ホーム > 精神分析が生まれるところ

精神分析が生まれるところ  新刊

間主観性理論が導く出会いの原点

精神分析が生まれるところ

人が人と出会うところにすべてが生まれるという視座から,精神分析もふくめた,臨床上のさまざまな問題を検証するものである。

著者 富樫 公一
出版年月日 2018/10/29
ISBN 9784753311415
判型・ページ数 A5・248ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

 はじめに
 序章 精神分析の世界の誕生
第一部 間主観性理論から倫理的転回へ
 第 1 章 間主観性理論と倫理──入門編
 第 2 章 臨床的営みの加害性
 第 3 章 精神分析的システム理論と人間であることの心理学
 第 4 章 精神分析の倫理的転回とその意味
第二部 倫理的転回からの精神分析概念の再考
 第 5 章 人間であることの心理学
 第 6 章 自己対象概念再考──対象から他者へ
 第 7 章 共感と解釈
 第 8 章 逆転移と共転移
第三部 倫理的転回と臨床実践
 第 9 章 二つの間主観性理論,そしてサードとゼロ
 第 10 章 関係の行き詰まりと倫理
 第 11 章 治療的相互交流と相互交流以前の人間的出会い
 エピローグ──精神分析理論との出会い
 文 献

このページのトップへ

内容説明

「はじめに」より抜粋
 臨床家はどのように苦悩する患者に出会うのか? 苦悩する患者とのやり取りで,臨床家自身も傷つきを背負うかもしれない中で,臨床家はどのようにして患者に向き合うのか? 人は人であろうとする限り傷つきやすく,脆弱である。それでも臨床家は人として患者に出会い,人としての悲しみに付き合う。その出会いとは何だろうか。精神分析や精神分析的心理療法に携わる臨床家は,意外にも,そうしたことをそれほど深く考えてこなかった。本書は,精神分析や精神分析的心理療法に携わる専門家とともに,その臨床実践を倫理という側面から考えようとするものである。これはもちろん,精神分析に限らず,精神医学やその他の心理療法に携わる臨床家,そして,医療や福祉,教育,司法領域で人に向き合うさまざまな専門家と共有されるテーマである。
 倫理といっても,本書で述べるそれは,臨床実践上の原則(倫理綱領)や,道徳心の発達理論といったものではない。それは,人が人と出会うところにすべてが生まれるという視座から,臨床上のさまざまな問題を検証しようとするものである。言い換えれば本書は,そういった視座から精神分析の理論体系や臨床実践を見直し,私たちの仕事がどのようなものなのかを記述しようとするものである。
 本書は三部構成で,各部はそれぞれ独立した三章から四章の論文からなっている。第一部は「間主観性理論から倫理的転回へ」,第二部は「倫理的転回からの精神分析概念の再考」,第三部は「倫理的転回と臨床実践」と題した。第一部の「間主観性理論から倫理的転回へ」では,倫理的転回の歴史的背景と,今まさに動いている倫理的転回の方向性とそこに含まれる問題を概観する。そのうえで,私が長年問い続けてきたKohut理論に含まれる人間性のテーマを考察する。第二部の「倫理的転回からの精神分析概念の再考」では,自己体験・自己対象・共感・解釈・転移・逆転移といった精神分析の基本概念を倫理的転回の視座から問い直す。そこで注目されるのは,他者としての患者に出会うことの意味と,臨床作業の不可知性の倫理的意味である。第三部の「倫理的転回と臨床実践」では,他者としての患者に向き合い,情緒的な関係を持つこと自体が,治療者にどのような責任と関与を求めるのかを論じる。
 本書を読み始めると読者はすぐに,倫理的転回は関係性への転回と深いつながりがあり,その発展形であることを理解するだろう。第4章で詳しく論じるように,倫理的転回は,関係性への転回を生み出した関係精神分析,フェミニズム精神分析,間主観性システム理論の発展形である。こうした理論は,臨床実践がその患者とその治療者のその関係の文脈に組み込まれたものであることを明らかにし,二者関係プロセスを詳細に記述してきた。倫理的転回は,患者と治療者の出会いが関係プロセスや精神分析的理解をどのように生み出し臨床実践をどのように人間的にし,非人間的にするのかを検証しようとするものである。そういった立場から,ほとんどの章では,さまざまな精神分析の概念や作業を関係性の視座から整理し,そのうえでそれを倫理的視座からとらえなおすという流れになっている。読者は,関係性の視座がどのように倫理的視座へと移り行くのかに注目しながら読み進めてもらいたい。
 本書の多くは,これまで私がいくつかの場所で発表してきたものである。第1章は日本精神分析的自己心理学協会・名古屋セミナー(2017)で発表した原稿を加筆修正したものである。第2章は,愛知総合HEARセンター心理学講座(2017)で発表した内容を基にまとめたものである。第3章と第4章はそれぞれ,「精神療法」誌に掲載された論文「ポストコフートの自己心理学」(42巻3号,2016)と「精神分析の倫理的転回とその意味」(44巻1号,2018)を一部修正したものである。第5章は「甲南心理臨床学会紀要」に掲載された「双子自己対象体験とその臨床的意義:人間であるという感覚とその喪失」(第19号,2017)を一部修正したものだが,その内容は,私が同僚とともに出版した英文書籍『Kohut’s Twinship Across Cultures: The Psychology of being Human.(Routledge, 2015)』の内容をダイジェストで解説したものである。第6章は,2017年に日本精神分析的自己心理学協会の公開セミナーで発表したものを本書に合わせて再構成したものである。第7章と第8章は小寺精神分析記念財団の教育研修セミナーでそれぞれ2017年と2016年に口頭発表したもの,第9章は大阪精神分析セミナーの公開講座の口頭発表を加筆修正したものである。第10章は,私のこれまでの講演を一部使いながら本書のために書き下ろした。第11章は「精神分析的心理療法フォーラム」誌に掲載された「治療的相互交流の三つの次元:主観的次元,インプリシットな次元,そして治療以前の倫理的体験」(5巻,2017)を一部修正したものである。こうした原稿はいずれも,私を支えてくれる多くの同僚や友人との議論があって初めて出来上がったものである。それぞれの機会を与えてくれた台湾,日本,米国の同僚や友人たちに,この場を借りて深く感謝したい。

このページのトップへ

著者情報

富樫 公一

1995年愛知教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。2001~2006年NPAP精神分析研究所,TRISP自己心理学研究所(ニューヨーク)に留学。2003~2006年南カリフォルニア大学東アジア研究所客員研究員。2006~2012年広島国際大学大学院准教授(2007年まで助教授)。現職甲南大学文学部教授,TRISP自己心理学研究所精神分析家,栄橋心理相談室精神分析家,ニューヨーク州精神分析家ライセンス,臨床心理士,博士(文学),NAAP精神分析学会認定精神分析家,国際自己心理学会国際評議委員,International Journal of Psychoanalytic Self Psychology国際編集委員。 著訳書 乳児研究と成人の精神分析―共構築され続ける相互交流の理論(誠信書房,監訳)ハインツ・コフート―その生涯と自己心理学(金剛出版,共訳)蒼古的自己愛空想からの脱錯覚プロセス(風間書房)

このページのトップへ