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あなたにもできる外国人へのこころの支援

多文化共生時代のガイドブック

目次

はじめに

パートⅠ 知ってほしい:外国人へのこころの支援のイロハ
チャート1 こころの支援とはなにか?
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 何が支援になるのか

パートⅡ 立場で違うこころの問題①
1 本人の場合
チャート1 外国人の立場やあり方とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例
チャート5 長期適応の問題に気がつくコツ,気がついたときにどうすればよいか

2 配偶者の場合
チャート1 配偶者へのこころの支援とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチし,なにが支援になるのか
チャート4 よくみられる支援例

3 児童の場合
チャート1 外国人の児童生徒
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例

パートⅢ 立場で違うこころの問題②
1 留学生では
チャート1 留学生とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例
チャート5 大学コミュニティにおけるメンタルヘルス支援
チャート6 留学生の問題に気がつくコツ,気がついたときにどうすればよいか

2 難民・難民認定申請者では
チャート1 難民・難民認定申請者とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例
チャート5 難民支援の課題について
チャート6 コミュニティにおけるメンタルヘルス支援

3 外国人労働者では
チャート1 外国人労働者とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例

4 国際結婚では
チャート1 国際結婚とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 相談事例
チャート5 家族支援を勧めるコツ

5 中国語精神科専門外来では
チャート1 はじめに
チャート2 患者の受診までのルート
チャート3 受診する患者の特徴
チャート4 受診患者の背景など
チャート5 初診患者の診断
チャート6 事例
チャート7 専門外来の問題点

パートⅣ こころの支援者や団体を活用するコツ
1 国際交流協会と連携する
チャート1 国際交流協会とは
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例
チャート5 課題:「相談通訳」としての力量形成と連携の仕組みづくり

2 スクールカウンセラーを利用する
チャート1 スクールカウンセラーの制度と仕事
チャート2 子どもの問題に気がつくコツ,気がついた時の対応のコツ
チャート3 スクールカウンセラーが外国人の子どもと接する時のコツ
チャート4 外国人の子どもがスクールカウンセラーを利用する時のコツ
チャート5 不安を呈する中学生女子の支援例

3 医療通訳を使う
チャート1 医療通訳とは
チャート2 外国人患者とのコミュニケーションについて
チャート3 医療通訳の役割
チャート4 医療の中の医療通訳者
チャート5 精神科チーム医療において医療通訳者を上手に使うコツ

4 保健師に相談する
チャート1 保健師について
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 よくみられる支援例

5 精神保健福祉士に相談する
チャート1 精神保健福祉士とは
チャート2 精神保健福祉士に相談する
チャート3 精神保健福祉士の活動の場と活動の内容
チャート4 まとめ

6 心理士に相談する
チャート1 初回面接の導入
チャート2 初回面接(インテイク)の技法
チャート3 よくみられる支援例
チャート4 見立ての指標
チャート5 外国人へのこころの支援における心理士の役割(医療機関の心理士)

7 精神科医に相談する
チャート1 精神科の治療と外国人の立場
チャート2 知ってほしいこと
チャート3 ではどうアプローチするのか
チャート4 外国人への精神科医療事例
チャート5 外国人への精神医療のコツ

パートV 医療現場で実際に起こること
はじめに
チャート1 予約の電話
チャート2 初診時の受付
チャート3 精神科診察(通訳なしの場合)
チャート4 精神科診察(通訳付きの場合)
チャート5 初診終了時の受付
チャート6 通院継続患者の対応
チャート7 入院を必要とする患者
チャート8 母国に帰させるとき
チャート9 弁護士,入管局,警察からの意見書の依頼
おわりに

パートⅥ 文化的背景を知らないと困ること
はじめに
症例に沿って文化的背景からくるホスト国との葛藤を考えてみよう
おわりに

付録 役に立つ相談先
おわりに

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内容説明

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって,外国人に対する人々の眼差しは日本にやってくる外国人に向けられています。一方,日本にすでに在住している200万人を超える外国人が,いろいろな地域で生活に困り,支援を求めていることはほとんど忘れられているといっても過言ではありません。それは医療の領域でも同様であり,インバウンドや医療ツーリズムで来日する外国人に対してどう対応するが強調されていて,日本在住の外国の人たちへの対応はほとんど顧みられていません。やっと重い腰を上げた厚生労働省が「多文化共生センターきょうと」に委託して,2014年から始まった医療通訳の養成事業も,観光でやってくる外国人への医療サービスが中心に位置づけられています。なぜなら,養成された医療通訳者が,日本全国の国公立や私立の大病院で,医療通訳として専任で雇われれば,通訳者の給料の半額が国によって助成されるというシステムであり,日本のどの地域にどういう外国人が住んでいて,どういうニーズがあるのかは全く考慮されていないからです。しかし,外国人診療で重要なのは,まず日本に在住する外国人に対する医療サービスではないでしょうか。多文化間精神医学会としては,日本に住む移民,難民,国際結婚者,外国人労働者,留学生などに対していかなるこころの支援ができるのかが,焦眉の急と考えています。ところが,外国人のこころの支援に関する実践的な書物はほぼ皆無というのが実状です。そこで,外国人のこころの支援に力を入れ始めている方々に利用していただき,より幅広く支援の輪が広がるように,学会監修として『あなたにもできる外国人こころの支援』を上梓することにしました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって,外国人に対する人々の眼差しは日本にやってくる外国人に向けられています。一方,日本にすでに在住している200万人を超える外国人が,いろいろな地域で生活に困り,支援を求めていることはほとんど忘れられているといっても過言ではありません。それは医療の領域でも同様であり,インバウンドや医療ツーリズムで来日する外国人に対してどう対応するが強調されていて,日本在住の外国の人たちへの対応はほとんど顧みられていません。やっと重い腰を上げた厚生労働省が「多文化共生センターきょうと」に委託して,2014年から始まった医療通訳の養成事業も,観光でやってくる外国人への医療サービスが中心に位置づけられています。なぜなら,養成された医療通訳者が,日本全国の国公立や私立の大病院で,医療通訳として専任で雇われれば,通訳者の給料の半額が国によって助成されるというシステムであり,日本のどの地域にどういう外国人が住んでいて,どういうニーズがあるのかは全く考慮されていないからです。しかし,外国人診療で重要なのは,まず日本に在住する外国人に対する医療サービスではないでしょうか。多文化間精神医学会としては,日本に住む移民,難民,国際結婚者,外国人労働者,留学生などに対していかなるこころの支援ができるのかが,焦眉の急と考えています。ところが,外国人のこころの支援に関する実践的な書物はほぼ皆無というのが実状です。そこで,外国人のこころの支援に力を入れ始めている方々に利用していただき,より幅広く支援の輪が広がるように,学会監修として『あなたにもできる外国人こころの支援』を上梓することにしました。 そうは言うものの,外国人診療は,かなりハードルが高いといえます。今日,英語で診療ができる若い医師はかなり増加しており,精神科医も同じだと思います。しかし,医師だけが英語で診療ができるからといって,医療現場はそれで済むというものではありません。今はチーム医療で成り立っており,看護師,臨床心理士,ソーシャルワーカー,医療事務といった人たちも語学ができなければ,現場での外国人診療は混迷を極めるのみです。それが無理であれば,医療通訳者やスカイプなどを使った遠隔地医療通訳を利用することになります。厚生労働省や一部のNPO法人が医療通訳の養成を始めたとはいえ,国家資格となるにはほど遠く,ある一定の通訳レベルを担保することさえ不可能な状態といえます。たとえ医療通訳がかなりのレベルを担保されたとしても,通訳費用をどこが支払うのかも大きな問題として残されています。そう考えると,現実的にはハードルが下がり,比較的気軽に外国人のこころの支援に取り組んでくれる医療機関や支援団体が増えることが,最も喜ばしいと考えています。この書物は,時には四苦八苦しながら外国人のこころの支援に取り組んできた,実践的経験を豊富にもつわれわれが,支援のためのマニュアル的なものとして執筆しているため,内容的には臨場感あふれた読み物になっていると思います。この書物の全体は,六部から構成されています。まず外国人診療の基礎,二番目に利用者別のこころの問題点,三番目にそれぞれの領域の支援者が外国人を支援するときのコツ,四番目にさまざまな支援者や団体を利用するコツ,五番目に医療現場で起こり得る困りごと,そして最後に利用者の持つ文化社会的背景の知っておくべきことからなっており,それらが分かりやすく,かつ,具体的な事例を取り上げながら書かれています。これらをお読みいただき,ぜひこころの外国人診療および外国人支援の実践に役立てていただけるよう期待してやみません。(「はじめに」より)
多文化間精神医学会理事長 阿部 裕

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著者情報

野田 文隆 編著

1948年生まれ 1972年 東京大学文学部卒業 1984年 千葉大学医学部卒業 1984年 国立国府台病院精神科 1985年 British Columbia大学精神科臨床研究員 1989年 精神医学研究所付属東京武蔵野病院精神科社会療法部長 1999年 大正大学人間学部人間環境学科教授(~2014) 2002年 British Columbia大学医学部精神科Adjunct Professor 2014年~ めじろそらクリニック院長 専 攻 精神医学(特に在外邦人のメンタルヘルスに関する臨床研究)

秋山 剛 編著

1979年 東京大学医学部卒業 1979年 東京大学医学部附属病院分院神経科,医局長(1991年) 1991年~ NTT東日本関東病院精神神経科部長,自治体国際化協会カウンセリングシステム委員 1999年~ 東京英語いのちの電話理事長(現在は名誉理事長) 2004年 日本精神神経科学会国際関連事務局長 2006年 日本精神神経学会理事 専 攻 精神医学(特にうつ病や双極性障害の治療およびリワーク支援,多文化間精神医学)

多文化間精神医学会 監修

田中 ネリ

1954年ボリビア共和国,ラパス市生まれ。1983年上智大学文学研究科教育学専攻博士課程前期修了。現在 千葉メンタルクリニック,府中刑務所,四谷ゆいクリニック 臨床心理士。 専攻 在日ラテンアメリカ人のメンタルヘルス,外国にルーツのある子どもと親のコミュニティにおける支援と連携,日本人と外国人受刑者の社会復帰と更生のためのカウンセリング。

松丸 未来

1998年,英国レディング大学心理学部卒業,2001年上智大学大学院文学研究科心理学専攻修了。民間のカウンセリング機関,産業分野で相談活動を行う。現在はスクールカウンセラー,精神科クリニック臨床心理士。 著書に『子どもと若者のための認知行動療法実践セミナー―上手に考え,気分はスッキリ』(共著,金剛出版,2010)

加賀美 常美代

1977年慶應義塾大学文学部心理教育社会学科卒業。2005年東北大学大学院文学研究科後期博士課程修了(文学博士)2013年から現在 異文化間教育学会理事長。現在 お茶の水女子大学基幹研究院教授。専攻 異文化間心理学,異文化間教育学,コミュニティ心理学 著書 『多文化社会の葛藤解決と教育価値観』(単著,ナカニシヤ出版,2007),『多文化共生論』(編著,明石書店,2013),『アジア諸国の子ども・若者は日本をどのようにみているか』(編著,明石書店,2013)ほか。

鵜川 晃

1971年生まれ。2014年大正大学人間学研究科,人間学博士号取得。現在 大正大学人間学部人間環境学科准教授。専攻 多文化間精神保健学。 著書『多文化ソーシャルワーク入門』(共著,中央法規出版,2012)

阿部 裕

1950年生まれ。1976年順天堂大学医学部卒業。現在 明治学院大学心理学部教授,四谷ゆいクリニック院長。専攻 精神医学(特に在日ラテンアメリカ人の精神障害に関する臨床研究) 著書『外国人相談の基礎知識』(共編著,松柏社,2015),『実践医療通訳』(共編著,松柏社,2015)

石井 千賀子

1969年青山学院大学文学部卒業。1993年Butler大学大学院 修士課程 夫婦家族療法専攻卒業。現在 TELLカウンセリング 夫婦家族療法家,ルーテル学院大学非常勤講師 専攻 夫婦家族療法(多文化家族への臨床と研究) 著訳書 『あいまいな喪失とトラウマからの回復』(共監訳,Boss,P.著,誠信書房,2015)

辻井 弘美

2006年California School of Professional Psychology夫婦家族療法学科修士修了。現在 国立成育医療研究センターこころの診療部 心理療法士。臨床心理士,夫婦家族療法家,米国認定カウンセラー(NCC) 訳書『多文化間カウンセリングの物語(ナラティヴ)』(Stephen Murphy-Shigematsu著,東京大学出版会,2004)

檀 瑠影

中国出身。中国の医科大学を卒業後,内科医として勤務。1999年滋賀医科大学博士課程(博士号取得)2013年昭和大学烏山病院兼任講師,中国語専門外来も担当。2015年檀クリニックを開設,院長として勤務。中国語専門外来も継続。

稲本 淳子

1987年昭和大学医学部卒業。現在 昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター診療責任者准教授。医学博士,精神保健指定医,日本精神神経学会専門医,指導医。専攻 統合失調症・社会精神医学(社会心理教育) 著書『ナースの精神医学』(分担執筆,中外医学社),『精神科診療の副作用・問題点・注意点』(分担執筆,診療新社,1998)ほか。

常岡 俊昭

1979年生まれ。2004年昭和大学医学部卒業。現在 昭和大学附属烏山病院精神科。専攻 精神医学(特に疾病教育プログラムの開発,内因性疾患とアディクションを合併する併存障害)

加藤 進昌

1947年生まれ。1972年東京大学医学部卒業。1996年滋賀医科大学精神医学教室教授。1998年東京大学大学院医学系研究科精神医学分野教授。現在 東京大学名誉教授,公益財団法人神経研究所理事長,昭和大学発達障害医療研究所所長。専攻 精神医学,神経内分泌学,発達障害。著書 『テキスト精神医学改訂4版』(編著,南山堂,2012),『大人のアスペルガー症候群』(講談社,2012)他

杉澤 経子

1989年武蔵野市国際交流協会プログラムコーディネーター(多文化共生事業統括)。2006年東京外国語大学多言語・多文化教育研究センタープロジェクトコーディネーター/同大学研究員(多文化社会専門人材に関する研究)。現在 同センターアドバイザー,自治体国際化協会「地域国際化推進アドバイザー」,NPO法人国際活動市民中心(CINGA)理事。著書 『多文化社会コーディネーターの専門知識の知と専門性評価』(編著,科研費研究成果報告書,2016),『これだけは知っておきたい!外国人相談の基礎知識』,(監修,松柏社,2015)

村松 紀子

1963年生まれ。1996年神戸大学大学院国際協力研究科修士課程修了(政治学修士)。現在 医療通訳研究会(MEDINT)代表,医療通訳士協議会(JAMI)理事,愛知県立大学外国語学部非常勤講師,(一財)自治体国際化協会地域国際化アドバイザー 専攻 医療通訳,コミュニティ通訳,多文化ソーシャルワーク(社会福祉士) 著書 『実践医療通訳』(共編著,松柏社,2015),『医療通訳と保健医療福祉』(共著,杏林書院,2015)ほか

川口 貞親

1967年生まれ。1997年久留米大学大学院医学研究科(博士課程)修了。元産業医科大学産業保健学部教授。専攻 精神看護学。著書 『看護学生とナースのためのベーシックナーシング』(共著,メディカルレビュー社,2010),『経営行動科学ハンドブック』(共著,中央経済社,2011)

原口 美佐代

1959年生まれ。1983年同志社大学法学部卒業。現在 (公財)アジア福祉教育財団難民事業本部関西支部難民相談員,学校法人佐藤学園 大阪バイオメディカル専門学校 医療福祉心理学科 講師,(社福)神戸いのちの電話 研修委員委員長,(公社)大阪社会福祉士会 国家試験受験対策・新入会員支援委員会委員長,2011年~ 大阪大谷大学 人間社会学部 非常勤講師,大阪人間科学大学 人間科学部社会福祉学科 非常勤講師。 著書 『滞日外国人支援の実践におけるソーシャルワーカーの課題』(共著,第21回アジア・太平洋ソーシャルワーク会議大会プロシーディング,2011),『滞日外国人支援の実践から学ぶ多文化ソーシャルワーク』(共著,中央法規出版,2012)ほか。

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