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精神病状態

精神分析的アプローチ

精神病状態

スィーガル,ビオンと並びクライン派第二世代三傑とされる精神分析家による卓越した著書の待望の邦訳。

著者 H.ローゼンフェルド
松木 邦裕 監訳
小波藏 かおる 監訳
岸本 和子
豊田 原規
星野 修一
眞本 晶子
宮城 アトム
山口 昴一
吉村 知穂
ジャンル 精神医学・精神医療
精神分析
出版年月日 2022/08/14
ISBN 9784753312030
判型・ページ数 A5・280ページ
定価 5,500円(本体5,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

監訳者まえがき
序文
謝辞
イントロダクション

1 離人症を伴ったある統合失調症状態の分析(1947)
症例の概要
家族歴および成育歴
初回面接および治療初期段階での状況
離人症
分析の詳細
要約

2 男性の同性愛とパラノイア,妄想性不安,ナルシシズムとの関係についての見解(1949)
パラノイアについての精神分析理論
顕在性の同性愛とパラノイア
妄想性不安と顕在性の同性愛(神経症)
顕在性の同性愛とパラノイア
投影同一化を通して創造されるナルシシスティックなタイプの同性愛
投影同一化の起源
要約

3 慢性統合失調症における混乱状態の精神病理についての覚書(1950)
衝動の混同
混乱状態に対する防衛として作動するスプリッティング機制
自我部分の混乱
回復の試みの中で生じる混乱状態
結論と要約

4 急性統合失調症患者における超自我葛藤の精神分析についての覚書(1952)
精神分析による統合失調症患者へのアプローチに関する論争
統合失調症の超自我に関するいくつかの精神分析的見解
急性統合失調症患者の精神分析からのいくつかの側面についての考察
症例提示の問題
治療の進展
結論

5 ある急性緊張病型統合失調症患者における転移現象と転移分析(1952)
要約

6 急性,および慢性統合失調症への精神分析的アプローチに関する考察(1954)
急性統合失調症状態のマネージメントと治療
急性統合失調症の実際の治療
慢性統合失調症状態のマネージメントと治療
結論と要約

7 薬物嗜癖について(1960)
薬物嗜癖者のマネージメント
薬物嗜癖の精神病理
要約

8 超自我と自我理想(1962)
結論

9 統合失調症の精神病理と精神分析的治療についての覚書(1963)

10 ナルシシズムの精神病理について:臨床的アプローチ(1964)

11 心気症の精神病理(1964)
心気症に関する精神分析的文献の再検討
取り入れと投影の役割
心気症におけるサディスティックおよびマゾヒスティックな衝動
心気症における自己観察
心気症における去勢不安の役割
心気症における早期乳幼児期の機制と不安の役割
防衛としての心気症様状態
心気症における外的要因の役割

12 神経症および精神病患者での分析期間中の行動化の必要性についての探究(1964)
結論
要約

13 薬物嗜癖とアルコール依存症の精神病理(精神分析文献の批判的論評)(1964)
結論
治療とマネージメントについての議論

文献

解題
Ⅰ.はじめに 小波藏かおる

Ⅱ.人生史

Ⅲ.業績 1.精神病の精神分析 2.ナルシシズム 3.投影同一化 4.晩年のローゼンフェルドの分析的アプローチ

Ⅳ.精神病状態に収められている論文について
第1章:「離人症を伴ったある統合失調症状態の分析」(1947)
第2章:「男性の同性愛とパラノイア,妄想性不安,ナルシシズムとの関係についての見解」(1949)
第3章:「慢性統合失調症における混乱状態の精神病理についての覚書」(1950)
第4章:「急性統合失調症患者における超自我葛藤の精神分析についての覚書」(1952)
第5章:「ある急性緊張病型統合失調症患者における転移現象と転移分析」(1952)
第6章:「急性,および慢性統合失調症への精神分析的アプローチに関する考察」(1954)
第7章:「薬物嗜癖について」(1960)
第8章:「超自我と自我理想」(1962)
第9章:「統合失調症の精神病理と精神分析的治療についての覚書」(1963)
第10章:「ナルシシズムの精神病理について:臨床的アプローチ」(1964)
第11章:「心気症の精神病理」(1964)
第12章:「神経症および精神病患者での分析期間中の行動化の必要性についての探求」(1964)
第13章:「薬物嗜癖とアルコール依存症の精神病理(精神分析文献の批判的論評)」(1964)

Ⅴ.おわりに

人名索引
事項索引

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内容説明

【監訳者前書きより】
 英国精神分析でのクライン・トラディションの礎となった,第二世代三傑とされる精神分析家による卓越した著書がある。
 ハンナ・スィーガルによる『メラニー・クライン入門』(1964/1973),ウィルフレッド・ビオンよる『再考』(1967),そしてハーバート・ローゼンフェルドによる本書『精神病状態』(1965)である。『クライン著作集』の出版が遅れて1975年であるから,それらの著書こそが,クラインの理論と実践の高い価値を強力に裏づけた。
 我が国では『メラニー・クライン入門』,『再考』はすでに訳出され多くの読者を得ていたが,『精神病状態』は邦訳出版されないままだった。実は岩崎学術出版社が1980年代から刊行していた「現代精神分析双書 第Ⅱ期」(小此木啓吾・西園昌久監修)には本書の邦訳が予定されていた。しかし陽の目を見ることはなかった。
 それからときを経て今,小波藏かおる氏と彼女と精神分析を学ぶメンバーの手で翻訳が数年をかけて完遂され,『精神病状態』をここにお届けしている。
 この書では,ローゼンフェルドがクラインの理論と技法を支えに,統合失調症の精神分析に果敢に取り組んだその航跡と成果が太い幹を成している。「超自我」,「ナルシシズム」,「精神病性転移」,「行動化」,「心気」等,中核的概念を理解するのに必読と言える重要な論考が収められている。
 ローゼンフェルドの分析臨床は,その後英国精神分析協会でレスリー・ソーン,エリック・ブレンマン,リカルド・スタイナー,ジョン・スタイナーらに引き継がれている。私自身,1980 年代後半から精神科病院で統合失調症や摂食障害,境界パーソナリティ障害等の精神分析臨床に勤しんだ頃,『精神病状態』は大きな支えであった。本書が,精神分析を学び実践している方の臨床に大いに寄与することには疑いがない。
 小波藏氏による明快な「解題」をお読みいただければおわかりいただけるが,『精神病状態』の翻訳刊行はひとえに小波藏氏の献身の賜物である。私の知る小波藏氏は勤勉な努力家であり,労苦を惜しむことなく臨床と精神分析からの学びに邁進している。その意味で,本書はローゼンフェルドの大いなる飛翔のマイルストーンであったとともに,小波藏かおる氏の新たな飛翔のマイルストーンである。
 ローゼンフェルドの活き活きとした精神分析臨床を実感させる『精神病状態』を精読されんことを,こころより皆様にお願いしたい。(松木邦裕)

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著者情報

H.ローゼンフェルド

松木 邦裕 監訳

1950年佐賀市に生まれる。1975年熊本大学医学部卒業。1999年精神分析個人開業。京都大学大学院教育学研究科教授を経て,現在京都大学名誉教授。日本精神分析協会正会員,日本精神分析学会運営委員。著書 「対象関係論を学ぶ―クライン派精神分析入門―」(岩崎学術出版社),「分析空間での出会い」(人文書院),「分析臨床での発見」(岩崎学術出版社),「私説対象関係論的心理療法入門」(金剛出版),「精神分析体験:ビオンの宇宙―対象関係論を学ぶ立志編―」(岩崎学術出版社),「分析実践での進展」(創元社),「不在論」(創元社),「摂食障害との出会いと挑戦」(共著,岩崎学術出版社)その他。訳書 ケースメント「患者から学ぶ」,「あやまちから学ぶ」,「人生から学ぶ」(訳・監訳,岩崎学術出版社),ビオン「ビオンの臨床セミナー」(共訳,金剛出版),「再考:精神病の精神分析論」(監訳,金剛出版)その他。

小波藏 かおる 監訳

1998年大阪市立大学医学部卒業。現在 ひいらぎクリニック,精神分析家,日本精神分析学会認定精神療法医,日本精神神経学会専門医。

岸本 和子

1998年関西大学大学院博士課程前期課程修了(臨床心理学専修)。現在 医療法人西浦会京阪病院,公認心理士,臨床心理士,臨床発達心理士。

豊田 原規

2010年帝塚山学院大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻専門職学位課程修了。現在 医療法人社団直恵会Kこころのケアクリニック。

星野 修一

大阪・京都こころの発達研究所 葉 代表社員。臨床心理士・公認心理師。神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程前期課程修了後、教育センターや精神科病院などで勤務。その後、京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻博士後期課程に進学し、単位取得後退学。代表社員を務めるオフィス以外に、精神科クリニックや学生相談室などに勤務。共著に『精神分析臨床での失敗から学ぶ――その実践プロセスと中断ケースの検討』(2021年、金剛出版)、共訳書に『バリント入門――その理論と実践』『リーディング・クライン』(2018年/2021年、ともに金剛出版)、『精神病状態――精神分析的アプローチ』(2022年、岩崎学術出版社)がある。

眞本 晶子

2000年大阪市立大学医学部卒業。2006年大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学博士課程卒業。2007年から現在 浅香山病院 精神科部長。日本精神神経学会専門医,日本精神神経学会専門医指導医。

宮城 アトム

2006年愛知淑徳大学大学院心理医療科学研究科博士前期課程修了。2009年~現在 浅香山病院。臨床心理士,公認心理師。

山口 昴一

2017年京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。現在 目白大学心理カウンセリングセンター(助教)

吉村 知穂

2011年大阪市立大学大学院医学研究科博士課程卒業。現在 兵庫医科大学精神科神経科助教。日本摂食障害学会評議員,日本精神神経学会専門医。

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