ホーム > 精神力動的サイコセラピー入門

精神力動的サイコセラピー入門  新刊 これから出る本

ー日常臨床に活かすテクニックー

目次

監訳者まえがき 岡野憲一郎
本書について 
はじめに 
謝  辞 
第1章 精神力動的サイコセラピーの言葉を理解すること
第2章 始まり
第3章 生育史を聴き取ることとフォーミュレーション
第4章 セラピーにふさわしい患者を選ぶこと
第5章 継続治療
第6章 防衛的な患者を扱い続けること
第7章 終わり
第8章 スーパーヴィジョンを活用すること
参考文献
訳者あとがき 重宗祥子
索  引

このページのトップへ

内容説明

【監訳者まえがきより】
 本書「精神力動的サイコセラピー入門」は,精神分析的精神的セラピーを志す者にとって極めて明快でかつ平易な言葉で書かれたテキストである。(ちなみに本訳書では心理療法,精神療法を「セラピー」と,療法家を「セラピスト」と呼んでいる)。
 本文からは著者セーラ・フェルス・アッシャー女史の息遣いが伝わってくるようだ。精神分析を非常に積極的に日常臨床に取り入れようというその姿勢。そしてそれを確固たる精神分析的なトレーニングとそれに基づく治療理念が支えている。著者の頭には治療の設定,治療構造とはこうあるべきものである,というモデルが明確に備わり,その構造を厳守し,受け身性を保ち,転移解釈を中心とした技法を守るという姿勢が見られる。しかしそのうえで柔軟性に富み,患者に寄り添い,細やかな配慮を忘れない。このようなセラピストを持った患者やバイジーはさぞかし安定した治療の場を提供された安心感や心地よさを覚えるだろう。
 患者はアッシャー女史との治療では,時間が過ぎた後に少しぐずぐずしたり,無駄話につきあってもらうことは,あまり期待出来ないかもしれない。でもそこには「構造を守することで,あなたやあなたとの治療関係を大事にしているのですよ」というメッセージが同時に聞こえてくるだろう。つまり彼女は常に患者のことを考え続けてくれているのである。そしてこれがアッシャー女史なりの分析的セラピーのスタイルである。
 私はこれまでにスーパーヴィジョンや症例検討を通して,様々なスタイルのセラピストたちに接する機会を持って来たが,彼らの多くが精神分析的なオリエンテーションを有する。その彼らとのかかわりを通じて,「セラピストが精神分析を母国語とすること」について考えるようになってきている。サイコセラピーをライフワークとして選び,本腰を入れて学びたい人の多くは,精神分析をその入り口として選ぶ。それは精神分析には長い伝統があり,そのトレーニングの環境がその他のセラピーに比べて整っているからだ。そしてそこでフロイトを学び,転移解釈の重要さを叩き込まれて育っていく。それから後にそのセラピストがどれだけ精神分析以外の世界に触れ,どのように折衷的に,あるいは統合的になっていくかは,ケースバイケースであろう。ただしおそらく彼らの頭の中で依然として用いられるのは,精神分析的な概念である。
 精神分析のトレーニングから入り,自分流のセラピーのスタイルを追求したセラピストの中には,最終的には伝統的な精神分析とはかなり異なるスタイルを確立するかもしれない。しかしそのセラピストはおそらく母国語である精神分析の用語を用いてその違いを語るだろう。たとえば「私は治療構造を重視する一方では,分析的な隠れ身の態度はあまり重視していません」などというように。そして私はその立場も精神分析的,と呼んでいいと思う。
その意味でアッシャー女史は精神分析を「母国語」とし,しかし柔軟で豊かな感受性を持った,彼女流のセラピーのスタイルの完成形をここに示している。そのスタイルはかなり伝統に忠実でありつつ,それとは距離を置いた点も見られる。そのひとつが,終結をめぐる議論である。彼女は週4回を最後まで続けていきなり終結をするという伝統的な分析のモデルに異を唱える。また治療場面において贈り物を受け取る際に見せる柔軟さにも,彼女らしさが現れている。
 本書が備えるいくつかの特徴は,自分なりの精神分析的なスタイルを模索するセラピストたちにとって大いに助けになるに違いない。特に第3章のフォーミュレーションの書き方,第6 章の防衛的な患者の扱い,第8章のスーパーヴィジョンの活用などに,著者らしさが表れている。これらの記述は長年の女史のスーパーヴィジョン経験に裏打ちされる具体的でかつ懇切丁寧なものであり,ビギナーのみならず指導者レベルのセラピストにとても参考になるであろう。
 翻訳者重宗祥子氏も精神分析を基本的なアプローチとして経験を積んだベテランのセラピストである。彼女が分析的セラピーのスタイルを自分なりに作り上げる上で,アッシャー女史のこのテキストは大きな影響を与えたことが伺える。それが彼女の翻訳の確かさに表れ,私が手を入れる必要はほとんど感じなかったことを付け加えておきたい。
平成30年8月
京都大学教育学研究科 岡野憲一郎

このページのトップへ

著者情報

セーラ・フェルス・アッシャー

岡野 憲一郎 監訳

1982年東京大学医学部卒業,医学博士。1982~85年東京大学精神科病棟および外来部門にて研修。1986年パリ,ネッケル病院にフランス政府給費留学生として研修。1987年渡米,1989~93年オクラホマ大学精神科レジデント,メニンガー・クリニック精神科レジデント1994年 ショウニー郡精神衛生センター医長(トピーカ),カンザスシティー精神分析協会員。2004年4月に帰国,国際医療福祉大学教授を経て現職京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授,米国精神科専門認定医,国際精神分析協会,米国及び日本精神分析協会正会員,臨床心理士。 著訳書 恥と自己愛の精神分析,新しい精神分析理論,中立性と現実新しい精神分析理論2,解離性障害―多重人格の理解と治療,脳科学と心の臨床,治療的柔構造,新外傷性精神障害─トラウマ理論を越えて,続 解離性障害―脳と身体からみたメカニズムと治療,脳から見える心―臨床心理に生かす脳科学,恥と「自己愛トラウマ」,臨床場面での自己開示と倫理(以上岩崎学術出版社)

重宗 祥子

1986年 上智大学大学院文学研究科教育学専攻博士後期課程修了,臨床心理士 現職 さちクリニック(東京都新宿区)・代々木心理相談室(東京都渋谷区) あおきクリニック(東京都中野区) 著訳書 北山修・黒木俊秀編『語り・物語・精神療法』(共著)日本評論社 2004 サンドラー著『患者と分析者』(共訳)(第二版)誠信書房 2008 津田彰・山崎久美子編『心理療法の諸システム』(共訳)金子書房 2010

このページのトップへ