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精神分析新時代  新刊 これから出る本

トラウマ・解離・脳と「新無意識」から問い直す

精神分析新時代

「解離」を愛着理論からとらえなおし,右脳,ディープラーニングの理解から新しいアイデアを提示。精神分析の前提に一石を投じる。

著者 岡野 憲一郎
ジャンル 精神分析
出版年月日 2018/11/27
ISBN 9784753311484
判型・ページ数 A5・288ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

 序  文──精神分析の未来形
 まえがき
第Ⅰ部 精神分析理論を問い直す
 第1章 精神分析の純粋主義を問い直す
 第2章 解釈中心主義を問い直す(1)─QOL向上の手段としての解釈
 第3章 解釈中心主義を問い直す(2)─共同注視の延長としての解釈
 第4章 転移解釈の特権的地位を問い直す
 第5章 「匿名性の原則」を問い直す
 第6章 無意識を問い直す─自己心理学の立場から
 第7章 攻撃性を問い直す
 第8章 社交恐怖への精神分析的アプローチを問い直す
 第9章 治療の終結について問い直す─「自然消滅」としての終結
第Ⅱ部 トラウマと解離からみた精神分析
 第10章 トラウマと精神分析(1)
 第11章 トラウマと精神分析(2)
 第12章 解離の治療(1)
 第13章 解離の治療(2)
 第14章 境界性パーソナリティ障害を分析的に理解する
 第15章 解離の病理としての境界性パーソナリティ障害
第Ⅲ部 未来志向の精神分析
 第16章 治療的柔構造の発展形─精神療法の「強度」のスペクトラム
 第17章 死と精神分析
 第18章 分析家として認知療法と対話する
 第19章 脳からみえる「新無意識」
 第20章 精神分析をどのように学び,学びほぐしたか?

 参考文献
 あとがき
 索  引

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内容説明

序 文──精神分析の未来形
妙木 浩之 

 若い時から良く知っているが,岡野憲一郎は「書く人」である。彼はいつも考えていることを書きながら歩いている。その思索は,書くことによって再帰的に着想になり,オリジナルな思考がその循環のなかから生み出される。本書は,そのオリジナルな思索を,文字通り,精神分析とは何かという問いに,改めて組みなおそうとした本だ。
 現在,精神分析はパラダイムチェンジの時期に来ている。最近の国際精神分析研究雑誌を読んでいて,精神分析の未来について考えていると,国籍不明の論考と出会うことが多く,その結果としてフランスやドイツ,あるいはアルゼンチンやブラジルなど,グローバルな精神分析運動に関心が向きやすい。Baranger夫妻やBotella夫妻の仕事に多くの分析家が精通するようになったのもそのためであろう。逆を言えば,ネットワークが発展したからだろう,日本そのものも含めてローカルな事情のなかで発展してきた独自の歴史にグローバルに接しやすくなった。アルゼンチンの精神分析サイトも,英語でなら,アクセスして内容をゲットするのもそれほど難しくないし,グローカルという言葉ではないが,ローカルな情報にアクセスしやすくなったのが大きい。
 これまでの日本の精神分析業界は,英国学派を中心としていた印象がある。国際精神分析協会(IPA)が活動しはじめてから,そろそろ100年近くの歴史が経とうとしているが,ナチスの戦渦を逃れたフロイトの亡命に伴って,ヨーロッパからロンドンに本部を移したことも大きいのかもしれない(2019年の国際会議がロンドンで行われる)。英国へ留学して帰ってきた人たち,そして対象関係論者と呼ばれる一群の精神分析家たちの努力を通して,クライン学派についての一通りの理解が日本では定着し,この動向については多くの知見を私たちはもっている。
 だが60から80年代を黄金期として衰退期に入ったという,ジャーナリスティックな噂ばかりが先行してきた米国の現実について,私たちはそれほど多くの情報をもっているわけではない。フロイトの最晩年に米国と英国では方向を異にして,米国精神分析協会は,1938年に精神医学の一分野として自らの協会を組織したため,力動精神医学を学んで帰国する人たちはいても,広い米国に点在している精神分析研究所に長く所属しその動向を持ち帰る人たちは,それほど多くはなかった。そのためLoewaldの古典的歴史的な文献ですら,日本には翻訳されてこなかったのである。この日本の歴史のなかでは,フランスから米国の精神分析研究所へと留学して帰国した岡野憲一郎のポジションはきわめて意義深い。彼は米国で静かに起きていた精神分析の革命を,身近に感じていた数少ない分析家だ。
 おそらく日本を含めて,精神分析のパラダイムに地殻変動が起きていることは間違いない。それを「静かな革命」と呼ぼうと「分析新世代」と呼ぼうと,パラダイムの変更がはっきりして私たちの目に見えるのは,まだ先のことだろう。これからの精神分析を考える上で,期待や願望を含めて,重要な論点を列挙するなら,
① 精神分析の理論の全体を,既存の対象関係論のパラダイムをもとに,組み替えていく。結果として,
② 精神分析が他の諸科学との接点のなかで,オリジナルな思考を展開する。
③ 新しい精神科学の知見に合わせて理論の更新と修正を繰り返していく,ということが求められている。
これら後半の二つが,本書の主題であり,岡野が問い直していることだ。もちろん,これらの行為を現代ではEvidence-basedな世界との接点を求めることで行っていく必要もあるだろうが,そもそも,他の隣接科学への接点という着想があるかないかは大きい。例えば,かつてフランクフルト学派,つまり批判理論は,マルクス主義と精神分析を車輪の両軸のようにして発展した社会学だったが,それだけ精神分析の着想が担保されていた時代があるのだ。現在,精神分析理論が他の学問に影響する回路は,「臨床」という名前で学問が閉ざされ始めてから,すっかり失われてしまったように見える。精神分析は独自な方法論であることは確かだが,理論は汎用性が必要であり,そのためもう一度,他の諸科学にインパクトのある理論に組みなおしていく,問い直していく必要がある。岡野の仕事は,そうした着想に満ちている。
 だから本書で登場する,これまでの前提を「問い直す」という各章は,精神分析臨床そのものを脱構築しようとする彼の意思表明だ。そして最後に脳科学,さらには現代のAIの深層学習に触れながら,無意識を再定式化しようとするところはなかなかスリリングである。解釈って何か,終結って何か,といった技法への問い直しのみならず,フロイトがジャネとの関係で踏み込まなかった「解離」を愛着理論の視点からとらえなおして,右脳の機能的な理解から,さらには深層学習の理解から,新しいアイデアを提示しようとしている。私たちが当然の前提としてしまっている精神分析のジャーゴンやドグマに対する異議申し立て。「書く人」岡野憲一郎の思索は,精神分析の未来を考える上で,重要な一石を投じている。
 できる限り,大きな波紋が拡がることを願っている。

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著者情報

岡野 憲一郎

1982年東京大学医学部卒業,医学博士。1982~85年東京大学精神科病棟および外来部門にて研修。1986年パリ,ネッケル病院にフランス政府給費留学生として研修。1987年渡米,1989~93年オクラホマ大学精神科レジデント,メニンガー・クリニック精神科レジデント1994年 ショウニー郡精神衛生センター医長(トピーカ),カンザスシティー精神分析協会員。2004年4月に帰国,国際医療福祉大学教授を経て現職京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授,米国精神科専門認定医,国際精神分析協会,米国及び日本精神分析協会正会員,臨床心理士。 著訳書 恥と自己愛の精神分析,新しい精神分析理論,中立性と現実新しい精神分析理論2,解離性障害―多重人格の理解と治療,脳科学と心の臨床,治療的柔構造,新外傷性精神障害─トラウマ理論を越えて,続 解離性障害―脳と身体からみたメカニズムと治療,脳から見える心―臨床心理に生かす脳科学,恥と「自己愛トラウマ」,臨床場面での自己開示と倫理(以上岩崎学術出版社)

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