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自閉症スペクトラムの臨床

大人と子どもへの精神分析的アプローチ

目次

序 章 ケイト・バロウズ
第Ⅰ部 子どもの自閉症
 第1章 自閉症への精神医学的アプローチとその精神分析的展望との関係…デヴィッド・シンプソン
 第2章 心因性自閉症の生成における重要な要素…フランセス・タスティン
 第3章 波長を見つけ出すこと──自閉症を持つ子どもとコミュニケートする道具…アン・アルヴァレズ
 第4章 自閉症状を呈したある少女の分析…ヴェレダ・チェッチ
 第5章 「遊び」療法──自閉症と心的外傷に取り組むこと…ポール・バロウズ
 第6章 心的スペースの創出,「赤ん坊たちの巣窟」空想,エディプス・コンプレックスの出現…ディディエ・ウゼル
 第7章 人間の家族の中に加わること…マリア・ロウド
第Ⅱ部 大人の自閉的特徴
 第8章 神経症患者における自閉的現象…H. シドニー・クライン
 第9章 安全のリズム…フランセス・タスティン
 第10章 自閉対象──神経症患者と境界例患者の転移や逆転移における自己愛との関係性…マリオ・J・ゴンベロフ他
 第11章 経験の自閉-隣接的側面を分析的に扱うこと…トーマス・オグデン
 第12章 成人患者における自閉的策略という生存機能について…ジュディス・ミトラーニ
 第13章 幽霊を寄せ付けないこと──自閉的退避とその親喪失との関係…ケイト・バロウズ
 第14章 架け橋を見つけること──自閉的特徴を持つ成人2症例との精神分析…キャロライン・ポルメア

 解題──子どもの自閉症への精神分析的アプローチ…平井正三
 解題──成人の自閉的側面…世良洋

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内容説明

「あとがき」より抜粋
 自閉症とその近縁領域の問題は,長年,子どもの臨床家の間では大きな関心ごとであったが,ここ最近,自閉症スペクトラムという形でその概念が拡大されるなかで成人の心理臨床や精神科臨床においても大変注目されているのは周知の通りである。本書にも示されているように,このように子どもの臨床から派生した概念を成人の臨床に拡大して適用する流れは,実は精神分析において早くから,フランセス・タスティンやシドニー・クラインたちの業績に見られたものである。
 臨床家が「この人は自閉症スペクトラムを持つ」と言う場合に,それが「特性」として語られる以上に,それを持つそれぞれの人がどのような経験をしているのか,共感的に深く理解しようという努力が放棄されることが多いように思われる。本書に収められた各論文は,それぞれの執筆者たちが,自閉症スペクトラムを持つ子どもや大人の経験世界に深い関心を寄せ,それを我が事のように理解しようとしていることを読者に伝えている。こうした臨床家の試みは,「人間の家族」(第7章)の一員に加わること,「安全のリズム」(第9章)を実感していくこと,すなわち間主観性の世界への参入を手助けするのである。そういう意味で,本書は,自閉症スペクトラムを持つ子どもや大人の心理臨床や精神科臨床に携わる人,このような人の心に関心を持つ人に是非読んでいただきたい本である。
 他方,精神分析臨床の流れにおいて,自閉症スペクトラムを持つ子どもや大人は,精神分析や精神分析的心理療法の対象ではないと考える人も多い。本書の執筆者たちは,多大な困難を伴うものの,こうした子どもや大人への精神分析的アプローチは実りが多いことを示しているとともに,そのために必要な理論上,技法上の拡大を提示している。子どもの臨床においても,大人の臨床においても,なんらかの形で自閉症スペクトラムやその近縁領域の問題を持つケースがますます多くなっているように思われる現代の状況で,こうしたクライアントや患者に精神分析がなしえることに関して本書の論文群は示唆に富んだ提案に満ちている。
 本書はこのように,自閉症スペクトラムを持つ子どもや大人の心をもっと深く理解したい臨床家すべてに,とりわけ精神分析をこのような子どもや大人に役立てたいと考える精神分析臨床家にとって必読の論文が集められた本と言えるであろう。
 本書が,わが国の心理臨床や精神科臨床において,自閉症スペクトラムを持つ子どもや大人の経験世界に深い関心を持ち,彼らと心を通わせていこうと試みる臨床家,すなわち「人間の家族」に加わる手助けをする臨床家が増えていく一助となることを願う。
平井正三

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著者情報

K.バロウズ

平井 正三 監訳

1994年京都大学教育学部博士課程研究指導認定退学。1997年英国タ ビストック・クリニック児童・青年心理療法コース修了。帰国後,佛教大学臨床心理学研究センター嘱託臨床心理士・京都光華女子大学助教授などを経て,現在御池心理療法センターにて開業の傍らNPO法人子どもの心理療法支援会の代表を務める。2011年より大阪経済大学大学院人間科学研究科客員教授に就任。 著書 『子どもの精神分析的心理療法の経験』(金剛出版),『精神分析的心理療法と象徴化』(岩崎学術出版社)。 訳書〔共訳〕 アンダーソン編『ク ラインと ビオンの臨床講義」(岩崎学術出版社),ヒンシェルウッド著『クリニカル・クライン」(誠信書房),ビオン著『精神分析の方法』(法政大学出版局),アルヴァレズ著『こころの再生を求めて』(岩崎学術出版社),メルツァ一著『夢生活』(金剛出版)。〔監訳〕 ブロンスタイン編『現代クライン派入門』(岩崎学術出版社),タスティ ン著『自閉症と小児精神病』(創元社),ボストンとスザ一編『被虐待児の精神分析的心理療法』(金剛出版),ウィッテンバーグ著『臨床現場に生かすクライン派精神分析』(岩崎学術出版社),ウィッテンバーグ他著『学校現場に生かす精神分析』(岩崎学術出版社),ヨーエル著『学校現場に生かす精神分析〈実践編〉』(岩崎学術出版社)。

世良 洋 監訳

1978年札幌医科大学卒業。1981年同助手。1985~1987年ロンドン大学精神医学研究所,モーズレイ病院留学。1987年釧路赤十字病院精神科部長を経て世良心療内科クリニック院長。日本精神分析学会認定精神療法医。日本精神神経学会専門医。

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