児健診を受けていなかったりするなど,行政機関が本人や保護者と連絡が取れない18歳未満の子どもの数を報告するよう全国の区市町村に対し求めた。
2014年10月の時点での調査結果によると,18歳未満の子どものうち,区市町村などの自治体がその所在を確認できないいわゆる「所在不明児童」は,全国で141人であったという。同年5月の調査結果では約2,900人であったものが大幅に減少したことになる。5月時点で所在が不明であったもののうち約1,000人は,児童相談所のデータと所管内の自治体のデータを付き合わせることで所在が確認できたとのことである。また,以前は「海外に出た場合には追跡できない」とされていた子どもについて,東京入国管理局のデータと照合することによって約1,000人の子どもの所在が確認できたとされている。
すなわち,こうした子どもの数の大幅な変動は,行方が不明となった子どもに対する社会の「無関心」の現れであったと見ることができる。
厚木市事件が端緒となってクローズアップされた「所在不明児童」は,実は,子ども虐待領域の一部の関係者にとっては,大きな問題として以前から重要視されていた。そのきっかけになったのは,2005年のいわゆる「18歳女性長期監禁事件」である。18歳になって自力で家を出て保護された女性は,義務教育を一度も受けることがなく,学校にも社会にも出ることがない軟禁状態の中で虐待を受け続けていたのである。しかも,学校や教育委員会,児童相談所は不就学児童と知りながら,一度も安全確認を行っていなかった。
この事件をきっかけに,不就学児童や長期欠席児童の中でも姿が見えない子どもに対する学校・教育委員会,児童相談所の認識が進むとともに,いわゆる「1年以上居所不明児童生徒」(子どもがある学校から転出したものの,国内のどの学校にも転入した記録が見られず1年が経過したもの)という学校システムから消えた子どもの存在が認識されるようになった。そして,その後,この「1年以上居所不明児童生徒」の問題が,メディアの報道もあって,国会で問題とされる一方で,未就学の子どもで行政機関が所在を確認できない「所在不明児童」(乳幼児健診未受診のために市町村関係機関が訪問調査をしたところ居住実態が確認できなかったり,転居後の転出先が不明である子どもなど)の問題にまで拡大した。
その後,こうした「居所不明児童生徒」や「所在不明児」(以後,両者を合わせて「所在不明児童」と呼ぶ)が,虐待やネグレクトで死亡していたという事件が相次ぐようになった。こうして,社会システムから消えた子どもたちの問題は,子ども虐待の問題と密接に関係していることが明らかとなった。
学校や社会的システムから消えた子どもに対して,行政権限を振りかざして子どもの存在を消してしまうのではなく,社会として見失わないためにどうあるべきなのか,この問題意識のもとに本特集を企画するにいたった。

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