ホーム > 新・外傷性精神障害

新・外傷性精神障害 (電子書籍)

─トラウマ理論を越えて

新・外傷性精神障害

多様化する外傷概念を捉える新たなパラダイムの提起

著者 岡野憲一郎
ジャンル 精神医学・精神医療
精神分析
電子書籍
出版年月日 2009/08/27
ISBN 9784753309085
判型・ページ数 A5・320ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり
フォーマット 価格
電子書籍 2,800円+税
単行本 3,600円+税
 

目次

[主要目次]
第1部 外傷理論入門
 1 「外傷理論」とは何か
 2 外傷とは何か
 3 治療に向けての心構え
 4 精神分析における外傷理論(1)
 5 精神分析における外傷理論(2)
第2部 外傷性精神障害を知る
 1 外傷性精神障害にはどのようなものがあるか
 2 外傷の分類
 3 心的外傷後ストレス障害(1)
 4 心的外傷後ストレス障害(2)
 5 解離性障害(1)
 6 解離性障害(2)
 7 解離性障害(3)
 8 外傷性障害としての境界性パーソナリティ障害
第3部 外傷理論を越えて
 1 「外傷性精神障害」の再考
 2 外傷概念の拡大と拡散
 3 PTSDと解離の架け橋としてのASD
 4 外傷性精神障害は「神経症」の一種なのか?
 5 外傷性精神障害は「パーソナリティ障害」なのか?
 6 日常の出来事の外傷性
 7 レジリエンス
第4部 外傷性精神障害の治療
 1 精神療法の基本的な考え方
 2 基本的な介入の手続き
 3 全体的な治療プロセス
 4 ある治療例の実際(1)
 5 ある治療例の実際(2)
--------------------------------------
【電子書籍版もございます】

このページのトップへ

内容説明

第3部第7章より抜粋■ 私は本書を通して,外傷に関する考え方が時代とともに推移して行く様子を描くことを試みた。「旧版」に加えて新たに設けられた第3部は,1980年のDSM?Ⅲ以来変化し続けた外傷理論の,これまでの軌跡や今後の行方を示すような論考を集めたものである。ここまでは,過去20年余りの間に生じた外傷の概念の変化について述べた。それは外傷は人が不運にも遭遇し,必然的に外傷性精神障害を発症するようなものであるという理解から,実は多くの人に日常的に起きている可能性があるものという認識への推移であった。外傷とは,それに出会った人の脆弱性やその他の偶発的な要素により外傷性精神障害を招くに至ったものとして捉えなおすことができるのである。 このような理解の推移は,外傷概念の拡大や拡散であり,それが同時に曖昧なものになったとも言うことができる。外傷は人生のなかでさほど特異な出来事ではなくなり,PTSD等の外傷性精神障害には,そこに患者の側の脆弱性が関与した,いわば内因性の疾患としての性質を読み取ることも可能となったのである。 このように捉えなおされた外傷性精神障害はまた,いわゆる「ストレス‐脆弱性モデル」への回帰というニュアンスを含むと言っていいであろう。ここでのストレスはそれ自体はニュートラルな存在であり,個人がそれに過剰に反応することにより結果的に外傷にもなりうるのである。このモデルは,環境からのストレスと個人の脆弱性とが重なったところで疾患が生じるという理解に基づき,外傷性精神障害が注目を浴びるはるか前から,精神医学で内因性の障害を説明する上で主流の考え方だったわけだ。 さてここにレジリエンスの概念が登場する。ある程度深刻なストレスは,それに対する脆弱性を有する人にとっては外傷となる。それではその深刻なストレスをいわば解毒し,場合によっては糧にして成長する能力を有する人,つまりレジリエンスを備えた人にとっては,そのストレスはどのような意味を持つのであろうか? ところで私はこのレジリエンスの概念は,ある意味では外傷理論のかなたにあるものを指し示していると考えている。「誰がストレスに際して外傷性の反応を示し,誰がそうでないか」という問題を,より立体的に捉えなおすことをレジリエンスは可能にするのである。これまでの外傷理論は,人がいかに外傷性のストレスにより精神障害をきたすのかを明らかにすることに貢献してきた。しかしレジリエンスの概念が提起するのは,一般的に人はストレスに際して外傷性の反応をいかに起こさずにすむかという問題である。そこには,人間は通常は自然な治癒過程をたどることにより,PTSDそのほかの外傷性障害を起こさずにすんでいるという事実がより強調されることになる。深刻な外傷性のストレスにさらされた場合にPTSDを発症する人々の割合は,14%程度と報告される。すなわち発症しない人の割合のほうが圧倒的に高いことになり,それを可能にするレジリエンスのおかげで私たちは健康を維持することができているのである。 (岡野憲一郎)

このページのトップへ