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図説 臨床心理学特別講義

認知行動療法、EMDRでストレスとトラウマに対処する

図説 臨床心理学特別講義

臨床家が自分のやり方に自信をもってクライエントに臨むことができるようになるために。

著者 市井雅哉
ジャンル 行動療法・認知療法
出版年月日 2015/09/05
ISBN 9784753310982
判型・ページ数 B5・144ページ
定価 本体2,700円+税
在庫 在庫あり
 

目次

第1講 リラクセーション,ノンバーバル・コミュニケーション
第2講 臨床心理学研究法
第3講 ストレスとストレスマネジメント
第4講 認知行動療法──ベック,エリス
第5講 学校問題への対応
第6講 解決志向アプローチ
第7講 トラウマについて(1)──トラウマ,愛着
第8講 トラウマについて(2)──いじめ,PTSD
第9講 EMDRの原理
第10講 EMDRの歴史と評価,メカニズム
第11講 RDI──肯定的なネットワークの活用

文 献
あとがき
索 引
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市井雅哉(いちい まさや)
1961年 滋賀県生まれ
1992~93年 テンプル大学大学院留学(ロータリー財団奨学生)
1994年 早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学
1994年 早稲田大学人間科学部助手
1996年 琉球大学教育学部助手
2000年 琉球大学教育学部助教授
2004年 現職
専 攻 臨床心理学
現 職 兵庫教育大学発達心理臨床研究センター・トラウマ回復支援研究分野教授

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内容説明

【第9講より抜粋】一般的な記憶の話ですが,われわれ人間は嫌な出来事を経験すると,イライラ,うつうつ,不安になったりします。これは,脳の左右差(ラテラリティ)で言えば,右脳が賦活した状態と言えるかもしれません。たとえば,仕事で上司に怒られたでも,恋人に振られたでも,自動車事故を起こしたでもいいのです。
 われわれの脳は,こうした経験をしたときに,それをただそのまま記憶にしっかりと留めておこうというふうには働きません。経験した直後からすぐにその体験に対して働きかけを始めます。収まりのいいところに収めるために,たとえば,原因を考えます,対処を考えます,教訓を得ようとします。これは,先ほどの脳のことで言えば,左脳が賦活した状態と言えるでしょう。そのためには,自分で繰り返し,状況や経緯を考え,夢に見,日記に書く人もいるし,人に聞いてもらったりもしますね。こうして何度もアクセスをかけて,どうにか出来事を収まりのいい形へと動かそうとします。なぜ,失敗したのか?自分が悪いのか?相手が悪いのか?不可抗力か?運が悪かったのか?避ける方法はあったのか?同じ過ちを犯さない方法があるのか?何か得るものはあったのか?
 それが,成功すれば,適応的な解決(収まった状態)へ至ります。これは,思い出しても平静でいられる,忘れることも可能という状態で,自分の人生において何らかの意味が見いだせるようになったりもします。「長い人生こんなこともあるわ」「これもいい勉強だ」「ああいう人にはもっと礼儀を尽くさないとダメなんだ」「自分の考え方がまだまだ甘いということだ」「夜の運転はもっと慎重にならないとダメだ」「自分にはまだ女ゴゴロはわからない」などさまざまな教訓を得て,その出来事を終わったことにできるかもしれません。
 このように導いていく過程を適応的情報処理過程と呼び,われわれの脳が本来備えている処理能力と考えます。これが適切に働いている限り,病気になりませんし,治療もEMDRも必要ありません。
 しかし,この過程がどこかで滞り,いつまでもモヤモヤと残り続けている状態を適応不全状態,病理と捉えます。もっと激しく頻回に鮮明なフラッシュバックを起こしている状態もあり得ます。脳の過剰な興奮により,通常の処理が起こらないのかもしれません。
 EMDRという治療においては,二重注意という言葉を使っていますが,過去と今,過去の記憶と現在の感覚,内的なイメージと視覚刺激の両方に注意を向けます。過去を意識しつつも,眼球運動をして,1回の眼球運動は25〜30往復程度(これを1セットと数えます),スピードはどうにか追えるスピードですから,かなり速いです。20秒程度眼球運動をして,深呼吸します。何が浮かんでいるか問うてから,その答えを意識しつつ次の眼球運動に入ります。これを繰り返していきます。
 変化の仕方は人それぞれなので,ただ,映像が見えにくくなったり,遠ざかったりする人もいますし,自身の身体感覚が楽になっていくだけの人もいます。
 眼球運動を加えると,こうした肯定的な方向への変化が自然に起こるわけです。

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