ホーム > 空間と表象の精神病理

目次

幻の隆盛―序にかえて

第一章 精神的危機と作家の作風の変化―治療学としての病跡学を求めて― 
第二章 「持続性離人」の精神病理学―離人症スペクトラムの提唱―
第三章 非機能性・器質性精神病の臨床表現病理―「認知症性」疾患を視野に入れて―
第四章 絵画療法の精神療法としての治療可能性
第五章 芸術療法の観点からみた統合失調症の心的機制
第六章 拡大風景構成法―統合失調症における空間表象の病理を交えて―
第七章 書評:イレーネ・ヤカブ『精神医学における絵画表現』
第八章 キャンパス空間の精神病理
第九章 「寄り添う療法」について考える
第十章 芸術の視点からみた風景構成法
第十一章 21世紀の芸術療法・表現精神病理学に向けて

あとがき
-----------------------------------

伊集院 清一(いじゅういん・せいいち)
1958年 2月 神戸市生まれ
1976年 4月 東京大学理科Ⅲ類入学
1982年 3月 東京大学医学部医学科卒業
同  年 6月 東京大学医学部附属病院内科
1984年 7月 神戸大学医学部精神神経科学教室
1989年10月 東京大学医学部附属病院分院神経科
1990年 1月 医学博士
1993年 1月 東京大学医学部助手・附属病院分院神経科医局長
1994年 5月 埼玉大学保健センター助教授
2000年 9月 2000年度エルンスト・クリス賞(アメリカ表現精神病理学会賞本       賞)受賞(ハーバード大学)
2003年 4月 多摩美術大学大学院美術研究科美術学部教授(現職)
2003年11月 日本芸術療法学会賞本賞受賞
 精神保健指定医、精神科専門医、臨床心理士、日本芸術療法学会認定芸術療法士、日本芸術療法学会理事(1994年~評講員、1996年~現在)、日本病跡学会理事、東京大学非常勤講師(医学部・教育学部・保健センター、1996年4月~2008年3月)、お茶の水女子大学非常勤講師(1999年4月~2000年3月)など
著書『風景構成法―「枠組」のなかの心象』(単著、金剛出版)『芸術療法実践講座2絵画療法Ⅱ』(共編著、岩崎学術出版社)、『治療のテルモピュライ』(共著、星和書店)、『精神医学の名著50』(分担執筆、平凡社)、『精神医学―その基盤と進歩』(分担執筆、朝倉書店)、『芸術療法1理論編、2実践編』、『風景構成法その後の発展』(ともに分担執筆、岩崎学術出版社)、『精神医学レビュー5妄想』(分担執筆、ライフサイエンス社)、""Dynamik psychischer Prozesse in Diagnose und Therapie"" (Flaccus Kiadó)、 ""Arts-Therapies-Communication""(Lit Verlag)、""Arts Medicine""(MMB Music)、 ""Psychopathology of Expression and Art Therapy in the World"" (Animula)、≪L'Humour: Histoire, Culture et Psychologie≫(SIPE)、 ""The Influence of Recent Socio-Political Events on Fine Arts and on Patient's Art"" ""Developmental Aspects of Creatirity"" (ともにASPE)(独英仏文はいずれも分担執筆)など
訳書(バーンズ, R.C.)「動的H-T-P描画診断法」(共訳、星和書店)
その他 「詩集そこにいるのは誰」(篁清羽として,星和書店)、「海・海を求めて」(作詞担当、教育芸術社、JASRAC作品コード030-6794-7、THE CHORUS '95混声/女声編、合唱曲集NEW!心のハーモニー コーラス・パーティー5、音多多重パート練習用CD Chorus ONTA VoL.5ほか)

このページのトップへ

内容説明

【第5章より】 一般に「表現」とは、内なるものを外界へ・身体の外へ表出する行為である。そこでは、人間の心に存する「枠」の存在が前提になってくる。それにより、内と外とが区別されうる。さらに、心理的な枠から身体という枠へと考察は進みうる。たとえば、摂食障害の問題は、身体像、「身体という枠」の歪みと捉えることもできる。身体という枠を感じること、それは、絵画療法をはじめ、芸術療法一般についていえることである。感覚系を介して身体という枠の健全さを取り戻すということ、造形療法やダンス・ムーブメント療法の意味合いも、そこにある。人間は、文明の名のもと、身体の外にさらに枠をつくってきた。家庭、学校、会社など社会的な枠組がそれだ。そればかりでなく、自然の空間の中に、物理的・人工的な枠をもつくってきた。それが、家や建物などの建築である。精神医学においても、建物、すなわち精神病院は最大の治療用具であるというジャン・エスキロールEsquirol, J.E.D.の言葉がある。空間の趣、椅子や机の配置ひとつが精神療法的意味合いをもつ。自然の空間を人工的に仕切るということ。外界に自らの枠・空間を創造するということは、人間の人間たる、魂の拠り所につながるのではないだろうか。この自然と人間の魂の接点として、「芸術」は存在する。自然や環境から何かを切り取って、その時感じた感覚をもとに、それを再構築し、空間を仕切ったり、自らの感覚をより遠くに拡げたり、その歪みを戻したりして、環境との調和を求め、自然な身体の感覚を取り戻すということ、芸術はそういう役割も果たしているのではないだろうか。文明とか科学とかによる自然の切り取り方とは違った、何かそれらを補正し、そっと被うように働くところに、芸術の意味はあるように思われる。(伊集院清一)

このページのトップへ