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青年のひきこもり・その後  新刊

包括的アセスメントと支援の方法論

目次

序 章 ひきこもり問題に関する論点と本書の成り立ち
第Ⅰ部 ひきこもりの概念と理解
 第1章 ひきこもりの概念整理
 第2章 ひきこもりの成因論
 第3章 神経症とひきこもり
 第4章 パーソナリティ障害とひきこもり
 第5章 ひきこもりと発達障害
 第6章 ひきこもりケースの包括的アセスメントGlobal Assessment for Social Withdrawal(GAW)
第Ⅱ部 ひきこもりケースの治療と支援
 第7章 治療・支援の総論といくつかの留意点
 第8章 内的なひきこもりへの心理療法的アプローチ
 第9章 ひきこもりを伴う自閉スペクトラム症とメンタライゼーションに焦点を当てた心理療法
 第10章 受診・相談への動機づけと先行転移
 第11章 本人が受診・相談しないケースにおける家族状況の分類と援助方針
 第12章 本人は受診・相談しないケースの家族支援
 第13章 幼児期・児童期のひきこもりと家族支援
 第14章 ひきこもりケースに対するアウトリーチ
 第15章 困難な家族状況と危機状況における支援
 第16章 ひきこもりのリスクをもつ子どもと家族への予防的早期支援
 第17章 ひきこもりケースに対する地域支援と支援体制

初出一覧
索  引
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近藤直司(こんどう・なおじ)
大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。
1962年東京生まれ。東海大学医学部卒。東海大学医学部精神科学教室,神奈川県立精神医療センター芹香病院,山梨県立精神保健福祉センター所長(山梨県中央児童相談所副所長を兼任),山梨県都留児童相談所所長,東京都立小児総合医療センター児童・思春期精神科部長を経て,2014年より現職。

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内容説明

【序章より抜粋】
ひきこもり問題は多様な側面を有するため,その概念や理解,個々のケースのアセスメント,治療・支援,予防,支援体制など,論点が多岐にわたるのが特徴である。ひきこもり問題の捉え方や注目点はかなり多様であり,専門家同士で論じ合っても話が噛み合わないこともある。そのため,ひきこもりの概念と成因論について,第1章,2章で整理・確認することとした。また,『ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン』(厚生労働省,2010年)では,本人への治療・支援に関しては総論的な内容に留まっているため,本書では,神経症,パーソナリティの問題,発達障害といった精神医学的診断に応じた各論的な支援論を提示することとした(第3章,4章,5章)。さらに,私は以前から,精神医学的診断以外の方法で多様なひきこもりケースを分類できるようになることが望ましいと考えていたので,土居健郎氏による「治療動機と治療者に与える印象を根拠とした分類」を援用した,かつての試論も修正を加えて掲載することとした(第10章)。
また,前書,『青年のひきこもり―心理社会的背景・病理・治療援助』(岩崎学術出版社,2000年)では,ひきこもり問題に関連があると思われる疾患概念を網羅することを意図し,家族状況やジェンダー論に至るまで,広汎な観点を盛り込んでいたが,本書は,本人と家族に対する治療・支援の実際や技術的な内容に限定している。
また前書では,まだ十分にはわかってはいないが,発達障害圏のケースが少なくないかもしれないという予見も示した。その後,ひきこもりケースに軽度の知的障害や自閉症特性をもった人たちが少なからず含まれていることが明らかになり,いまでは誰もがそのように捉えているものと思う。発達障害の関連が明らかになったことは,「ひきこもりは性格的な弱さや甘えの問題」といった偏った印象を修正する契機となり,重要なことであったと思う。また私たちも,自閉症特性をもつ人たちへの心理療法的アプローチの試みを意欲的に継続することができた。
その後,ひきこもりケースの支援に関して大きく変わったこととしては,ひきこもり地域支援センターや生活困窮者支援事業などが施策化され,行政的な相談窓口が明確になったことが挙げられよう。また,信頼できる治療・支援機関が以前よりも増えたであろうし,いくつかのアセスメント方法や支援技法も開発・提唱されている。しかし,一旦引き受ければ,何年にもわたって,あれこれと迷いながら関わり続けることになる多くのケースに対して,それに相応しい本格的な支援体制が整備されたとは言い難いし,当時から多くの援助者が技術的に難しいと感じていたことは,今も変わらず難しい。
冒頭で述べたように,ひきこもり問題は多様な論点を含んでおり,自分もそれらに関して一通りのことを経験し,ない知恵を絞り,拙いながらも文章にしてきたつもりではあったので,それらの拙論に手を入れ,その後の経験も加えて整理すれば,いま現在,青年期・成人期のひきこもりケースに相対している治療者・援助者にも少しは役立つ本になるのではないかと考えた。
さらに,私はこの間,精神科医療,地域精神保健福祉,障害者福祉,児童福祉,心理臨床などの領域で治療・援助実践にあたる専門職の資質の向上を意図して,アセスメントをテーマにした研修に取り組んできたが,前書から現在までの15年あまり,あるいは,ガイドライン以後も,ひきこもりケースの治療・支援に携わっている専門職のアセスメント技術が思ったほどには向上していないことが気になっていたため,多職種が共通して活用し,個人とチームのスキルアップを図りつつ,良質な治療・支援につながるような評価システムを提案することも本書を執筆する強い動機付けとなった。したがって,第6章の多軸評定システムが本書のトピックであり,それ以外の多くの章は,このシステムを使いこなすために必要な知見としてお読みいただきたい。
本書の執筆にあたって,前書,『青年のひきこもり』を久しぶりに読み返してみたところ,内的なひきこもりに焦点を当てた精神分析的心理療法について論じた章が多く,社会的・外的なひきこもりに対して問題意識を抱いている読者にとっては,両者の相違や関連性・関係性がイメージしにくかったのではないかと感じた。そのため本書では,対人関係や社会参加を回避し,社会的・外的なひきこもりをきたしている青年期ケースの理解と治療・支援に焦点を当てることとし,唯一,第8章で,心理的・内的なレベルで生じているひきこもり現象について詳しく取り上げることとした。
さまざまな医療・保健・福祉問題の中でも,ひきこもりケースはとくにアセスメントと対応が難しい。ひきこもりケースに対して,あるいは,治療・支援の経過において生じるさまざまな状況・局面に対応できるだけのスキルを身に付ければ,その他の諸問題にも十分に応用できるのではないかとさえ思う。本書が専門職のスキルアップと,ひきこもりケースへの治療・援助実践の向上に役立つことを願っている。

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