ケースに学ぶ音楽療法I
Music Therapy Case Studies Ⅰ
著者 | 阪上 正巳 編著 岡崎 香奈 編著 |
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ジャンル | 心理療法・カウンセリング 発達・思春期・老年 |
出版年月日 | 2017/04/27 |
ISBN | 9784753311149 |
判型・ページ数 | A5・184ページ |
定価 | 3,080円(本体2,800円+税) |
在庫 | 在庫あり |
目次
第1章 音楽を身にまとった子ども―自閉的傾向のあるダウン症知的障碍児との6年間
第2章 〈表現〉を支える環境をつくる―副腎白質ジストロフィーを患う少年の事例
第3章 児童対象の音楽心理療法―他害行動がある子どもの変容プロセス
第4章 コミュニティ音楽療法の視点でみるノルウェーの小学校での音楽療法
第5章 認知症高齢者への個人音楽療法―即興演奏がもたらす内的世界の変容について
第6章 重度の認知症高齢者の集団音楽療法―鈴紐の活動への参加を通して得られた成果と意義
第7章 生きてきたように在りたい―緩和ケアにおける音楽療法
第8章 音楽を通して引き継がれる思い―緩和ケア病棟における音楽療法
解題 なぜケース(事例)を読むことが必要なのか?
内容説明
私たち音楽療法士は,実践現場のクライエントを目の前にして,臨床家としてどのように関わってよいかわからず立ちすくんでしまうことが必ずあるのではないだろうか?教科書で習った理論や知識では対応できず,予測できない反応に右往左往するとき,どこかで読んだ事例が役に立つときがある。セッション時に抱える「どのような活動を行うのあか」「どのような音楽をいかに奏でるのか」「どのような介入をしたらよいのか」という疑問に対して,いわゆるEvidence basedの論文の結果におけるグラフやパーセンテージ等の数値は,情報としては有用であっても,実際の現場におけるクライエントに対してはほぼ「役に立たない」のが現状であろう。もちろん,そのような基礎研究を否定するものではないが,実践研究としての事例の重要性が,実はここにある。他の音楽療法士が行った実践の具体例に触れ,自分がセラピストだったらどうするだろうか,とイマジネーションを膨らませて事例を読んでおくことが,自身の実践における応用において大きなヒントとなるのである。もちろん,各事例はマニュアルではないため,「このまま」の方法を自分のクライエントに使うことができないことは,私たちが十分知り得ていることである。なぜなら,クライエントや音楽療法士の音楽的背景はすべて「コンテクスト性」によるもので,個々に異なるからである。しかし,各事例においては,各著者が臨床的な結果を生み出した介入方法が「実際に存在する」し,そこには,クライエントが変わっても「普遍的な音楽の臨床的作用」そして「音楽療法士にしかでき得ない独自の仕事の本質」が織り込まれている。事例を読み解くときには,読み手のイマジネーションが必要である。記述されていることを鵜呑みにするのではなく,この事例から何を読み取り,目の前の自分のクライエントにどのように応用できるのかについて考え,柔軟な想像性と創造性を駆使してこそ,この事例集に内在する音楽の生命が活用されるであろう。各事例には,この生命に溢れた「現実」そのものが述べられている。(「解題」より)
著者情報
阪上 正巳 編著
岡崎 香奈 編著