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成人アタッチメントのアセスメント  新刊

動的‐成熟モデルによる談話分析

成人アタッチメントのアセスメント

より動的な発達観に基づくクリテンデンのAAIは,臨床心理士が成人アタッチメントを見立てるために,将来性の高い技法である。

著者 パトリシア・M・クリテンデン
アンドレラ・ランディーニ
三上 謙一 監訳
ジャンル 精神医学・精神医療
心理療法・カウンセリング
出版年月日 2018/08/27
ISBN 9784753311392
判型・ページ数 B5・360ページ
定価 本体5,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

日本語版序文 馬場 禮子
日本の皆様へ P・M・クリテンデン
謝 辞

 第1章 序 論──「私の言いたいことわかる?」
第Ⅰ部 アタッチメント理論への動的‐成熟アプローチ
 第2章 理論的背景
 第3章 情報処理
 第4章 アダルト・アタッチメント・インタビューの談話分析に用いられる構成概念
第Ⅱ部 分類システム
 分類を扱う各章への導入
 第5章 Bタイプ(バランスの取れた)方略の概観
 第6章 Aタイプ方略の概観とA1–2
 第7章 強迫的Aタイプ方略(A3–8)──危機への対処
 第8章 Cタイプ方略の概観とC1–2
 第9章 執着的Cタイプ方略──不確かさ,曖昧さ,脅威への対処
 第10章 結合パターン──A/CとAC
 第11章 対人関係的自己防衛方略の崩壊を反映する状態──未解決のトラウマ(Utr)または喪失(Ul)
 第12章 対人関係的自己防衛方略の破綻を反映する状態──個人内水準および家族外水準への移行
第Ⅲ部 理論から応用へ
 第13章 分類過程と分類ガイドライン
 第14章 ではどうすればいいのか?──AAI分類から治療計画への変換
 第15章 DMM-AAIの妥当性と臨床的意義
 第16章 結 論

 付録A 略語用語集
 付録B DMM分類システムとM&G分類システムとの対応
 文 献
 訳者あとがき
 索 引

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内容説明

【日本語版序文より】
 Crittendenによる新たな理解に基づくAAI(Adult Attachment Interview)が翻訳され,日本人に広く知られ使われる準備ができた。これまでにもMainとGoldwynによるAAIはかなりよく知られ,使われており,乳幼児期のアタッチメントの質が成人後にどのように影響するかについて,特に親として子育てする場合にどう作用するかについてという,世代間伝達を含む,人格形成上の重要な課題を巡る研究に用いられ,大きな役割を果して来た。したがって,それを新たに理論づけ,整理し直す必要性について疑問を持たれる方もあるかも知れない。しかし,CrittendenのDynamic Maturational Modelに基づいたAAI(=DMM-AAI)は,次第に疑問点を増していたこれまでのAAIを見直し,かなり基本的な側面を整備し直したものである。特に,動的成熟(dynamic maturation)と命名されているように,その観点は発達過程において生得的資質と環境要因とがダイナミックに相互作用して,パーソナリティの成熟を促していくとするものであり,必ずしも幼児期の母子関係のみを論拠とせず,より動的な発達観に基づいているところが魅力的である。
 アタッチメントとは,Bowlby, J.が提唱した,母子関係の観察から生成された概念である。パーソナリティ発達に関する基礎理論は精神分析的人格理論にあるが,アタッチメント論の特質はBowlbyの観点の広さにあり,児童精神医学ばかりでなく,システム論の観点や実験観察法を含む比較行動学の研究法も取り込んでいる。それゆえに精神分析家からの批判もあるが,それゆえにこそ,彼の理論を継ぐ研究者が続出し,Ainsworthのstrange situation法のようにさらに広くこの概念の領域を拡げる研究もあり,他領域の研究法が進化するにつれて,彼の理論に基づく発達論も発展しているのであろう。さらに精神分析理論という側面から見ても,Bowlbyの発達論,つまり,アタッチメント理論には,他の研究者による発達論の内容の多くの要素が含まれている。AAIの魅力は,親子関係,特に母子関係という最も重要で基本的な関係性を起点として,詳細綿密に目を向け,査定しつつ,それを次の世代の親子関係へと繋げていくところにある。さらにDMM-AAIは,それらを近年進歩の著しい脳神経学その他の側面と照合するという新しい展開を示している。
 CrittendenはMainら(以後M&Gとする)のAAIに見られる幾つかの課題を修正したという(訳書p. 5)。M&G法のコード化の技法を身につけて正確にコードするのは非常に難しいこと,M&G法ではAAIが何を測定しているのかが不明瞭だということ,Bowlbyの著作が書き上げられて以降,つまり1980年以降に進んだ心的機能に関する知識が取り入れられていないこと,Ainsworthのstrange situation法に基づく分類システムに従っているので,より複雑な成人の行動に充分対応していないことなどである。
 こうした課題をできる限り解決していったのがDMM-AAIである。第一の課題であるコーディングの難しさについては,M&G法によるコーディングのガイドラインに見られた表現の曖昧さや,言語特異性を修正し,ガイドラインをより明確にしている。とはいえ,コーディングに熟達するためには,指導を受けながらの事例検討を積み重ねていくことが必要で,たとえ修正されたとしてもガイドラインを読むだけでコーディング法を身につけることは難しい。その点面接法を用いる本法には,臨床心理アセスメントの技法習得に共通する難しさがある。次にAAIが査定しているものは何かについては,次のように纏められると私は理解している。つまり,人は過去の体験から得てきたものを参照しつつ未来への予測を立てるのだが,その際,どのように情報処理がなされているのか,どのようにして自分と子孫の将来を守るために役立つ情報が取捨選択されているのかを査定していることが明確になったと言えるのではないだろうか。
 1980年代以降の研究については,すでに一例として脳科学研究の知見との照合を挙げたように,進歩しつつある他分野の研究を取り入れることでAAIの観点を拡げている。さらに,成人のアタッチメントの複雑さに対応する,年齢層を拡げた研究も追加されている。被検者の社会的,文化的な層も拡張され,より多層的な基礎研究がなされている。年齢により世代によって,アタッチメントの方式は多様に変化するのであり,必ずしも幼児期との一貫性は仮定できないとする,DMM制作者の見解は,きわめて納得できるものである。
 これら諸点の修正を含みながらDMMは,strange situation法による乳児の分類システムを,そのまま成人に当てはめようとすることから生じる矛盾点を解消し,新しいカテゴリー分類に到達している。AAIが半構造化面接による方法であることから,その技法を習得するには多くの時間と労力を要するであろうが,それを通して心理臨床家としての面接技法そのものの修練にもなるという利点も生かせるであろう。
 今後の心理臨床の目指すべき方向性として私は,人間の在りようを最も奥深くまで理解する精神分析の諸理論を根底に置きながら,広く身体的要因にも社会的及び人的な環境要因にも目を向けるような,人間への理解と関わりができる臨床が望ましいと考えている。DMM-AAIはこうした条件に実によく適合しているので,臨床心理士が身につける技法として,きわめて高い将来性を持つと考えている。私自身はもはや,この技法を身につけて臨床を実践できる年齢ではなくなっているが,訳者であり本法の紹介者である三上謙一氏は,まさにこれからの心理臨床の牽引役として,活躍して下さるものと期待している。
 2018年5月
馬場 禮子

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著者情報

パトリシア・M・クリテンデン

アンドレラ・ランディーニ

三上 謙一 監訳

三上 謙一(みかみ けんいち) 1999年 東京都立大学大学院人文科学研究科心理学専攻修士課程修了 2000年―2002年 ケント大学大学院留学 心理療法研究専攻ディプロマ課程修了 2005年 東京都立大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学 2005年 山梨英和大学大学院専任講師 2006年 北海道教育大学保健管理センター講師 2010年 北海道教育大学保健管理センター准教授 現 職 北海道教育大学保健管理センター准教授 臨床心理士      Crittenden博士およびLandini博士の下でDMM-AAIの訓練を受ける

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