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ワーク・ディスカッション

心理療法の届かぬ過酷な現場で生き残る方法とその実践

目次

日本語版への序文
謝辞
編著者紹介
序文
はじめに
Ⅰ イントロダクション
 序 章 ワーク・ディスカッションとは何か
 第1章 ワーク・ディスカッション・グループが機能する時──その方法の応用
Ⅱ 教育現場での実践
 第2章 幼児学校の学習メンターとして
 第3章 小学生への治療的アプローチ
Ⅲ 医療現場での実践
 第4章 医療保健と入所施設の現場──病院における病気の子どもとの仕事
 第5章 小児癌治療におけるトラウマとコンテインメント
Ⅳ 福祉現場での実践
 第6章 脆弱な家族──難民コミュニティでの仕事
 第7章 服役中の親に面会する子どものためのプレイの設定
 第8章 入所型アセスメント施設における感情麻痺と無思考
Ⅴ 社会資源が乏しい環境での実践
 第9章 「シボニエは固まって動かないの……」──南アフリカの状況に応用したワーク・ディスカッション・モデル
 第10章 新しい施設を育てる
 第11章 児童養護施設の職員とのワーク・ディスカッション・セミナー
文献
あとがき
索引
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監訳者略歴
鈴木誠(すずき まこと)
1984年 東海大学文学部卒
1988年 名古屋大学医学部精神医学教室 卒後研修修了
現 職 くわな心理相談室 主宰,日本精神分析学会認定スーパーバイザー・認定心理療法士

鵜飼奈津子(うかい なつこ)
1992年 京都女子大学大学院家政学研究科児童学専攻修士過程修了
2004年 タビストック・クリニック児童・青年心理療法コース修了
現 職 大阪経済大学人間科学部教授

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内容説明

【序章より抜粋】激しいこころの痛みを抱えた人々が大勢いるのが明らかであっても,標準的な心理療法の援助が及ばない人々や世界があります。今日の臨床現場や援助の状況の多様化にともない,こうした領域で働く臨床家は急速に増え,彼らは「専門家として,何をなすべきか」を自問自答しながら,日々,悪戦苦闘しています。これは,施設において,臨床家の専門性の役割定義が十分にされていないことも一因です。心理療法やカウンセリングが有効に機能する設定について,施設管理者や同僚から十分な理解を得られず,こころのケアの「何でも屋」として使われている状況もあります。また施設自体に財政的・人的ゆとりがなく,こうした状況が慢性化していることもあります。あるいは施設自体が機能不全に陥っていたり,完全に破壊されたりしている中で,臨床家としての専門性を発揮することが期待される状況すらあります。
 被災地支援が,その最たるものでしょう。荒れた学校のスクールカウンセラーや学校緊急支援の対策会議における介入でも,期待されているのは心理療法ではありません。ガン拠点病院や緩和ケア病棟,小児科病棟や産婦人科病棟などで,医療チームの一員として働く臨床心理士やソーシャルワーカーやリエゾン看護師も,専門性による役割定義や分担が十分にされていません。また医療スタッフのストレス・マネジメントであるデス・カンファレンスにおいても,職業人のメンタルヘルス支援や復職支援においても,臨床家の専門性はまだ十分に確立されていません。児童養護施設や母子支援施設などの福祉の領域では,財政的にも人的資源にもゆとりがなく,また心理療法が有効に機能する設定が十分に理解を得られていないこともしばしばあります。
 この種の領域では,働くすべての対人援助職が心理的に過酷な状況に追い込まれていることも少なくありません。こうした臨床現場で,「専門家として生き残り続けること」は,並大抵のことではありません。このとき臨床家の仕事に,理論的根拠と専門的技法を与えてくれるのが,ワーク・ディスカッションの理論とその実践の蓄積なのです。
 この方法論の中核には,精神分析の着想が深く根ざしていますが,わが国ではまだ馴染みは薄く,精神分析を学んでいる臨床家にさえ,この方法論のもつ汎用性や潜在能力などは,あまり知られていません。
 大きく分類すれば,この方法論は「継続的な能力開発プログラムContinuing Professional Development(CPD)」に位置づけられるでしょう。現代精神分析を応用した対人援助職や管理職候補の定例的グループワークで,観察やグループ・ディスカッションを通して,観察力や感受性,「経験から学ぶ」能力や対人スキルを向上させることが目的です。1960年代からタビストック・クリニックの体系的な上級コースの訓練プログラムとして登場し,現在では幅広い対人援助職の大学院のカリキュラムにも組み込まれています。
 しかし,これはただの研修グループには留まりません。他にも多くの潜在的な機能があるのです。それはグループに参加する個人の職業意識(やりがい)の向上や啓発,ストレス・マネジメント,参加する個人が所属する組織の集団心性の理解,組織の改革や発達,そしてその組織機能を促進する効果もあるのです。そのため,過酷なストレスに曝される「医療や福祉や教育現場へのCPD」,ストレス・マネジメント,自己啓発や組織コンサルテーションにも活用されています。

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