ホーム > 耳の傾け方

耳の傾け方

こころの臨床家を目指す人たちへ

目次

はじめに──支持的な聴き方から精神分析的リスニングへ
イントロダクション
 序 章
 第1章 こころの臨床の基本──共感と受容
 第2章  こころに出会うこと──聴くことの目的
第Ⅰ部  支持的な聴き方──こころに出会うための能動的な聴き方
 第3章 能動的な聴き方
 第4章  聴き方 ステップ① 基本的な聴き方──批判を入れず,ひたすら耳を傾ける
 第5章  聴き方 ステップ② 離れて聴く──客観的な聴き方の併用
 第6章  聴き方 ステップ③ 私たち自身の思いと重ねて聴く
 第7章  聴き方 ステップ④ 同じ感覚にあるずれを細部に感じ取る
第Ⅱ部 精神分析的リスニング──こころを感知する聴き方
 第8章 聴き方 ステップ⑤ 無注意の聴き方
 第9章  聴き方 ステップ⑥ 平等に漂う注意をもって聴く
 終 章 「負の能力」を育てる

 附表  聴き方──支持的聴き方から精神分析的リスニングまで
 文 献
 あとがき──もしくは,こころの臨床での専門家を目指す人たちへ
 人名索引
 事項索引
----------------------------------------
松木邦裕(まつき くにひろ)
1950年 佐賀市に生まれる
1975年 熊本大学医学部卒業
1999年 精神分析個人開業
現 在 京都大学大学院教育学研究科教授,日本精神分析協会正会員,日本精神分析学会運営委員
著 書 「対象関係論を学ぶ」(岩崎学術出版社),「分析空間での出会い」(人文書院),「分析臨床での発見」(岩崎学術出版社),「私説対象関係論的心理療法入門」(金剛出版),「精神分析体験:ビオンの宇宙」(岩崎学術出版社),「分析実践での進展」(創元社),「不在論」(創元社),「摂食障害との出会いと挑戦」(共著,岩崎学術出版社)その他
訳 書 ケースメント「患者から学ぶ」,「あやまちから学ぶ」,「人生から学ぶ」(訳・監訳,岩崎学術出版社),ビオン「ビオンの臨床セミナー」(共訳,金剛出版),「再考:精神病の精神分析論」(監訳,金剛出版)その他

このページのトップへ

内容説明

【「はじめに」より】
専門家としての聴き方を学び身に着けようとする人たちに向けて,本書は企てられました。
 聴くこと,それはまったく日常的な行為です。聞くともなく,人の話は耳に入ってきます。また,私たちが誰かにかかわろうとするとき,まずその人に声をかけたり,その人の話を聴くことから始めるでしょう。そのときの聴き方は,私たちが置かれている状況や目的によって大きく異なります。学校でいつもの授業を聴くとき,職場での重要な交渉事で相手の話を聴くとき,自宅での憩いのときに家族の話に耳を傾けるとき,電車の中や雑踏の中でそれとはなしに誰かの話が耳に入ってくるとき,こうした状況の違いで私たちの聴き方は変わりますが,そのとき私たちがどのような目的をどの程度の強さで持っているかによっても,聴き方は異なります。
 本書で私は,その状況と目的をはっきり限定しました。それは,臨床状況や支援場面においてその対象者のこころにかかわるための聴き方です。「こころの臨床家」という表現を本書ではたびたび使っていますが,こころを支援する職業での専門的な聴き方を著そうと努めました。それは同時に基礎技術でもあります。というのは,その援助が実効力を持つには,対象者のこころの苦痛・苦悩を適切に聴き取り,それに基づいてより深くより的確に理解することがその前提だからです。
 ちなみに「こころの臨床家」とは,困難を抱える,あるいはこころを病む患者にかかわる精神科医・心療内科医,小児科医,ひとりの人として患者に接する看護師,パーソナルな問題や課題を抱えたこころにかかわる心理職,その人の生活環境を調整し支えるソーシャルワーカー,アクティビィティを通して支援する作業療法士,さまざまな支援福祉施設で働く援助職,ケアワーカー,教師,家裁調査官等の職業でのこころへのかかわりに意欲的な人たちを指しています。
 本書の展開を述べます。最初に,聴くことでの基本的な心構えである共感と受容を述べます。それから,聴くことの基本的な手技である支持的な聴き方を,ステップという表示のもとに順序立てて描き出しています。そこには深まりがあり,専門的な深い支持的な聴き方が最後に示されます。その支持的な聴き方を基盤に置きながら,新たな聴き方,すなわち精神分析的リスニングへと歩みを進めます。記述は,その聴き方の本態,実際,身に着け方,留意点等に及んでいます。本書の発想は臨床実践からのものなのですが,記述は教科書的であるかもしれません。しかし臨床描写を適宜挿入することで,より実践的な提示になることを目論みました。

このページのトップへ