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子ども虐待を防ぐ養育者支援

脳科学,臨床から社会制度まで

子ども虐待を防ぐ養育者支援

虐待を防ぐには,根本原因である養育者・世帯側の要因を理解し支援する必要がある。その重要性を,研究結果から浮き彫りにする。

著者 黒田 公美 編著
ジャンル 社会福祉・心身障害学・教育学・児童虐待
出版年月日 2022/12/05
ISBN 9784753312153
判型・ページ数 A5・312ページ
定価 4,180円(本体3,800円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに 黒田公美
第1部 子ども虐待防止の科学
第1章 子ども虐待を防ぐ養育者支援――生物学的・社会的要因の相互作用 黒田公美,落合恵美子,犬塚峰子,阿部正浩
第2章 子育て行動の進化的基盤と脳内機構――子育てと虐待の生物学的メカニズム 篠塚一貴,白石優子,黒田公美
第2部 深刻な子ども虐待の生物-心理-社会的要因
第3章 重度の子ども虐待I――受刑中養育者の調査から 白石優子,宮澤絵里,大平加奈,黒田公美
第4章 重度の子ども虐待Ⅱ――攻撃性の行動神経科学と事例紹介 宮澤絵里,白石優子,篠塚一貴,黒田公美
第3部 ライフサイクルと子育て困難
第5章 保育所で――養育困難に寄り添うサポートによる虐待リスク低減 渡邉多恵子,田中笑子,冨崎悦子,酒井初恵,安梅勅江
第6章 小中学校で――貧困・ひとり親・外国ルーツ・孤立の影響 郭雲蔚,姚逸葦,落合恵美子
第7章 貧困・児童虐待・ネグレクトの相互関係――英国のエビデンスレビュー論文より ポール・バイウォーターズ他著,倉島 哲翻訳
第4部 海外に学ぶ子ども虐待の養育者支援
第8章 日常的な子育てと養育困難・子ども虐待をつなぐ視点――イギリスに学ぶ家族支援 村田泰子
第9章 フランスの児童保護制度に見る養育者支援とその課題――養育者支援から子どもに焦点を置いた支援へ 徳光直⼦
第10章 児童相談所での養育者支援,アメリカに学ぶ家庭支援――大切にしたい当事者の視点 久保樹里
第5部 日本の養育者支援の制度と実践,現在と未来
第11章 要保護児童対策地域協議会――全国悉皆調査データから読み解く,その機能を高めるための職員配置 田中聡子,宮澤絵里,松宮透髙
第12章 子ども虐待と親権――日本の法制度と虐待対応の現状と課題 水野紀子
第13章 子どもの利益をまもる法のしくみ――ドイツ,フランスから学ぶ養育者への支援と介入のための法制度 久保野恵美子
第14章 養育者支援プログラム――子ども・自分とのつきあい方を学ぶ 白石優子,大平加奈,中村加奈子,宮澤絵里,黒田公美
あとがき 黒田公美

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内容説明

子ども虐待死亡のニュースを聞くと,こころの底から冷たくなるような,本能的な怖さを感じてしまう人もいるだろう。筆者もその一人である。誰でも生まれた時は無力な赤ん坊であり,だれかに命を依存していたのだから,他人事ではない。そのためか,子どもの問題となれば手弁当で奔走される方も多い。本書を手に取っていただいた方も,その一人かもしれない。
 このような感情から,親を糾弾する声や,「どんな状況でも子どもを育てる覚悟のある人だけが親になるべきだ」といった意見も聞かれる。しかし筆者が専門とする動物の世界では,親の子育ては「当たり前に,自然にできる」ような簡単なものではなく,子育てを諦めてしまうことも多い。もちろん現代の人間社会はそのような選択を容認せず,子どもを守る社会システムを築いてきたわけであるが,一人ひとりのレベルでは依然,子どもを育てられなくなってしまうことも起こるだろう。
 なぜ子どもの虐待が起こるのかを考えるため,そもそもなぜ,どのようにして哺乳類の親は子育てをするのか,それでも子どもを育てられなくなる背景には何があるのかについて,生物・社会的要因を総合的に捉えなおしたい。本書はこのような問題意識を持つ多分野の研究者の協働から生まれた。

 子ども虐待を防ぐためには,その根本原因である養育者・世帯側の要因を理解し支援する必要がある。しかし子ども虐待対策の中で急を要する虐待の発見や子どもの保護に比して,どうしても養育者の支援や対策のための研究は遅れがちである。
 この本は,養育者の理解と支援に的を絞り,子育てと攻撃性の脳科学,保育園や学校での調査,国内外での児童福祉現場の取り組みと,それを支える行政や法制度について,多様な視点から調査研究と考察を行い,その結果をまとめたものである。

 全体として,本書は探索的な異分野融合研究の試みであり,これまでにはなかった新しい視点を重視した一方,不完全で粗削りな点も多いと思われる。その点には十分注意いただいた上で,本書が今後の研究の進展に何がしかの参考になればと思い,刊行に至った次第である。不十分な点についてはぜひご批判,ご意見をお寄せいただければ幸いである。
 最後に,哺乳類の子は特定の養育者との関係の中で世話を受けることに,その生存を依存している。哺乳類である人間にとり,子ども虐待は宿命であるともいえる。
 どんな養育者にとっても子ども虐待は決して他人事ではない。「「子どもを虐待するなんて信じられない」「人間のやることではない」と思っている限りにおいて,その人は虐待リスクから逃れられない。」(後藤秀爾,2006)
(「はじめに」より)(黒田公美)

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著者情報

黒田 公美 編著

神経科学研究者。専門は親子関係と親和的社会性の行動神経科学。理化学研究所脳神経科学研究センター親和性社会行動研究チーム チームリーダー。1997年大阪大学医学部卒業後,精神神経科医員(研修医)。2002年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了,カナダMcGill大学精神神経科病院付属研究所研究員を経て,2008年理化学研究所脳科学総合研究センター黒田研究ユニットリーダーに着任。2018年より現職。

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