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あなたにもできる外国人へのこころの支援

多文化共生時代のガイドブック

目次

はじめに
 パート Ⅰ 知ってほしい:外国人へのこころの支援のイロハ
 パート Ⅱ 立場で違うこころの問題①
1 本人の場合
2 配偶者の場合
3 児童の場合
 パート Ⅲ 立場で違うこころの問題②
1 留学生では
2 難民・難民認定申請者では
3 外国人労働者では
4 国際結婚では
5 中国語精神科専門外来では
 パート Ⅳ こころの支援者や団体を活用するコツ
1 国際交流協会と連携する
2 スクールカウンセラーを利用する
3 医療通訳を使う
4 保健師に相談する
5 精神保健福祉士に相談する
6 心理士に相談する
7 精神科医に相談する
 パート V 医療現場で実際に起こること
 パート Ⅵ 文化的背景を知らないと困ること

 付録 役に立つ相談先
 おわりに

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内容説明

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって,外国人に対する人々の眼差しは日本にやってくる外国人に向けられています。一方,日本にすでに在住している200万人を超える外国人が,いろいろな地域で生活に困り,支援を求めていることはほとんど忘れられているといっても過言ではありません。それは医療の領域でも同様であり,インバウンドや医療ツーリズムで来日する外国人に対してどう対応するが強調されていて,日本在住の外国の人たちへの対応はほとんど顧みられていません。
 やっと重い腰を上げた厚生労働省が「多文化共生センターきょうと」に委託して,2014年から始まった医療通訳の養成事業も,観光でやってくる外国人への医療サービスが中心に位置づけられています。なぜなら,養成された医療通訳者が,日本全国の国公立や私立の大病院で,医療通訳として専任で雇われれば,通訳者の給料の半額が国によって助成されるというシステムであり,日本のどの地域にどういう外国人が住んでいて,どういうニーズがあるのかは全く考慮されていないからです。
 しかし,外国人診療で重要なのは,まず日本に在住する外国人に対する医療サービスではないでしょうか。多文化間精神医学会としては,日本に住む移民,難民,国際結婚者,外国人労働者,留学生などに対していかなるこころの支援ができるのかが,焦眉の急と考えています。ところが,外国人のこころの支援に関する実践的な書物はほぼ皆無というのが実状です。そこで,外国人のこころの支援に力を入れ始めている方々に利用していただき,より幅広く支援の輪が広がるように,学会監修として『あなたにもできる外国人こころの支援』を上梓することにしました。
 そうは言うものの,外国人診療は,かなりハードルが高いといえます。今日,英語で診療ができる若い医師はかなり増加しており,精神科医も同じだと思います。しかし,医師だけが英語で診療ができるからといって,医療現場はそれで済むというものではありません。今はチーム医療で成り立っており,看護師,臨床心理士,ソーシャルワーカー,医療事務といった人たちも語学ができなければ,現場での外国人診療は混迷を極めるのみです。
 それが無理であれば,医療通訳者やスカイプなどを使った遠隔地医療通訳を利用することになります。厚生労働省や一部のNPO法人が医療通訳の養成を始めたとはいえ,国家資格となるにはほど遠く,ある一定の通訳レベルを担保することさえ不可能な状態といえます。たとえ医療通訳がかなりのレベルを担保されたとしても,通訳費用をどこが支払うのかも大きな問題として残されています。
 そう考えると,現実的にはハードルが下がり,比較的気軽に外国人のこころの支援に取り組んでくれる医療機関や支援団体が増えることが,最も喜ばしいと考えています。この書物は,時には四苦八苦しながら外国人のこころの支援に取り組んできた,実践的経験を豊富にもつわれわれが,支援のためのマニュアル的なものとして執筆しているため,内容的には臨場感あふれた読み物になっていると思います。
 この書物の全体は,六部から構成されています。まず外国人診療の基礎,二番目に利用者別のこころの問題点,三番目にそれぞれの領域の支援者が外国人を支援するときのコツ,四番目にさまざまな支援者や団体を利用するコツ,五番目に医療現場で起こり得る困りごと,そして最後に利用者の持つ文化社会的背景の知っておくべきことからなっており,それらが分かりやすく,かつ,具体的な事例を取り上げながら書かれています。これらをお読みいただき,ぜひこころの外国人診療および外国人支援の実践に役立てていただけるよう期待してやみません。


多文化間精神医学会理事長 阿部 裕

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