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死の不安に向き合う  新刊

実存の哲学と心理臨床プラクティス

死の不安に向き合う
著者 I.D.ヤーロム
羽下 大信 監訳
出版年月日 2018/05/22
ISBN 9784753311347
判型・ページ数 4-6・304ページ
定価 本体3,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

第一章 人は死ぬ
第二章 死の不安を認める
顕在化した不安 死の不安は何かの置き換えではない 隠れた死の不安 「漠然とした不安」とは、死の不安である
第三章 覚醒するという体験
「見ること」と「存在を問うこと」 人生の最後に覚醒する――イワン・イリイチの場合 悲嘆と覚醒の体験 重大な決定と覚醒の体験 人生の節目と覚醒の体験 覚醒の体験としての夢 面接の終結と覚醒の体験
第四章 思考の力
エピクロスの叡智 波及作用 死の不安を越える、思考の力を借りて ショーペンハウアーと三つの生き方――人はどう生きるか、何を所有するか、他人にどう映っているか
第五章 死の恐怖を超える
人同士が結びつくこと 「そこにいる」という力 自己開示 波及作用が働くとき 自らの中の叡知を発見する 人生を充足させる 目覚め、それを生きる
第六章 死に目覚める──私の場合
死に直面する 死との出会い 自分の潜在可能性を見出す 私の師とその死 死と向き合う 宗教と信念 死について書くこと
第七章 死への不安に取り組む──セラピストへの助言
「実存的」とはどんな意味か? コンテンツとコンテキスト 死の不安と関係の力 〈いま・ここ〉の作業をする セラピストの自己開示 夢 ――〈いま・ここ〉に至る道
訳者あとがき
解 題

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内容説明

(「改題」(羽下大信)より抜粋)
 この本は、彼自身の心理臨床の活動の中での、死をめぐってのクライエントとのかかわり、それに刺激されての彼の思考、自らの中に飼ってきた死のテーマの再発見、そこから立ち現れる死のリアリティに触れようとする。登場するのは、自分のクライエント、尊敬する師、友人、先哲とりわけエピクロス、実存的スタンス、また短くだがドーキンス、文学作品。ヤーロムは、これらを介することで、先ほどの「生死の実感」とは別の方法から、「他人の死」のその先を描こうとする。
 この本の美点は何だろうか。その第一は「率直であろうとする態度」ではないか。とりわけそれが鮮明に表れるのは、死に向かおうとする人に相(あい)対して、対人援助者としてかかわるとき、である。その具体的な展開のさまざまは本文に譲るとして、ひとつだけ例を挙げれば、あるクライエントが自分の生活の全てを整理して高齢者住宅に引っ越す際の、最後の最後になってパニックに陥り、電話をかけてくる。いつ切れるか分からない緊迫したやり取りが展開され、一定の落ち着きを見たのちの振り返り。ヤーロムは、このクライエントとのやり取りの中で、自分の語った言葉の内容・意味(コンテンツ)は意味があるものだった、とか、どれかのフレイズが有効だったのだろう、とは、決して考えない。では何が有効だったのか。ここから先の叙述が、この本の真骨頂だろう。
 もうひとつ美点を挙げれば、ヤーロムは、畏友とも言えるロロ・メイの最晩年とその最期に付き添う。また、かつての師匠たちの晩年とその孤独の傍にいる。このいずれの場合にも、「その人」たちから見たら、自分はどういう存在かに、必ず思いを致す。この点が、なかなかに魅力的である。このスタンスは、何も、対人援助専門家だけのものではない。また、逆に言えば、残念ながら、このスタンスを持ちえないままの対人援助専門家も多々いるのが現実である。普通の人の中にも、こうしたスタンスに意識的な人々も存在する。こうした人たちに巡り合うと、われわれはハッとする。その意識の実存的ありようを見せられ、大事なものに触れるからである。
 ヤーロムが、かつて影響を受け、あるいは世話になった人たちの晩年に、最後まで会い続けること。それも、ときには西海岸から東海岸という長大な距離を跨いで。そのこと自体も、なかなかに実行し難く、我と我が身を振り返っても、冷や汗の出る思いである。このように、この本は読むうちにこちらを我に帰らせる。そのようにさせる喚起力がある。それは、死のテーマは、誰か他人のものでもなく、それにかかわる専門家のものでもない、この「私」のものである。彼がそう言っていることからやってくるのだろう。

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著者情報

I.D.ヤーロム

アメリカ合衆国の医学者,精神科医。専門は実存療法,集団精神療法。スタンフォード大学精神医学名誉教授。著書に教科書『The Theory and Practice of Psychotherapy(邦訳『ヤーロム グループサイコセラピー――理論と実践 』(西村書店)』,『Existential Psychotherapy』がある。またベストセラーとなった『Love's Executioner』,『When Nietzsche Wept(邦訳『ニーチェが泣くとき』(西村書店)』など,小説家としても知られる。

羽下 大信 監訳

1949年生まれ。広島大学大学院博士課程(教育心理学専攻)中退。臨床心理士,住吉心理オフィス主催。〈著書〉『サイコセラピストたち』(単著,神戸市外国語大学外国語学研究所),『心理臨床の森で』(単著,近代文芸社),『〈今〉を読む 消費至上主義の帰趨』(共著,人文書院)。〈翻訳〉ストロジャー『ハインツ・コフート』(共訳,金剛出版)。今回,編・監訳。

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