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境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック

「有害な治療」に陥らないための技術

境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック

著者の長年にわたる試行錯誤から生まれた,実用的かつ実際的なケース・マネジメントの実践法を詳説する。

著者 J.G.ガンダーソン
黒田 章史
ジャンル 精神医学・精神医療
心理療法・カウンセリング
出版年月日 2018/03/16
ISBN 9784753311316
判型・ページ数 A5・248ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文
謝辞
第Ⅰ部 予備知識
第1章 程よい精神科マネジメント(GPM)入門
治療計画におけるGPMの位置づけ/GPMの先行研究および基盤/GPMの実証的裏づけ

第Ⅱ部 GPMマニュアル──治療ガイドライン
第2章 一般的指針
程よい精神科マネジメントの理論:対人関係の過敏さ/基本的な治療アプローチ/変化はどのようにして生じるか

第3章 診断をつける
診断の開示/どのように診断を開示するか/よくある問題

第4章 治療を始める
治療の枠組みを設定する/セッション間の対応可能性/治療同盟の確立/よくある問題

第5章 自殺傾向と自殺目的ではない自傷に対応する
自己を危険にさらすような行動が今にも起こりそうな場合/自己を危険にさらすような行動をした後の対応/よくある問題

第6章 薬物療法と併存症
一般的指針/治療同盟を作り上げる/薬剤の選択/併存症/よくある問題

第7章 治療を分担する
治療を分担する根拠/他の治療様式を選択する/よくある問題/集団療法(弁証法的行動療法の技能訓練グループを含む)/よくある問題(集団療法)/家族介入/よくある問題(家族)

第Ⅲ部 GPMワークブック──症例解説
第8章 症例の説明
症例1ロジャー:大学でのトラブル/症例2ロレッタ:深夜の電話/症例3エイプリル:身体化と治療同盟を作り上げること/症例4ローラ:入院と依存/症例5ローレンス:長期にわたる治療/症例6メラニー:治療の分担の失敗/症例7ジル:ここにいる誰かがBPDに罹っている

第Ⅳ部 GPMビデオガイド──治療アプローチのビデオに基づく説明
第9章 ビデオを用いた説明

付録
A.境界性パーソナリティ障害に対するエビデンスに基づく他の治療と,程よい精神科マネジメントの関係/B.境界性パーソナリティ障害に対するエビデンスに基づくさまざまな治療に共通する要因/C.安全対策:その一例/D.家族のためのガイドライン

文献
訳者あとがき
索引

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内容説明

あなたが医療あるいは臨床心理に携わる専門職であるか,この疾患に悩んでいるご当人であるか,ご家族であるかはひとまず問わないことにしよう。本書を手に取ったからには,あなたは境界性パーソナリティ障害(BPD)に多少なりとも興味を持っているはずである。J.G.ガンダーソンによって著された本書は,そのような人たちのいずれに対しても,必要最小限の正確な知識を提供するためのものである。治療に携わる専門家たちにとって,BPD患者と治療的関わりを持つ上での基本に関して重要な示唆を与えることは間違いない。たとえば本書第9章の模擬面接ビデオで示されている,患者とセラピストのやり取りを一渉り眺めてみれば,BPDを治療していく上で治療者に必要とされる基本的姿勢が,いわゆる「カウンセリング的なるもの」からいかにかけ離れているかがわかるのではないだろうか。セラピストは常に治療の主導権を握り,「専門家(知識ある者)」として振る舞い,もっぱら演繹的な姿勢を取る――すなわちBPDに関する一般的な理論に基づき,個々の患者にみられる具体的な問題について(「この問題は~という病理に由来すると思われる」「これは~という症状に相当する」といった形で)推論し,説明していくという姿勢で治療に臨む。また患者を決して「お客様扱い」することなく,治療において患者が積極的な役割を果たすよう粘り強く求めていく(患者は変わらなければならない!)。また治療外で患者が充実した生活を送れるようになることを重要な目標として定め,なるべく早く学校,仕事,あるいは家事労働に就くよう指導していく。治療に携わる専門家の中には,BPDという疾患で苦しんでいる患者に対して追い打ちをかけるような介入であるとして,本書で示されているようなセラピストの姿勢に対して強い違和感――ことによると嫌悪感――を抱く人もいるかもしれない。だが精神科以外の領域の治療に目を向けるなら,こうした治療者の姿勢はごく一般的かつ常識的なものに過ぎない。また患者が直面するさまざまな問題は不可解なものではなく,筋道立てて理解すること,さらに変えていくことさえ可能なものであることを,患者や家族に対して折々伝えていくのは,この疾患の治療を行なうにあたって欠かすことのできない手続きなのである。このような方向づけがなされない限り,患者が自分を変え,「きちんと生きて(get a life)」いくという,短期的には苦痛を伴う作業に責任を持って継続的に取り組み,それを家族が支えていくというプロセスを,首尾よく進めていくことは難しいだろう。本書で示されているような方向性が,BPDに対する関わり方の基本として治療者の間で共有されるなら,この疾患に対する治療が大きく底上げされていくことは間違いない。その意味でBPDの治療に携わる臨床家が,「程よい(good enough)」技量を身につけるために最低限必要な知識を提供するという著者の目論見は,見事に達成されていると言って良いだろう。また患者や家族が本書に触れ,BPDに関する正確な知識を獲得し,治療ではどのようなことがおこなわれ,自分たちには何が要求されるかについて,あらかじめ見当がつけられるようにしておくことは,この疾患の治療を円滑に進めていく上で大きな力になるに違いない。ただしBPD治療の底上げを図るという著者の狙いは充分に達成されているとしても,この疾患を治療していく上で最大の問題と言って良い,心理社会的機能の不全に対応するための方法を提示することには,本書においてもやはり成功しているとは言い難いように思われる(これは著者が,家族を治療資源として活用する方法を,充分に構築できなかったこととも関係しているかもしれない)。もっとも,これは決して著者だけの問題ではなく,弁証法的行動療法やメンタライゼーションに基づく治療といった,これまでに提唱された主だった治療法においても,ほぼ手つかずのままになっている領域なのだが。心理社会的機能の不全に対してどのような治療的対応をおこなうことが可能であり,そしてそれを実践する上で家族をはじめとした,患者の周囲の人々がいかに重要な役割を果たすかについて詳細に論じた書物としては,現在でも拙著『治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド』(岩崎学術出版社,2014)が唯一のものである。BPDが回復していく上で,家族を中心とした支援ネットワークが果たす役割の重要性は,欧米においてもようやく認識され始めたテーマでもあるから,興味のある方は一読していただければと思う。本書を通して,憂慮しなければならないほどに立ち後れた水準にあるわが国のBPD臨床が,わずかなりとも底上げされることを願ってやまない。(「訳者あとがき」より)

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著者情報

J.G.ガンダーソン

黒田 章史

1956年東京に生まれる。1982年筑波大学医学専門学群卒業。東京医科歯科大学医学部精神医学教室にて研修。東京都多摩老人医療センター,都立松沢病院を経て,2000年 杉並区荻窪にて黒田クリニックを開設。現在に至る。 著訳書 『実効ある心理療法のために』(共著,金剛出版,1999年), 『感情障害』(共著,医学書院,1997年),,J.G.ガンダーソン著『境界性パーソナリティ障害―クリニカルガイド』(金剛出版,2006年),J.パリス著『境界性パーソナリティ障害の治療―エビデンスに基づく治療ガイド』(金剛出版)

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